【タイトル】NLPフレームチェンジ (原題:Mind-Lines)
【著者】L・マイケルホール、ボビー・G・ボーデンハマー
【ページ数】308

 

 

【読むきっかけ】リフレーミングについて、もう少し深く学ぼうと思って探していて見つけた本。
 

【何を得ようと思ったか】
リフレーミングのやり方について、状況と内容のリフレーミングについて習ったが、もう少し具体的な方法はないだろうかと思っていたところで、もっと効果的にリフレーミングできるようにしたいと思ったこと。

【概要】
フレーム・チェンジは、ロバート・ディルツが発展させたリフレーミングのパターン「スライト・オブ・マウス」をさらに発展させて、意味の構造や抽象度の区別といった概念を組み込んで、再体系化・拡充され、1つの公式、7つの方向性、26のパターンとしてまとめたもの。

【対象】すでにNLPを熟知し、言語パターンについて深く学ぼうと思っている上級者
 

【評価:★5段階で】
 難易度:★★★★★
 分かりやすさ:★
 ユニークさ:★★★
 お勧め度:★★

【まとめ】

ここは本の要約ではなく、自分なりに理解した内容で、本の内容については、マインドマップにまとめている。

ベースとなる理論

「フレーム」という言葉の意味の理解が、この本の理解の鍵になるといっても過言ではない。
フレーム:体系・枠組み、認知の仕方、背景・環境、参照している考え・経験・人(参照材料)

視覚的な理解としては、実際の枠・額縁を考えるのがわかりやすい。同じ絵にどういう枠をはめるかで、絵の意味や印象は変わってくる。

いわば、フレームとは意味を与えるものである。事実自体はフレームにはならない。「だから何?」というときの答えを導き出す背景にあるものと言っていいかもしれない。

フレーム(○○フレームを設定)を言いかえれば、

・観点: ○○の観点から見ると、

・仮定: 〇〇と仮定すると、

・文脈: 〇〇の文脈に置いてみると

・注意: △△に注意(注目)すると、

・適用: ○○を適用してみる

つまり、「前提」としてあるもの、と言える。往々にして、この前提、フレームは無意識・無自覚にある。そのため、結果として出てきた、意味・解釈を「真実」と考えてしまう。

意味は外的世界の現実ではなく、思考が意味を作る。つまりすべては創作された現実で、私たちが意味を構成する。意味は柔軟に変化しうるフレームを設定する者が意味をコントロールする。

 

人は客観的な世界に生きているのではなく、自らが生成した主観的なボックスの中で生きている。現実そのものではなく、思考の中にいる。フレームの集合体というか意味を作り出す母体を「マトリクス」として表現しているが、映画『マトリクス』はその例えとして分かりやすい。

 

簡単に図式化すると、こんな感じだろうか。

外的出来事は中立的で何も意味しない。まず個人のボックスの中で、五感をもとにした表象がつくられ、そこにフレームが当たることで意味が生成され、それが思考となる。さらに思考に対してフレームを当てることで更なる思考となる。思考に対して承認フレームが当たると信念になる。信念は参照されるフレームに影響し、その後の意味の生成に影響すると同時に、「神経系統への命令」とあるように感じ方や行動に影響する。


リフレーミングとは、Re-Framing、つまり別のフレームを当てて、物事の意味を変えることである。
コンテンツのリフレーミングは、ボックスの中で、別の意味を与え、コンテンツ自体を変える。

コンテキストのリフレーミングは、ボックスの外に出て、コンテンツは変えずに参照フレームを変えることで、意味が変わる。

リフレーミングの目的
信念(ビリーフ)に働きかけ、自分の反応を変え、世界に対する恐怖感を減らし、管理しやすくする。「意味」を作る能力をつけ、自分の脳をよい形でコントロールできるようにする。

メタモデルとリフレーミングの関係
メタモデルも、リフレーミングの一種である。この本ではリフレーミング前の情報収集(相手の言葉の意味を正確に理解するため)にも使っているが、メタモデルによって、相手の視点を変えることも可能である。というのも本人自体が気づいていない点をメタモデルによって気づかせることが可能なため。
そのため、この26パターンの中にも、メタモデルの質問パターンそのものが個別に含まれていたりする。

6つの例題
 A) あんな意地悪を言えるあなたは悪い人です。
 B) 癌は死に至ります。
 C) 遅れてくるということは、あなたは私のことを気にかけていないということです。
 D) ストレスのせいでチョコレートを食べてしまうのです。
 E) 幹部が有言実行しないので、私はきちんとした成果を上げることができません。
 F) あなたの薦める商品は高すぎるから、買えません。

まず、主張・信念を、
 X=外的行動
 Y=内的状態
として

X→Y Xが起きるとYが起きる。XだからYになる。(因果関係
あるいは、
X=Y XはYを意味する(等価

の形にする。

リフレーミングの26パターン
 

コンテンツのリフレーミング
 解体
  1 具体化解体
   メタモデルのチャンクダウンと同じ。
  2 ストラテジー解体
   その信念の形成に至って内的表象がどう組み立てられたか
 内容
  3 外的行動
   外的行動に別の意味を与える
  4 内的状態
   内的状態に別の意味を与える
 

コンテキストのリフレーミング
 対抗
  5 外的行動の再帰的
   外的行動の内容をそれ自体に適用
  6 内的状態の再帰的
   内的状態の内容をそれ自体に適用
  7 反例
   その信念の反対となる例を見出す


 事前
  8 意図
   その信念を持つに至った意図
  9 原因
   その信念に至る原因となった出来事(非個人的な原因におく)
 

 事後
  10 第1のアウトカム
   その信念を持ち続けた結果どのような結果になるか
  11 アウトカムのアウトカム
   10の結果どのような結果になるか(10で短期的にはいい場合があるため)
  12 永遠
   その信念を持ち続けた結果、全人生を通じてどうか
 

 アウト
  13 世界モデル
   その信念が、単なるマップに過ぎないことを指摘。誰がそのマップを作ったのか。価値判断者の正当性を問う。
  14 判断基準と価値基準
   その信念よりも重要な価値基準は何か
  15 普遍性
   その信念は、普遍的(時・場所を通じて)に適用可能か
  16 必要性/可能性の除法助動詞
   もしできたら、もししなかったら、何が起きる・起きないか
  17 アイデンティティ
   この人or自分はこうだと決めてしまうことの弊害
  18 その他すべての抽象概念
   非現実フレーム:「~らしい」などの言葉を当てて非現実をにおわせる
   自己と他者フレーム:他の人にとっては真実ではないかもしれない。
   声のトーン強調: 主張の一部を強調して言うことで、メッセージを埋め込む
   タイム・ゾーン・フレーム:時制を過去形や完了形などにしてみる。
   気づきフレーム:相手の変化を指摘して気づかせる。
  19 エコロジー
   その信念についてエコロジーチェックをする
 

 類似
  20 メタファー/物語
   構造的に同型の物語を伝える


 その他
  21 両方とも
   白黒・二者択一思考の問題点を指摘
  22 偽り言葉
   使っている言葉が「負け組」のように実体として存在しないことを指摘
  23 否定
   その信念そのものが現実的ではないこと。心の中にしかないこと。
  24 可能性とアズ・イフ
  25 全体論的かつ確率論的
   一歩引いたところで全体を見渡して語る
  26 決断
   そう決断してしまってよいかを問う。

【マインドマップ】


【評価できる点】
神経言語学という観点からNLPのコミュニケーション・モデルを解き明かし、事実と意味を分離し、その関係性について深く分析している点。

また多くのNLPの教科書では、どちらかというとコンテンツ(内容)のリフレーミングに重点が置かれ、コンテキストについては、そのことがどの状況で役に立つか、という点のみを解説しているが、この本のパターンでは、コンテキストのリフレーミングの方が多い(コンテンツ4パターン、コンテキスト22パターン)。

【批判点】
とにかく読みにくく、まとまりが悪い。同じことを説明するにしろ、もう少し順序があると思う。内容を理解するために、何度も読む必要があった。
また26のパターンに分類されているが、今一つうまく整理されていない気がする。これはスライト・オブ・マウスでも感じたことだが。せっかく深いところをついているにも関わらず、構造化がいまいちな気がする。MECEの原則に従っていない。それぞれのパターンが、同じロジカルレベルにないのと、重複があるのとで、それが並べられていると非常に違和感がある。著者は、サブモダリティのロジカルレベルは高次元で働くというふうにロジカルレベルにこだわっているが、このパターンのロジカルレベルがそろっていないのは皮肉か。

一番の問題は、リフレーミングの対象として6つの課題文を挙げ、それぞれのパターンを適用したリフレーミングの事例を挙げているが、その例がパターンの適用例として非常にわかりづらい。何をどう適用しているのかがつかめないものも多く、またそれを実際の場で使ったら、コミュニケーションを壊すだろうと思えるような内容もある。

リフレーミング対象によっては、パターンの適用が不適切なものも実際あると思う。パターン化してしまったがために、無理やり例を作ったようにも見える箇所もある。

すべての主張が、X(外的行動)→/=Y(内的状態)に単純化されるのかどうかは疑問がある。外的行動と内的状態をそれぞれ別にリフレーミングしているが、この結びつきが不可分な場合、別々にリフレーミングするのは不適切だと思う。また、再帰的フレーミングはできるものとできないものがある。

そして、それぞれのパターンは、視点が違うから分けているのだろうが、結果としてリフレーミングされる内容はダブルことが多い。

マイケル・ホールの「メタ」という言葉も気になる。彼の表象では、「上」なのかもしれないが、上位レベルというよりは、別階層にあり、上位目的のように上という比喩が有効な場合もあれば、背景や前提にある場合、下で支えているイメージの方がしっくり来る。一歩離れるという点では横もありだ。

【自分が得たもの】
とはいえ、これでもか、というぐらい、意味はフレームによって作られる、と繰り返し述べられ、これまであいまいにしてきたフレームの意味が明確になるとともに、実際の場に当たって、自分が導き出した考えについて、何のフレームが当たっているのか、またはどのフレームを当てれば別の意味が作り出せるのか、ということを意識するきっかけにはなった。

NLPのプラクティショナーで受けたリフレーミングの演習は、単に参加者に別の意味を考えさせるだけで、頭を柔軟にしましょうぐらいなもので、そしてポジティブな方向に意味付けするようになっていて、どうにもご都合主義的な印象が否めなかった。

リフレーミングは自分勝手に都合のいいように解釈し、他人に害を与えたとしても「これでいいんだ」というような自我を増長させるような仕組みではない。そういう使い方もできるが、単に別の見方もあり、他にも選択肢があることを指摘するのみである。
それだけでも凝り固まった思い込みは和らぐ。

また、リフレーミング時、どのように内的表象が変わるのかに注意を払うところがNLPらしい。リフレーミングは言語だけで行うのではなく、内的表象も関わる。多くの場合、リフレーミングする際、コンテンツからディソシエイトする形になり、もし対象を視覚的に捉えている場合、距離が遠くなったりボケたりする。表象を活用すると、言葉だけを使うよりもより効果的になる。

それから思考と信念の違いが指摘されている。
「思考」に承認フレームを当てることで「信念」になる。NLPのワークで「思考」を信念に変えるために、サブモダリティを変えるワークがあるが機能しないときがあるのはそのため。明らかに間違ったと確信している内容のサブモダリティを、真実のサブモダリティの一に持ってきたとしても、信念にはならない。承認というプロセスが必要になる。

また、サブモダリティという命名が間違っているという指摘もあった。
モダリティの「サブ」=従属概念ではなく、五感より高次元の論理レベルで働く。サブモダリティは、心の映画の情景・音声・感覚・臭いの特徴や質を私たちがどうフレームするかを統制。一歩引いて、メタ・ポジションから表象を認識。

また拡張メタモデルについて知ることができた。

さらに理解を深めるために、スライト・オブ・マウスの本も買ったので、こちらも併せて読もうと思う。