ビリーフとは思い込み、信念、固定観念のことで、出来事に意味づけしたり、行動の決定に影響したりする。にもかかわらず、ビリーフは、無意識、本人が無自覚の状態で動作する。自分がどのようなビリーフを持っているか探ることは、制約を外していく上で、大きな意味を持っている。
ビリーフは、X=Y(等価)、X→Y(因果)の形に定式化できる。
●知識との違い
知識には、定義・分類、事実、史実、自然、人体、心理、法律、社会・経済についての因果関係や当為などがある。
ビリーフ・信念は、強化された知識、承認された知識で、自分の思考方法・行動に影響を及ぼす。知識そのものは、仕事などで関係しない限り影響はない。身体・心に影響する知識は信念になりうる。ビリーフは、世界を解釈し、行動を決定するための地図になる。しかし、あくまでもその人にとっての地図であって、客観的な真実(=領域そのもの)ではない。
ビリーフには経験に裏付けられているものもあれば、そうではないものもある。直接的に知っていることと信じることとは違う。例えば、火は熱い、という知識と、実際に触れるのとは違う。私たちは、すべての知識を経験を通して知ることはできないため、人から教えられた内容を真実として信じてしまう。ときには、ビリーフが強すぎて、実際の経験がそれと異なったとしても、何かの間違いだとして、経験よりもビリーフの方を優先してしまうこともある。
●人の行動に影響を与えるもの
ビリーフの中で特に、価値や必然性に関するビリーフ(=すべき・すべきでない)、そして可能性に関するビリーフ(=できる・できない)は、人の行動に大きな影響を与え、制限にも、力づけにもなりうる。
NLPでは、より自由になることが理想像としてあるので、制限を解除し、可能性を増大する方向を目指す。
ビリーフが、制限となっているのであれば解除し、力づけをしてくれるものであれば、自分の中にインストールするようにする。
例えば、「自分は望むことを達成する能力がない」というビリーフは制限となり、「自分は望むことを達成できる」は力づけのビリーフとなる。
そのため、
1 ビリーフを発見する
2 制限となるビリーフを解除する
3 力づけのビリーフを埋め込む
ということが必要になる。
●ビリーフを発見する
心理的な問題・症状の背景にはビリーフがあることが多い。何かが受け入れれないとき、あるいは何らかの行動を制約しているとき、背景にはビリーフがある。ビリーフを発見するには、メタモデルの質問が役に立つ。
ビリーフは非常に条件が限定されたされたものもあれば、汎用的なものもある。深く埋め込まれた汎用的なビリーフは、根本的なステム・ビリーフ(Stem belief)で、そこから諸々の派生的なビリーフが生まれているので、そのステム・ビリーフを発見し、解除すると派生したビリーフも解除される。
●ビリーフを解除する
・リフレーミング
そのビリーフが真実かどうか、あるいはそのビリーフを持ち続けた場合どうなるかなど、そのビリーフを検証する。スライトオブマウスは、リフレーミングのための14のパターン集である。
単にそのビリーフが真実ではないと論理的に分かったとしても、それを自己説得で繰り返し言い続けたとしても、そのビリーフを持つ利点があったり、幼い頃の体験に根ざしている場合、解除できない。
・肯定的意図を探る
ビリーフを持ち続ける場合、そこには何らかの意図がある場合も多い。そのビリーフを持つ肯定的意図を探り、同じ意図を満たす別のビリーフを考える。
・サブモダリティを使う
絶対に正しいと思っているビリーフのサブモダリティと、もはや真実とは思っていない、あるいは疑いを持っているビリーフについてのサブモダリティを対照分析し、主要なドライバーを見出す。
制限となるビリーフを、疑惑のサブモダリティに合わせ、力づけのビリーフを真実のビリーフのサブモダリティに合わせる。
・過去に遡り、発生した出来事を探る
これは、ステム・ビリーフを探す際にも使われる。
場にタイムラインを設定し、過去に向かって後ろ向きに歩いて行く。そして、そのビリーフの発生の契機となった出来事を探り、その時形成されたビリーフの肯定的意図を特定し、力づけのビリーフを与えて過去の記憶を変える。そのビリーフを信じてしまった原因を解除することで、ビリーフが解除される。
・ビリーフの選択
ビリーフが、客観的な真実ではなく、単なる思い込みに過ぎず、それによって、自分を制限し、苦しめていたことに気づき、そのビリーフを持ち続けるのか、それともビリーを手放すのかの選択について考慮したとき、はっきりとビリーフを手放すことができる。ビリーフを手放すと、体から緊張が抜け、非常に楽でリラックスした状態になる。
ビリーフを手放すと自由な気持ちになれるが、さらに進んで、ビリーフを活用することも可能だ。
●強い信念の力
「強い信念の持ち主」というとき、そこには確固たる意志を感じることができる。もしそれが目標達成に向けての信念であるなら、他の人から見ても、達成する可能性が高く感じられる。強い信念は、断固たる決意をもたらし、それは、強いエネルギーであり、それを目標の一点に集中し、他者をも巻き込むこともあって、当然達成する確率は高くなるだろう。
信念の力は、しばしば「奇跡」とも言える現象を引き起こしてきた。それは、しばしば誇張された内容も含むが、主に病気治しの点で語られることが多い。医師から見放された不治の病に対して、絶対に治るという信念で、見事に健康体を手に入れるというストーリーである。精神が物質を超える、という文脈で語られることも多いが、信念は、肉体の持つ自然治癒作用を高める。しばしば、プラシーボ効果などで暗示の力の重要性が示される。
これまで偉業を達成した人は、皆それまで不可能とされてきたことを可能にしてきた。できるという強い信念が、数々の失敗にもめげず、あきらめずにできる方法を追い求め、ついに探し当てることになる。
ことわざに曰く、「あなたができると思おうと、できないと思おうと、どちらも正しい」のである。
●ビリーフを埋め込む
力づけのビリーフは、無意識へインストールして、自分の活動を後押ししてくれるようにするのが望ましい。ビリーフを刷り込む方法は、以下のようなものがある。
・繰り返す
・催眠時の暗示
・ビリーフを信じる理由を考える
・真実のサブモダリティの表象にビリーフを移動する
・ミルトン言語で前提を埋め込む
ビリーフは無意識で動作するものであるため、まずは習慣化することである。そのためには反復することである。また、催眠状態に持っていって暗示を行うことも、無意識に埋め込むために効果的な方法である。また、ビリーフを持った結果が良いものであればあるほど、ビリーフを信じる強い動機付けになる。
真実であると信じる内容のサブモダリティに、そのビリーフを持っていくことで、そのビリーフが真実であると自分の中にコード化される。
ミルトン言語の「前提」を利用して、ビリーフを無意識に受け入れられるようにする方法もある。