【タイトル】 それでもなお、人を愛しなさい
【著者】 ケント・M・キース
【ページ数】 141

 

 


【読むきっかけ】 NLPのマスターコースで、逆説の10カ条が紹介され興味を持った。
【何を得ようと思ったか】 もっと深く知ろうと。

【評価:★5段階で】
 難易度:★
 分かりやすさ:★★★★★
 ユニークさ:★★★
 お勧め度:★★★★

【逆説の10カ条】

1. 人は不合理で、わからずやで、わがままな存在だ。
 それでもなお、人を愛しなさい。

2. 何か良いことをすれば、
 隠された利己的な動機があるはずだと人に責められるだろう。
 それでもなお、良いことをしなさい。

3. 成功すれば、うその友達と本物の敵を得ることになる。
 それでもなお、成功しなさい。
 
4. 今日の善行は明日になれば忘れられてしまうだろう。
 それでもなお、良いことをしなさい。

5. 正直で率直なあり方はあなたを無防備にするだろう。
 それでもなお、正直で率直なあなたでいなさい。

6. もっとも大きな考えをもったもっとも大きな男女は、
 もっとも小さな心をもったもっとも小さな男女によって
 撃ち落されるかもしれない。
 それでもなお、大きな考えをもちなさい。

7. 人は弱者をひいきにはするが、勝者のあとにしかついていかない。
 それでもなお、弱者のために戦いなさい。

8. 何年もかけて築いたものが一夜にして崩れ去るかもしれない。
 それでもなお、築きあげなさい。

9. 人が本当に助けを必要としていても、
 実際に助けの手を差し伸べると攻撃されるかもしれない。
 それでもなお、人を助けなさい。

10. 世界のために最善を尽くしても、
 その見返りにひどい仕打ちを受けるかもしれない。
 それでもなお、世界のために最善を尽くしなさい。


【引用/要約・メモ】

私はすでに報われていました。立派に仕事をやってのけたことから生まれる充実感と満足感をすでに体験していたのです。表彰されようとされまいと、充実感と満足感がありました。

確かに、この世界は狂っています。この世界は全く意味をなしていません。しかしあなた自身は意味をなすことが可能なのです
逆説の10カ条は...あなたにとってそれは意味があるというただそれだけの理由で、実行することは可能です。
他の人が感謝の気持ちを持とうが持つまいが、自分にとって意味があることを実行する自由が、あなたにはあるからです。

あなたの善行が、後任者の功績にされても問題ではありません。
組織の将来のために土台を築けば、あなた自身は良いことをしたと知っています。それがやがて花開いて成功を収めれば、あなたも大いに満足するはずです。

それが良いことだというただそれだけの理由で、良いことをしてください。

最善を尽くすということは、その準備ができたあとでするということではありません。毎日実行することです。

逆説の10カ条を生きるとき、一つひとつの行動がそれだけで完璧になります。なぜなら、一つひとつの行動それ自体に意味があるからです。

結果を見届けることが必要です。マイナスのフィードバックがあったときには、やっていることを再考する必要があるでしょう。教訓はなんだろうか。次は別なやり方でやるべきだろうか。本当に人の助けになっているだろうか。

私たちはみな自分自身の誠実さと基準をもっていて、それに基づいて立派な仕事をすることにより意味や満足感を得るということです。

評価されたいという願望を持つのは当然です。しかし、他人の拍手喝采を切望すると、意味を見つけることは難しくなります。拍手喝采を切望する人は、他人が必要としているものに心の焦点を合わせる代わりに、拍手喝采を得ることに心の焦点を合わせてしまいます。...自分の幸せを他人の気まぐれな心の動きにゆだねることになります。

あなたが属する社会や会社がプレッシャーをかけてこうなりなさいといっているような自分になるのではなく、本当の自分あるべき自分になるということかもしれません。


【感想】
逆説の10カ条、それ自体で十分わかりやすく、価値あるものだが、本になっていて、補足的に深く知ることができる。薄い本なのですぐに読み終えることができる。

私たちが良いことをするとき、どうしてもそこに見返りを求めてしまう。それは感謝の言葉だったり、自分が良い人間だと評価されたり。そして、見返りがないとき、苛ついてしまうのだ。これは純粋な善ではない。
この10カ条は、よくある理想を語っているのではない。その行為自体が価値あるものだから、他人からの評価があろうとなかろうと、満足感が得られる、そこにフォーカスしなさいということ。

それでも」という言葉が自分には響いたが、原文にはThoughなどの言葉はない。ただニュアンスとしてはそうなので、訳に入れたのは正しいだろう。
「評価されない」、だから「やらない」、ではなく、「それでも」やる意味がある。これを自覚させてくれる。

またケントは、独り善がりの善を勧めているわけではない。余計なお世話をしながら、迷惑がられているのに良かれと思っている人もいる。フィードバックは重要だ。だが、感謝や称賛は必要ない。相手が利益が得られたかどうかに焦点を置く

非常に難しいことではあるものの、やる価値はある。

本には訳者あとがきと、佐々木常夫さんの解説も掲載されていた。

「経営者の多くはこの本を敬遠するでしょうね。本書に書かれているようなことをやらないで、偉くなってきている人が多いからです。つまり、ある意味人に冷たくして生きてきた人たちだから。」
という社会の現実を指摘。だからこそ逆説。

「愛することで、その人が変わるはずだと思うわけです。...愛の力で変わらない人だったら、愛する意味はあるのでしょうか。」

と述べられているが、これはキースの趣旨を誤解していると思う。キースは愛する行動自体に価値を置いている。無論、現実はどうしても結果を求めてしまうのかもしれないが。