【タイトル】 頭脳の果て(アインシュタイン・ファクター) 驚異の加速学習法25年の集大成
【著者】 ウィン・ウェンガー、リチャード・ポー
【ページ数】 453

 

 


【読むきっかけ】 ビジネスNLPの紹介でイメージ・ストリーミングの方法に興味を持った。
【何を得ようと思ったか】 元来、左脳の働きが強い私にとって、右脳を解放したいと常々思っていたこと。特にNLPでは、感覚を重視し、無意識に何かを問いかける場合も、無意識は全く反応せず、結局思考で答えを出してしまう。これに対する打開策として、無意識から答えを浮かび上がらせるようにするため、イメージ・ストリーミングのトレーニングが役立つのではないかと考えた。

【対象】 「天才」とは何か知りたい人。「天才」になりたい人、右脳を強化したい人
【評価:★5段階で】
 難易度:★★
 分かりやすさ:★★★★★
 ユニークさ:★★★★
 お勧め度:★★★★

【概要】
500ページ近くに上る大著だが、前半は、イメージ・ストリーミングの効用に始まり、イメージ・ストリーミングの基本的な方法、それを問題解決に生かすこと、象徴の解釈方法といった、イメージ・ストリーミングの説明で、後半はモデル思考や、その他の加速学習法のいくつかのトピックが解説される。

・イメージを浮かび上がらせること
・問題に対する解決策をイメージ、象徴として浮かび上がらせること
・そのイメージを正しく解釈すること
・質問の力
・モデル思考
・再現能力
・フリーノーティング
・その他
 酸素、グループワーク、音楽、幼児教育、フロー、楽しむ、左脳、ツールビルディング、天才のミーム

【要約・メモ】

学習促進効果
 確実に頭がよくなる。

洞察力
 優れた知覚力があるのに、知覚が意識に到達する前に抑圧されてしまう。

天才
 多くは若い時「扱いにくい」「覚えが悪い」「バカ」と言うレッテル
 天才の物理的なメカニズムは脳を使うことで創られる。
 アインシュタイン:独創的な発想を生むには、イマジネーションを抑え込まず、自由に遊ばせることが重要。数学的な法則を使う代わりに、主に視覚的なイメージや感情で物事を考えている。
 意識のチャンネルを広げるテクニックやコツを知っていて、自分の潜在意識からの直観に常に注意を払っている

明晰夢
 夢をコントロール
 無意識の中に多くの財産が眠っている。
 しかしこのテクニックを身に着けるのは難しい。

イメージ・ストリーミング
 明晰夢よりもさらに、無意識の流れに触れることができる。
 はっきりと目覚めている状態で、いつでもどこでも訓練できる。
 私たちは一日のうち、50%の時間を空想に使い、8%の時間は眠りの中で夢を見る。58%を無意識のイメージの中で過ごしている
 イメージの流れは留まることを知らない。場合によっては非常に危ないことでフタをする必要も。
 潜在意識の抑圧と解放のコントロールが必要

夢を思い出す方法
 ベッドの横にノートと鉛筆。目が覚めた瞬間に覚えている限り書き留める。自分の夢について書くたびに、夢を呼び起こす行動を強める。それに伴って実際に夢を思い出す力が強まっていく。

イメージ・ストリーミングの方法
 目を閉じて、頭の中に浮かんだイメージを大きな声で説明する。
 説明は、
 ・他の人あるいはテープレコーダに向かって
 ・体中の全五感を使って
 ・すべて現在形
 ・事細かな描写
 ・編集しない
 説明するときには同時にそれを観察していることになる。より詳細に知覚できるよう集中力が働く。

 イメージ
 ・イメージがわき上がってきたら、どんなものであれ受け入れる
 ・イメージを意識にとどめておく必要はない。1秒間現れて消えても説明はできる
 ・鮮明で生き生きとなるのであれば、強調・誇張、一部を自分で創り上げてもOK
  誇張とは、想像という作業においては極めて自然なこと
 ・何物にも束縛されず自由に自分のうちからイメージを湧き上がらせる
 ・最初に始めたものと全く関係ないイメージが沸き起こっても、流れに身を任せて、新しいイメージをしっかりつかんで説明

ビロードのような滑らかの呼吸法
 呼吸に集中し、息を吸って吐くまでに間がないほど滑らかに呼吸

練習
・自分の周りにある物、自分の部屋や毎日歩くコースの風景
・よく知っている人や物
・今まで見た中で一番美しい風景(現実の場所であって想像上の風景ではない。潜在的な記憶を引き出す)
・電球を見つめて目を閉じて、残像を説明
・特別に鮮明に心に残っている夢を説明
・小説や物語、映画、テレビ番組など素晴らしく、面白いと感じたもの
・目隠しして、家の中を手探りで説明
・目隠しして食事しながら、感じたことをすべて説明
・目を閉じていい香りのスパイスを当ててみる。匂いは魔法のようにイメージ・ストリームを引き起こす。
・手で空を切り、見えない何かを彫刻
・電車やバスに乗って、目を閉じて通り過ぎている感じる風景や道路の様子を説明
・草原を歩いている自分の姿
・湖でボートに乗っている自分。水面をのぞき込み、水中の世界を。
・自分を電磁波だと仮定し、深い宇宙の中を未知なる世界に向かっている
・パノラマスキャン:自分の頭をカメラに、声をビデオテープに見立てて、視線を移し、頭を回転させる。
・視覚以外の知覚に限定して練習
・時間を行ったり来たり、大きくなったり小さくなったり
・壁のシミなど不規則な形に気づく。神経と周りの世界との接触を広げていく。よりクリエイティブに感じられる。

ファンタジア・メソッド
 共感覚反応を刺激
 フランス印象派音楽やクラシック(1750-1825のものに限る)やモダンジャズを聴く
 音楽の濃度と複雑さがポイント

自己表現
 天才の特徴:衝動的、強迫的に何かを書きつける
 無意識のうちに自分の知性を育て活性化するメカニズム
 刺激だけでは脳は発達せず、実際にオモチャに触れて遊ぶことが必要
 自発的な表現行動がフィードバックの輪を作る。
 クリエイティブな考えが頻繁に浮かんでくるようになるまで、ノートをいつも持ち歩いてどんなことでも書き留める。感じたことや考えを書くたびに、その感覚や創造された行動は強化され、脳に深くインプットされる。

知っていることを忘れること
 本当の解決策とは、すでに知っていることから、実際に知覚していることに意識を集中させたときに、初めて生まれてくる。
 決められた考え方:私たちは、自分が知覚すると予想したものを実際に知覚する。

成長段階で、自分の経験から学ぶというステップを飛ばすと、鋭敏な知覚力が弱まり、成長過程も不安定になる。
過去に戻り学習過程のウィークポイントを修正
 イメージストリーミングで、自分の知的発達において重要だったと思われるポイントに戻り、想像力を自由にはばたかせ、自分に必要と思われる経験や強化していきたいことをイメージさせる。
 マスローが「最高時の学習経験」と呼ぶ記憶を回復させて豊かに。

記憶
 実際に経験していないことを実験的に”覚えさせる”ことは簡単とされる。
 記憶が本物か判断するのは不可能。重要なことは、その記憶はあなたにとって何らかの意味があるもので、潜在意識がそれを使いやすく、働かせやすい形にして表現したもの。

インスタント再生
 経験から必要な内容を取り出して好きなように見直す。
 ・選んだ出来事の具体的な記憶を前面に押し出す
 ・現在形で詳細に説明
 ・状況、ガイド、重要人物、登場人物、行動、感情、体で感じたことの説明
 ・知覚的なセッティングがはっきりと確立できたら、もっと抽象的な洞察に自分自身を開放してみる。アッ、これだの瞬間と呼ばれる洞察力がさく裂。
 ・10分から30分、はっきりと感じられるまで新しいイメージを説明し続ける。

イメージトレーニング
 メンタルイメージを見る点では似ているが、どんなイメージを形作るべきかはっきりしている。
 才能や自信を引き出し、免疫システムを活発にする効果もある。
 しかし、問題を創造的に解決するには役に立たない。

ブレーンストーミング
 驚きスペースを作る。
 批判的な判断は後にとっておく。
  しかし知らず知らずのうちに、入ってくる。
 判断する心を引き延ばさないで、無力にする必要。

驚き
 脳に高速でデータを入れてやると、意識がそれについていけない。
 脳は常に一定状態を保とうとする。
  激しい混乱状態に出会うとそれを何とか安定させ一定の状態に保とうとする。
創造的破壊
 壊れていないなら壊せ。
洞察力
 複雑さが鍵。
 混乱:心の中のふたをするものが効果的に抑制されている確かなサイン。混乱の瞬間を楽しむこと
奇妙な脱線は、夢やイメージストリームにはつきもの。心に影響力のある無意識のメッセージが入り込んだ証拠。
驚き体験が得られないのは何らかの形で抑制作用が働いている。答えのスペースを与えることで、驚き体験は怖くないと思わせる必要。

意識と無意識の境目テクニック
・解決したい問題・質問を決める。一旦心から追い出す。
・7,8分後にベルが鳴るようにする。
・美しい庭に立って、目の前に意識と無意識の境目である大きな壁があり、その向こうに答えのスペースが広がっている。
・庭の様子を表現豊かに述べ、壁の様子を五感で説明。
・ベルが鳴ったらその壁を突然に飛び越える。左脳がありきたりの予想をする前に、答えをキャッチ。
・壁の向こうの第一印象をつかむ。
どれだけ驚かせられたかが、独創的かどうかのバロメータ。つまらないものが、答えを教えてくれる確かなシンボルだったりする。予想外のイメージであるはず。

クイック・境目テクニック
・卵、ドア、窓のブラインド、廊下の曲がった場所、写真アルバムのカバーなど、物質的に答えのスペースを隠せるようなもの、境目状態になる道具がなんであるか述べて、想像力の中に固定。
・心の中でできるだけ大きな声で質問を提示
・境目状態になる道具に触れる。
・境目状態を突然に飛び越えるか横切る。
・隠れていた答えのスペースの第一印象をしっかりつかんで述べる。そのシーン全体との神経的接触を強め、その様子を詳細に述べる。

イメージを解釈する
1 メッセージは文字通りのものか抽象的なものか

2 事実と感情を区別する
 後から付け加える二次的な感情や印象を区別

3 鍵となる連想を認識する
 続く、明確で力強く、はっきりした連想

4 自分自身の解読器を使う
 他人の解釈を受けるよりは自分自身で間違った結論を出した方がいい。
 どんな人でも自分だけのシンボルの表現コードを持っている。あなたのシンボルを正確に解読できるのはあなたしかいない。

5 “いつ―それで”テストを使う
 隠れている因果関係を明らかに。

6 最後に現れるアイデアやイメージを大切に

7 細かい点までわかるように意識の境目状態・質問テクニックを使う
 一般的な解釈は役に立たない。はっきりしない点は無視して、イメージに共通して流れている要素を探す。

8 驚き経験を総合的に使う

時にはルールを破るのも効果的
 絶対にいついかなる時でも守らなければならないほど神聖なルールなんてない。
 権威や資格という言葉をぶら下げた人たちのアドバイスには要注意。


何が一番大切か、イメージストリームはあなた以上に知っている最も急を要する問題や出来事を優先する

イメージストリームがノーと言ったら?
本当に右脳の出した答えと言うこともあるが、意識的な恐怖や怠惰の現れ。
次のように問いかける。
・誰または何がノーと言っているのか?
・自分や他人を傷つけることなく情報を得るには、どういう準備をすれば情報が得られるか?
・ノーという答えが質問の仕方のせいなら、どんなふうに質問すればいいか。
・他に質問すべきことがあるか?

ヴィジョンが先で言葉は後
 言葉による答えは、左脳に戻す傾向がある。

おふざけ分析者テクニック
 ユーモア遊び心は心のガードを外し、正しくなければという概念から自由に。
・自分をフロイトやユング、エリクソンなどの造詣の深い精神科医と仮定して、イメージストリームを別の患者のものとして、ユーモラスに分析者の言葉や態度をまね、とにかく楽しむ。

一度は疑ってみる
 イメージストリームが絶対に正しいと信じ込むほど危険で恐ろしいことはない。
実際に行動で試す
「これが真実なのか、どうすれば私は判断できますか?」と聞いてみる。
常に積極的に疑い深くあれ、自分の直観を信じよ。

適切な質問を探す
アインシュタイン「もし自分が殺されそうになって、助かる方法を考えるのに1時間だけ与えられたとしたら、最初の55分間は適切な質問を探すのに費やすだろう」
・6つの質問を別々のメモ用紙に書きだし、メモをシャッフルした中から無作為に1枚だけ選ぶ。目を閉じて連続的に素早く三つのヴィジョンで答えを出す。イメージストリームはほとんどの場合、質問にあった答えを出す。あなたの中にいる編集者を回避するベストな方法。左脳が質問を知らなければ、期待する答えを意識的に作り上げたり計画したりできない。

知覚力の神秘
 プラトンの洞窟
 ボーム:量子の特殊な動きは、視覚的な宇宙の下にあるより深い状態が反射。
 ホログラフィーの原理のように、絡み合う複雑な原理の投影
 時間も場所と同様ホログラフィーの幻想。

モデル思考
ライコフ効果:人を深い催眠状態にして、その人に自分が本当に歴史上の偉大な天才になったかのように思わせる。実験後にもかなりの残余効果がある。
意識の分離現象:私たちの心は独立したモジュールから成り立っていて、その一つ一つは独自の考えや行動、感情まで持つことができる。
方法
・イマジネーションの中で意識を分かち合いたいキャラクターの頭を被ることで、その人自身になりきる。
・その人の後ろに立っているところを想像し、自分の目や鼻が一直線上に並ぶようにして、その人の体の中に漂いながら入っていく。あるいはその人の頭を外し、ヘルメットのように自分の頭に被せ、残った体の部分をゴムスーツのように着る。
・その人の繊細で研ぎ澄まされた感性を自分自身で体験する。
・天才を借りる体験を終えたら、体験中に何が起きたのか現在形で詳しく話す。
天才は、あなた自身の心の分離した分子以外の何ものでもない。才能も知覚もあなた自身に元々備わっているもの。

パラレルワールド
あなたの分身があなたの求める技術などの天才になっている”代理地球”を訪問する。

記憶から情報を引き出し、保持する能力
フォトリーディング
 初めのうちは効果ははっきりしたものではなく、意識的に探さなければ見過ごしてしまうほどあやふやだったり、ひらめきのような形で現れてくる。こうした微妙な心の内の”資料”に意識や注意を向けることが必要。イメージストリーミングで、心のシグナルに気づいたり反応したりできるようになる。
絶対にうまく行くと信じることが大切。

教育
詰め込むのではなく、引き出すこと。
自分の自由意思で表現する。

フリー・ノーティング
講義、読書の際に頭の中に浮かんだことをすべて書き留める。伝えようとすることを意識的にとらえるのではない。
・後で見直せるように講義をテープに録音する。
・講義を聴きながら、素早く継続的にメモする。心を自由にさまよわせる。
・自分の内にあるデータを外に向けて流す。そのデータの流れを非常に速く、講義内容がサブリミナル以外では頭に入ってこないほどにする。
・講義している先生を喜劇役者の引き立て役だと思う。
先生が話したことよりもメモにより価値のある情報が。先生の言葉を表面的に理解するのではなく、その裏に隠された本質的なものを正確にとらえる。

表現の原理
与えられた知覚を表現したり、言葉にすればするほど、それ自体や関連した知覚をより深く感じ、理解できる。

酸素
潜水:息を止めることで酸素が減少していると錯覚し、頸動脈が大きく開いてより多くの血液を脳に運ぶ。

パートナー、グループで
 気づきの兆候呼吸の停止、眼球の動き
 「今、何に気が付いたの?」と聞く。

薄い境界線
自分とは別のアイデンティティを持つ。天才を借りるテクニックを成功させる秘訣。
痛みや混乱から私たちを守ってくれる回路ブレーカーは同時に、最も素晴らしい想像力の流れを止めてしまう

言葉
明確に、秩序立てて現実化する力がある。
イメージストリーミングでも、口に出して説明することでより鮮明で形のあるものになる。
左脳の協力は必要。
遊びという形で学ぶ。
フィードバックほど仕事や学習にゲーム感覚の楽しみを与えてくれるものはない。楽しいゲームには、どういった形であれスコアがつきもの。
自目的(Autotelic):その行動自体が目的であること。そうすること自体に喜び。
ツール・ビルダー:学習戦略を考え出すメタストラテジー。


【感想】


分厚い本だが、内容は非常に読みやすく、わかりやすい。各章の導入部分で、ちょっと話が脱線しているようにも思えるが、後の内容を理解するための小話だったりする。

イメージ・ストリーミング自体のエクササイズは非常に簡単ですぐに試すことができる。ただし、鮮明なイメージや、意味のある象徴的イメージを浮かび上がらせることができるかについては、しばし練習が必要なようだ。

以前、声には出さなかったものの、似たようなことは私自身していた。イメージ力のない自分としても鮮明なイメージで、普段の想像、連想あるいは夢とは別のレイヤー(と感じられた)で、自分の意志とは無関係に風景などのイメージが展開された。何も得られなかったのでやめてしまったが、続けていれば良かったとも思う。今やっても同じようには行かない。

この本の方法では、声に出して説明するというのがキーポイントのようだ。
NLPのワークでは、無意識の答えを引き出す、昔の記憶を再現する、モデリング(特定の対象にアソシエイトする)、といったイメージ力を必要とするものがかなり重要な位置を占めており、これらを思考・左脳で行っている限り、ほとんど効果は出ない。そのため、これらの能力を伸ばすためにも、イメージ・ストリーミングを試す価値はあると思う。というか、ポジションチェンジやタイムライン、パートワークなど、NLPのワークとしてそのまま使える。

イメージ・ストリーミングが手法としてはメインであるが、目的は、創造性を強化すること、それによって自分の中の天才を目覚めさせる。創造性を阻むもの、伸ばすものについて、様々な観点や事例から説明される。