<第3話>アパートに入っているケーブルテレビ設備の契約者(名義人)は誰ですか



 

 昭和から平成当時、私の住んでいる地域では入居募集、家賃管理、建物管理、退去、リフォームなどを取り扱う不動産会社兼管理会社はA社1社しかありませんでした。先代である両親は必然的にA社に管理委託しました。
 2代目である私からすると、1社独占というのは振り返ってみるとある意味「殿様商売」みたいなものだと感じます
 先代がアパート経営を始めてまもなくすると、オーナーが依頼しないのに、いつの間にか入居者にケーブルテレビの提供が始まりました。新しいテレビアンテナ(設置に十数万円)が設置されているのにもかかわらずです。驚くべくはオーナーとの間でケーブルテレビ設備をアパートに設置してよいという契約書、同意書などを交わさないで導入されている点です。それも管理会社A名義
 後で判明したことですが、ケーブルテレビ設備の名義人は、管理会社でした。その事実はオーナーはもちろんのこと、アパート管理担当者にさえも知らされておらず、入居者から「テレビの映りが悪い」とのクレームがあるとその修理代の請求を名義人の管理会社Aが支払うのではなく、オーナーへ求めてくるのです。何とも理不尽な話です。
 この事実が判明したのは、入居者から「テレビの映りが悪い」というクレームが管理会社Aに寄せられた際、その対応についてオーナーが確認のためケーブルテレビ会社に直接問い合わせたことで発覚しました。ケーブルテレビ会社は「オーナーさんは契約者ではないので不具合があった場合は契約者(名義人)である管理会社Aを通してください。工事代金の支払いは管理会社Aです」との回答。よくよく聞くと、管理会社Aはケーブルテレビ会社と団体契約を結んでいるとのことでした。オーナーは大きな損害を受けた一方で、管理会社Aは、ケーブルテレビ会社と団体契約を結ぶことで利益が入る仕組みになっており、唖然としました。

 企業が利益を求めることは何も悪いことではありません。しかし、自社利益のために、管理している物件のオーナーときちんとした契約・同意書を交わさずに、オーナー側に大きな損害を与えることを厭わない企業姿勢に幻滅しました。また、そういう管理会社Aに乗っかり利益を享受するケーブルテレビ会社にも不信感で一杯でした
 私は、アパートのインターネット環境を整備しようと考えていたので、ケーブルテレビ会社へ「現在のケーブルテレビインターネット利用者の実態を教えてほしい」と連絡したところ、ケーブルテレビ会社からの回答は一言「オーナーさんは契約者ではありませんのでお答えできません」で終わりでした。
 つまり、オーナーはアパート所有者にもかかわらず、管理会社Aが契約書・同意書なしで設置したケーブルテレビ設備には一切手が出せないのです。管理会社Aとケーブルテレビ会社によって、オーナーは完全に「蚊帳の外」にさせられてしまいました。
 そこで、私は、管理会社Aに「ケーブルテレビの名義人をオーナーに変更してほしい。そうでないとインターネット環境が整備できない」と申し出ると、社長は「それでは工事代を払っていただき名義を買い取ってください」とのこと。私は、アパートのアンテナ設置時の十数万円の領収書と過去の家賃収支報告書を示して「うちで設置したアンテナ代はこれだけかかりました。ケーブルテレビ設備の工事代はいくらでしたか?アパート開設当時、入居者はアンテナでテレビを見ていました。それなのに半年もしないうちに、うちからお願いしたものではないケーブルテレビが入っています。これはどういうことですか?誰とどういう契約をしたのですか?」と矢継ぎ早に問うと、社長は「調べてみないと・・・」と言葉を濁しました。
 数日して、担当者から「金銭なしでケーブルテレビの名義変更に応じます」との回答がありました。
 名義変更後、私は入居者に意向調査をした上で、アパートのケーブルテレビ契約を解約しました。それとともに管理会社Aとの契約(契約書自体なし)も解約しました。

<チェックポイント>
①アパートにケーブルテレビ設備がある場合、名義人はオーナーさんですか?それとも管理会社ですか
②ケーブルテレビ設備に不具合が生じた際の修理代は名義人が負担していますか
③ケーブルテレビ設備とインターネットが入っている場合、テレビ配線とインターネット配線は同じですか、別々ですか
④管理会社及びケーブルテレビ会社がオーナーと交わした契約書(同意書)はありますかそれがないと、後々うちのケースのようにトラブルの要因となりかねません。