<第10話>管理会社Bによる契約不履行の根本要因 その4
~人を育て続けること・危機管理を怠ったから~




1 業務を行うのは人 人を育て続けなければ不幸になる人が出ます

 4つ目の管理は「人を育てること(人的管理)」です。私は、今までずっと人を育てることに携わってきまし、管理にも十数年携わってきましたので、実はこれが最も大事な管理だと私は考えています

 なぜなら、文書管理」するのも、「金銭管理」するのも、「建物管理」をするのも、「危機管理」をするのも、みんな人だからです。人が育っていなければ、それに比例した業務しかできません

 管理会社Bは、不正行為、虚偽説明、虚偽報告、ミスなど数々の契約不履行を繰り返した一方で、管理料はしっかりとっていました。オーナーや入居者に大きな損害や精神的苦痛を与えたのにもかかわらず、代表者・役員からは謝罪の一言もなく、担当者を切り捨てて終わりで、責任は一切とりませんでした。改善策も打ち出されませんでした。社員への教育を大事に考え、人を育て続けていれば、人を支える体制、人と協力する体制、チームで仕事をやる体制ができていれば、こんなことにはならなかったかもしれません。業務はすべて人がやることです。「一事が万事」人が育っていない会社の業務は、何につけてもそれなりのレベルの仕事しかできないんだと思いました。不幸になる人が出ます。社員教育のあり方、大事ですね。

 

2 「正しい会社のありよう」を問い続けることと「人を育て続けること」を怠ると会社は信用を失います

 これは第11話以降で述べる予定ですが、私、アパートオーナーが信頼する業者さんが何人かいます。もちろん「会社」という看板を背負っていますが、仕事を依頼するかどうかは、「人」で決めています。「この人なら、信頼できる」という人です。この信頼は具体的には、

 「この人なら、入居者やオーナーのことを大事に考えてくれるだろう」

 「この人に頼めば間違いないだろう」

 「この人なら、依頼者の話を聞いて、きちんとした仕事をしてくれるだろう」

 「この人なら、人をだますようなことはしないだろう」

 「この人なら、小さな仕事でも面倒な仕事でも断らず対応してくれるだろう」

と思えるかどうかです。

 逆に「できない理由ばかりいう人」「その場逃れの言い訳ばかりする人」は信頼できません

 「この人なら、信頼できる」という人は、初めから備わっている人もいるでしょうが、多くは学び続けていくことで育っていくものであると考えます。 

 たとえ「信頼できる人」であっても、愚かな代表者や役員、管理職によって、会社の方針が間違った方を向き、過酷なノルマを課されたり、利益のためなら手段を選ばない風潮に流されていくことも否定できません。だからこそ、会社代表者や役員は、進むべき道を誤らないように将来を見据えた「正しい会社のありよう」を問い続け、社員は「人としての生き方」を磨き続けていかなければいけないのです。それを怠ると会社や社員は信用を失います。

 

3 「危機管理」の責任者は会社の代表者・役員・管理職

 5つ目の管理は「危機管理」です。これは、人を育てること「人の管理」の次に重要であると考えています会社の信頼を揺るがす重大な問題は先に掲載した現場での「建物管理」「文書管理」「金銭管理」で起きることがほとんどです。従って、重大な問題が起きる根底には「人の育ち」と「危機管理」のありようが大きく関係してくるのです。

 管理会社Bは店舗で重大問題が起きても、代表者や役員は誰一人前面に出て謝罪もせず、指揮命令することなく、対応をすべて店舗に丸投げしました。家族に健康被害まで出る状況のオーナーからすれば怒りと不信感しかありません。 

 会社の代表者及び役員クラスの人には危機管理の責任があります。いつ重大問題が発生するかわかりません。不幸にも「危機管理」に関心をもたない代表者や役員が名前だけを連ねている(幽霊役員)会社だと、いざ、重大問題が発生した際、どこに原因があって、何をどうすればいいか分からず、右往左往します。謝罪もできなければ、再発防止の改善策も打ち出すこともできません。「焼け石に水」どころか「後の祭り」です。報道でよく聞く言葉ですが、「失った信頼を取り戻せるよう・・・・」口で言うほど簡単なことではありません。

 

4 いくつかの小さなトラブルが大きなトラブルを生む 「ハインリッヒの法則」

 「ハインリッヒの法則」とは、1件の重大事故の背後には、重大事故に至らなかった29件の軽微な事故が隠れており、さらにその背後には事故寸前だった300件の異常、いわゆるヒヤリハット(ヒヤリとしたりハッとしたりする危険な状態)が隠れているというもの。「1:29:300の法則」とも呼ばれます

 業務を行うに際して、このヒヤリハットは避けて通れません。管理職は、ヒヤリハットを把握した時点で、適切な対応をせず放置すると、軽微な事故につながります。軽微だからと何も対策を取らず放置しておくと重大事故になります。

まさに、管理会社Bは、社内のヒヤリハットに誰もが無関心で、軽微なことなどお構いなし、すべて放置した結果、違法行為、不正、虚偽報告、虚偽説明、契約不履行・・・・先に掲載したような重大問題に至りました。管理職が小さな問題のうちに真摯に対応していれば重大な問題には至らなかったと思います。


<チェックポイント>
①管理職は仕事をする人(管理会社ではたらく従業員や委託先も含めて)の仕事実態を把握した上でスキルアップを含めた適切な指導・助言をし、人を育て続けることに努めていますか
②管理会社は「ハインリッヒの法則」にあるように、ヒヤリハットや些細なミスを放置せず、その改善に努めていますか
③トラブル等起きた際、迅速かつ適切な対応ができるよう危機管理体制ができていますか

④<おまけ>(外からはよくわかりませんが)代表者・役員・管理職は「正しい会社のありよう」を問い続けていますか?そういう姿が見えますか?

 

 第1話から第10話まで私の数えきれないくらいのお恥ずかしい、苦い経験を紹介してきました。

 第11話からは、そこから学んだことを生かして、「アパート経営者の新たな挑戦」として掲載する予定です。