【タイトル】 I owe you you owe me ー Breaking Free of Emotional Debt and Creating Abundant Relationships
【著者】 Nick LeForce

【ページ数】 163

 

 


【読むきっかけ】
この本を読んだのは1年前以上で、NLPのラーニングセンターで著者のニック・レフォースがセミナーを開いたことがきっかけだった。そのセミナーには参加できなかったものの、参加した人から概要を聞き、興味を持った。ネットで調べるとニックの著書があることが分かり、早速取り寄せた。

「感情的負債」という感情と負債を結びつけたこの言葉は、人間の感情の背景に負債というものがあることを示唆し、新しい視点を与えてくれた。自分がこれまで探求テーマとしていたことに、多くの示唆を与えてくれた。読んでいる最中、本当にワクワクしたものだ。とはいえ、非常に深い内容で、莫大な情報量であるし、また最終的な解決方法にある種の「魔法」を期待しすぎていたせいか、読み終わった後は、満足感というよりは、消化不良の感じがあった。後半の負債の解決方法で、月並みのNLPの手法が列挙されたとき、残念に思い、読了したあと、何というか、方向感を失ってしまったような気がした。
そのため、しばらく寝かせることにしていたが、眠ったままになってしまっていたので、今回、以前作成したサマリを読み返して、このテーマに取り組むことにした。

【対象】 人間の感情について本質的な理解をしたい人。NLPの知識は不要
【評価:★5段階で】
 難易度:★★★★★
 分かりやすさ:★★★
 ユニークさ:★★★★★
 お勧め度:★★★★★

【まとめ】


Section 1 イントロダクション
1. あなたの人生を所有すること

感情的負債
私たちは皆、目に見えない「感情的負債」を抱えていることがある。これは、人との間で交わされる「恩」や「借り」のようなもので、はっきりと言葉にされない絆であり、際限なく蓄積され続ける負担だ。

I owe you (私は、あなたに恩がある/借りがある・あなたは私に貸しがある)

you owe me (あなたは、私に恩がある/借りがある・私はあなたに借りがある)
のどちらか。

このような感情的負債によって、私たちは自分の「本当に欲しいもの」や「本当に大切なこと」ではなく、他人に対する「義務」を果たすことに人生の焦点を合わせてしまいがちである。どれだけ尽くしても「借りを返す」ために費やされ、自分らしい人生を送ることができなくなってしまう。

この本は、そのような「感情的負債」から人生を取り戻す(Reclaim your life)ためのガイドである。

・感情的負債とは何か、その見分け方
・健全な感情的負債と不健全な感情的負債の違い
・不健全な感情的負債から解放される方法
・健全な感情的負債を果たすことの大切さ
・感情的負債を果たすことで人間関係を改善し、自尊心を高める

お金の借金は、金額や返済期限が明確だが、感情的負債は際限なく膨らんでしまう

「借りる」「返す」「 返済」「稼ぐ」「投資」「正当な報酬を受け取る」など、お金に関する言葉は、感情的負債を理解し、話すためのメタファーとして使われる。

人間関係で使われる感情的負債:「命の恩人」という言葉は、感情的負債の典型だ。映画やドラマの登場人物の行動動機にもよく使われる。
ビジネスで使われる感情的負債:「ふさわしいサービスを提供します」「信頼して頂けるよう努力します」などの言葉は、顧客に「感情的負債」を感じさせ、自社を選んでもらうための戦略である。
広告で使われる感情的負債:広告は、感情的負債を利用して消費者の注意を引く。

不公平さ:一方的な「与える」だけで、見返りがない関係は不健全である。

スティーブン・R・コヴィー氏は著書の中で、人間関係を「感情的銀行口座」に例えている。営業の世界では、たとえ無料のプレゼントであっても、受け手には微妙な「借り」の意識が芽生えることを利用する

死や悲しみの過程では、私たちは人間関係における未解決の「感情的負債」と向き合うことが必要である。

私(ニック)は、感情的負債に縛られなくなったことで、以前よりも自由を感じるようになった。そして何より、かつて自分を支配していた「感情的負債」を解消する方法を身につけたことで、自分の人生をコントロールしているという感覚が強くなった。

Section 2 負債を抱える

2 負債を抱える

交換:ギブ・アンド・テイク
お金は、モノやサービスを交換するための共通の単位である。多くの交換は公平に行われるが、中には不公平に感じたり、片方だけが損をしているように感じたりするものもある。
「感情的負債」は、交換の後に、どこか「借り」や「貸し」が残るような感覚が残る

公平な世界という信念(Belief in a Just World)
「感情的負債」の核にあるのは、シンプルで強力な信念である。
・人は自分がしたことに応じた報いを受けるべきだ。
・世の中は公正であるべきだ。
・私の権利は保証されるべきだ。
・義務を果たした見返りに、報酬が与えられる、あるいは少なくとも外から守られるべきだ。
・善行はいつか報われる。

私たちは、このような考えによって、人生をある程度コントロールできる感覚を得ている。世の中は予測可能だと感じられるのである。人々は、行為や自身の属性に応じて、ふさわしいもの(What they deserve)を得ると信じている。

しかし、正当な理由もなく理不尽なことが起きた場合、私たちはしばしば個人的な欠陥があるのではないかと考えてしまう。

3 我々はどうしてこうなったのか?

感情的負債を生み出す4つの主な要因

1 犠牲好意 (Sacrifices or favors)
2 過失不正 (Wrongs or injustices)
3 約束誓約 (Commitments or promises)
4 役割や立場に伴う権利義務 (Roles and conditions)

 

  好意 / 犠牲 過失 / 不正 約束 役割
借り 誰かがあなたに好意をしてくれた あなたが誰かを怒らせてしまった 約束をした 役割に伴う義務がある
貸し あなたが誰かに好意をした 誰かがあなたを怒らせてしまった 誰かがあなたに約束をした 役割に伴う権利がある


エチケットのルール
約束をして守ることは、人間関係における信頼を築き、人々を結びつける。 約束をすることで、お互いを頼りにすることができるのだ。

合意(Agreement)には交換(Exchange)が伴う。約束は、将来あることを行うか、何かを与えるという確約である。約束と合意の違いは、約束には交換が必ずしも必要ない点にある。約束自体が、そうしなければならないことを義務づけているのだ。

権利は、あなたに何が owed(得ることができる)であるかを定義し、義務はあなたが何を owe(負っているもの)であるかを定義する。

既得条件(Preexistent)は、あなたの努力を必要としない。
取得条件(Aquired)は、あなたの努力、行動、行い、または悪行によって獲得される。
・取得した権利や義務は、あなたが受けるにふさわしいものを得るという考えに基づいている。

拡大された、一般化された負債
感情的負債の中には、人間関係を越えて、国、人生、神との関係にまで及ぶものもある。
例えば、宗教的な所属は、貧しい人への奉仕という義務を要求するかもしれない。そうすると、その負債は特定の個人ではなく、階級全体に対して適用されることになる。反対に、私たちは自分の権利が侵害されたと感じることで、人生が自分に対して負債があると思い込む。

権利や特権、義務や結果に対する反応の仕方を理解することは、苦しみを減らし、他者への思いやりを増やすのに役立つかもしれない。

一部の女性は、特定の男性にひどい仕打ちを受けたことで、すべての男性が自分に負債があると信じ込む

義務を負っている者として
あなたは自分の夢や願いを否定し、義務や責任に直面してそれらを捨て去る。

権利があると考える者として
あなたは自分のものだと信じるものを要求したり、単に奪ったりするが、自分の行動が他人にどんな影響を与えるかを考えない。

4 魔法をかけられる

感情的負債
強力:圧倒的、普遍的、無意識、融通性がある。
圧倒的:あまりにも多くの「しなければならない」が存在する。

規範
・好意に対してどのように感じ、どのように対応するか
・いつ、どのように助けを求めるべきか
・他人を軽んじたり怒らせてしまったときの気持ちと対応
・他人に軽んじられたり怒らされたときの気持ちと対応
・約束を大切にする方法
・社会的に認められた権利と義務

与え返さずただ受け取るだけの人は、せびる人(Moocher)や恩知らずと呼ばれる。このようなレッテルは、感情的負債を返すようにする社会的圧力を作る

無意識:感情的負債の真の力は、その捉えどころのなさにある。
融通性:互酬性(Reciprocity)は、人があなたに対して行ったように、あなたもその人に接することを示唆している。
このルールは、完全な一致を要求しない。ある程度の釣り合いが期待される。返済のための時間枠は曖昧なまま残されることもあり、借金が返済されたかどうかが不明確になることがある。この不確実さは、実際には人間関係を安定させる

交換的関係
 点数をつける
 見知らぬ者同士の規範
共同体的な関係
 ある程度の公平性が時間をかけておおよそ生じるだろうという信頼を持つ
 友情

過ちに対する互酬性
復讐
 目には目を、歯には歯を
補償メカニズム:償いを果たすために何かをすること。ある程度の公平性が適用される
 悔恨と後悔の表明は、ある程度のバランスをもたらすかもしれない

5 健全であるために

健全な感情的負債
多くの人は進んで感情的負債を返す。責任を果たすことは喜びにもなる。他人に与えるだけで得られる心地よさは、しばしば十分な報酬となる。他者から受け取ることによっても、幸福感と所属感を得ることができる。過ちを償うことで罪悪感が和らぎ、自尊心が向上する。許すこと許されることも、深い精神的な祝福である。

不健康な感情的負債

状況 感情
いくらやっても足りない 不十分
無力
圧倒される
期待に応えられない 罪悪感
後悔
落ち込む
与えるほうが受け取るより多い 疲れ果てる
利用される
軽視される
不公平の被害者 恨み
悔しさ
侵害される
当然のものが得られない 失望
苛立ち
怒り
大切な人やものを失う 悲嘆に暮れる
悲しみ
空虚感


ネガティブな感情は敵のように見えるが、実際はあなたの友達である。感情的負債を解消する第一歩は、自分がそれを抱えていることを認めることだ。怒り、恨み、無力感などのネガティブな感情は、感情的負債を抱えているサインととらえることができる。

過ち
私たち全員が不完全であり、誰もが間違いを犯し、時には自分の限界を露呈する行動を取るということを認識するのは健全なことである。あなたを傷つけた人に対して限界や境界線を設定するのは適切なことだ。心から許しを与えることができるのは祝福といえる。
しかし、些細なミスに対して過剰な罪悪感を持ったり、怒りや恨みをいつまでも抱え続け、先に進めないのは健全とは言えない。

約束
私たちが約束に縛られて苦しんだり、約束を避けたり、約束を守れなかったことに対して他人を非難したり言い訳をしたりするのは不健全である。他人を操作する目的で約束を利用するのは不健全だ。状況に関わらず他人をその約束に縛り付けるのは残酷である。

権利と義務
自分の権利が保証されているわけではなく、義務も絶対的なものではないことを認識するのは健全である。権利や義務に固執しすぎて、他人を責めるのは不健全である。

6 すべてが平等


愛が無条件に与えられるときだけ愛だと信じる人々は、逆説的に愛に狭い条件を課してしまう。映画や本は、拒絶や災難にもかかわらず一途な献身を貫く片思いの恋人を理想化する。しかし、現実の愛はそのように美徳や寛容さに満ちていることはほとんどない。持続する愛には交換が伴い、その交換が人々の間の愛を変え、形作っていく

バランス
感情的負債は、バランスが崩れていると感じたときに生じる。バランスを取り戻したいという欲求や必要性が生まれる。

公平性についての間違い
算定: 人間関係を経済的取引に変えてしまい、安っぽくする。
補償的: 外見が彼の知性のなさの埋め合わせになっている、など。

利他的行為
施しをすることで喜びや感謝などの好意的な感情が得られる。
宗教的・市民的義務として行うと、いつか良いカルマが返ってくる。
施しをする際、見返りを期待していなくても、喜びや感謝などの感情的見返りを期待している。

バランスを取る行為
いくつかは内面的なものであり、他人や関係源以外のものを関与させない。例えば、償いの一環としての慈善活動など。

大きさのバランス
大きさの不均衡は、借金が返済されたかどうかについての争いにつながることがある。一方が些細な事だと考えているのに対し、他方が非常に重要だと考えている場合がある。

7 傍観者の目
 

物事を解釈し、判断するために使う思考プロセスは、感情的負債の土台となる。

要素
1 自分
2 他人、集団、または物
3 関係

注目の方向
- 自己中心的
- 他者中心的

あなたが心の中で強調する現実の一部分が、あなたの経験を決める。考え方を強調する部分を変更すると、状況に対する感情も変わる。
感情的負債は、認識によって生み出され、解釈や判断によって助長される

判断
意味
原因
影響
 影響の持続性 <-> 一時的なもの
 影響の広範囲性 <-> 特定の状況に限る
 影響の個人化 <-> 一般的なもの
  性格的特徴ではなく状況の影響

 

続く