<第6話>「オーナーさん、半分泣いてください」
アパートを退去する場合、入居者と管理会社の担当者が原状回復のため立ち会いを行い、賃借人(入居者)負担分と賃貸人(オーナー負担分)を確認します。
先代オーナーから聞いた話ですが、入居者が退去する際、管理会社Aの担当者が立ち会いの日を忘れ、すっぽかしてしまったそうです。入居者はそのまま退去してしまい、原状回復のための入居者負担分の請求に応じなかったそうです。困った管理会社Aの社長は標記の言葉をオーナーに言い放ったそうです。これも1社独占の「殿様商売」ゆえ出た言葉だろうと推測します。また、高齢のオーナーなら拒否されることなく言い含められるだろうと高をくくっていたのかもしれません。
先代オーナーは、拒否したいけれど管理会社Aに管理をしてもらわないと困るので、泣く泣く入居者原状回復負担分の半分を負担したそうです。
自社の管理業務怠慢を棚に上げ、責任の半分をオーナーに押し付けてくる管理会社のやり方にあきれるばかりでした。
2代目オーナーの私からすると、管理会社Aは「無理が通れば道理引っ込む」会社だと思わざるを得ません。
裏(人の目につかないところ)で顧客を裏切るような背信行為をしている人や会社は、いくら表(人の目につきやすいところ)でよい結果を出していたとしても、裏の部分が発覚した時点で、国民の怒りを買い、信頼が失墜します。
ふと、昔訪れた奈良の薬師寺を思い出しました。読者の皆さんは薬師寺に行かれたことがありますか?
薬師寺東塔の先端の「水煙」と呼ばれる(もやもやとしたように見える)部分には繊細で手の込んだ透かし彫りが施されています。見学者である私たちには遠すぎてよく見えません。昔の人は、なぜ、こんな見えないところに24名の飛天が舞う透かし彫り装飾を施したのでしょうか?
お寺の方の説明によると「人の目につかいないところは手抜きをしやすいですが、この塔を見ていただくと、人の目につかないところも決して手を抜いていません。むしろ人目につかないところほどていねいな仕事をしているんです。・・・」
失われつつあるこの精神! 改めてそんな仕事(生き方)ができたらいいなと思います。
<チェックポイント>
①入居者が退去する際、賃貸借契約書に基づいた入居者の原状回復負担分の一部をオーナーに請求してくることはありませんか?
②責任ある立場の管理職が「無理が通れば道理引っ込む」ような言動をしていませんか?
③不動産会社や管理会社は、なりふり構わずお金儲け第一主義の企業体質になっていませんか?