他人の立場に立つと、視点が変わり、いろいろなことが見えてくる。NLPには、他人の立場に立つ、他人になりきるワークが多数ある。また、他人以外にも、自分の過去未来、実在しない人(物語の中のキャラクタ)に入ってみることもできる。

相手に同化する、相手のステートに入り込むイマジネーションの力が必要になる。

方法
①なりきる


望む状態の特性を考えて、何が見え、聞こえ、感じるのかを仮想的に十分に体験する。ここで役立つのが、アズイフ(As if)フレームで、「もしもできたとしたら」として、あたかもできているかのように振る舞ってみる。
過去の状態を再現するには、記憶を呼び起こして、その状態に入っていく(インステート)、未来の状態については、想像力でその状態に入っていく。これは目標達成のためのワークで用いられる。
ディズニーストラテジーでは、夢想家・現実家・批評家の3人の立場になりきって、意見を述べる。

状態を起こすために、他の瞑想法で行うような、外から力、エネルギー、光、知恵といったリソースが自分の体の中に入ってくるイメージを行う方法もよく使われる。

②相手の体に同化する

対象となる人をイメージし、そこに立っていると想像する。その人らしい行動を取らせてみる。
その後ろから、自分の体を漂うようにして、相手の体の中に入って同化する。あるいは、着ぐるみを着るように入り込む。あるいは、相手の首を取って、自分に仮面を被せるようにする、など。そのように、イメージ上で身体レベルで同化する。
そして、その人の表情仕草姿勢身振り行動を真似てみる。また、その人が話すように話し、その人になりきる。見えるもの、聞こえるもの、感じるものを十分に体験する。

・モデリング
卓越性を持つ人と同化し、そのパターンを導き出し、自分のリソースとして活用する。
ニューロ・ロジカルレベルに沿って、環境(どこにいるか)、行動(何をしているか)、能力(どんなスキルを持っているか、どのような可能性があるか)、信念・価値観(どんなことを大切にしているか)、アイデンティティ(どのようなセルフ・イメージを持っているか)を確認する。
そして、そのモデルから、どのようなリソースを受け取ったのかを確認する。

・メンター
自分が尊敬できる、アドバイスをもらいたい人が、目の前にいると想像し、その中に入って、自分に向けて、必要なメッセージを送る。

・未来の自分からのメッセージ
現在の場所から、目標を達成した未来の場所を前に思い描き、そこまで歩いていって、目標を達成した体験を想像し、何が見え、聞こえ、感じるかを言語化する。後ろを振り返って、「現在」の自分に対して、未来の立場からメッセージを送る。
さらに、自分のパートナーおよび客観的な第三者の立場からも同じように未来からメッセージを送る(Generative NLP Format)。

③場を使ったアンカリング

・エンプティ・チェア
元はゲシュタルト療法で使われていたもので、対人関係についての問題を解決するため、他の心理療法でも使われる。本来は、相手は実際の相手というよりも相手に投影された自分の中にあるシャドーであるが、NLPではコミュニケーションの問題解決に使っている。

2つの椅子を向かい合わせで用意し、片方に自分が座り、もう片方に相手がいると想像する。まず最初は自分が相手に伝えたいことを、自分の立場になりきって存分に伝える。そして、相手の席に座り、相手になりきって、相手の立場から、自分の方に伝えたいことを伝える。
第三者のポジション、客観的なポジションから見て、二人の関係性を見ていくことも行う。

NLPでは、ポジションチェンジのワークとしている。自分の立場を第一ポジション、相手の立場を第二ポジション、客観的な第三者の立場を第三ポジションと呼ぶ。


● モデリングによる模倣について

NLP自体が、天才セラピストをモデリングして生み出されたものであるが、実際、天才をモデリングしたところで、天才になれるわけではない。単なるモノマネでスタープレーヤーの真似をしても滑稽なだけになる。レベルが違いすぎて、体がついていかない。基礎的な体力や運動神経が異なる状態ではそもそも模倣などできない。ハイスペックなCPU上で動いているプログラムをロースペックなCPU上で動かしてもパフォーマンスは期待できないのと同じ。身体・脳と言ったフィジカルな部分に重きがある場合、モデリングは限定的だ。
一方、セラピーのように、その能力が重要でない場合はよい。

ポイントは、何らかの気づきを得ることだ。その人の価値観や信念や、戦略、行動の一部でも学べるとよい。

この学び方は、単に本や講義などで言葉から学んだり、指導された練習方法に従っていくのとは別の学び方になる。
その人が説いたことよりも、その人がやっていることを学ぶ。理論やら、こうすればいい、と言っていることと、うまくできている人がやっていることは違う。現在できている状態で何をやっているのかを模倣した方が早い。偉大なプレーヤーは教えるのが下手だったりする。自分がどうやっているか他人に説明できない。仮に教えられたとして、自分で自分のことが十分わからなかったりするものだ。

実際に学びたいのは、その人の内面がどうなっているのかである。行動は外側から学べるし、言葉として発している内容は学ぶことができる。実際にその人になることはできないので、想像力で、その人の内面に入り込んで、言葉や表象、体をどのように使っているのかを学ぶ。

ミラーニューロンの説明によると、人は外的な行動を模倣することで、相手と同じニューロンが活性化する。それによって相手の内面を理解する。

とはいえ、内部表象・信念・価値観を模倣したとしても、天賦の才能、直観力は模倣できないから、期待しすぎない方がいいだろう。