私は爬虫類が好きである。

ワニもトカゲもヘビもかわいいいなあと思う。

「熱川バナナ・ワニ園」では、ワニの数の多さに歓喜し、狂ったようにワニの写真を撮りまくった。

カメの博物館「伊豆アンディランド」では、タクシーの運ちゃんに、

「あそこはつまんないよー。カメしかいねえもん。」

と言われたにもかかわらず、結構おもしろいと感じたものだ。


そんな私が、群馬県にある「ジャパンスネークセンター」に行ってみたいと思うのは当然の成り行きであろう。

私は小さい頃から、群馬の親戚のうちの近くに「ジャパンスネークセンター」(地元の人はヘビセンターと呼んでいる。)なる場所があるのは知っていた。

子供の頃、親や親戚の人に

「ヘビセンター行ってみたいなあ。」

と言っても

「気持ち悪いから行かないよー。そこはヘビがいっぱいいるんだよ。」

と言われ、すぐに却下されていた。


大人になった今でも、私のヘビセンターへのあこがれは色あせることはなく、私はヘビセンターへ行く機会をうかがっていた。

そして、そのチャンスはついに訪れた。

ある年の夏、両親と夫、子供達と共に日帰りで群馬の親戚のうちに行くことになった私は、まだ幼い子供達に、

「ヘビセンター行ってみたいよね。」

としつこく言い続け、ついに

「いきたい。」

と言わせるのに成功したのである。


当時、まだ3歳と2歳だった子供達の希望は、あっさり受け入れられ、私は晴れて「ジャパンスネークセンター」に行けることになった。

私の母と、親戚のおばさんは、

「どうしても行きたくない。」

と言うので、私と夫、子供達、私の父とで、ヘビセンターに向かった。


その日は、この夏1番かと思われるほどの猛暑であった。

汗をだらだら流しながら、ヘビセンターに入園した私達は、そこであることに気が付いた。

今は夏休み中で、どこの行楽地も人であふれているというのに、人が全然いないのである。

私達のほかには、あと1組の親子しかいない。

きっと暑いので、みんなクーラーのきいた室内にいるのだろうと思い、とりあえず見学することにした。

パンフレットに描いてある地図を見ると、野外飼育場をまわるルートの途中に、室内展示場のある建物が3つあるようであった。


まずは、書いてあるルート通り、野外飼育場から見ることにした。

野外飼育場とは、動物園のように、オリの中にヘビが放されてるのだが、草がボーボー生えていて、ヘビなんか1匹も見つからない。

次のオリ、またその次のオリを見ても、ヘビを見つけることはできなかった。

オリの草だけを眺めた後、やっと待ちわびていた室内展示場にたどり着いた。

もう、私達はこの暑さの中歩くのは限界であった。

そして、涼しいであろう建物に足を踏み入れた。

ところがそこで私達を待ちうけていたのは…


クーラー、きいてない…。

クーラーがきいてないというより、クーラーのことなど最初から念頭にない建物であるらしかった。

倒れそうな暑さの野外より、さらに暑い。

もう地獄のような暑さである。

もちろん私達以外、人なんていない。


確かにヘビは熱帯の生き物である。

そのヘビのために、クーラーを設置しないという考えは、ヘビにとっては快適環境であるに違いない。

でも、私達の立場って、ヘビ以下かよ!

最初の建物には、イグアナがいた。

イグアナをバックに撮った写真があるので、これは間違いない。

でもあとどんな生き物がそこにいたのか、全く思い出せない。

暑さで、記憶力が低下していたのだろう。

私達は、地獄の室内展示場をやっと見終わり、またオリの中の草だけを見ることになった。


ヘビセンターは山の中腹にあるので、ルートの途中に急な勾配があり、汗だくになりながら、急な階段も上らなければならなかった。

階段を上り終わったところで、私達は売店を見つけた。

中に入ると、やっとそこはクーラーがきいていた。

その売店で売っていたのは、一昔前どころか二昔、三昔前に土産物屋で売っていたような、ダサいものばかりであった。

欲しいと思うものなど1つもない。


その売店には、客は私達だけしかいなかった。

何か買う気は全くなかったが、お約束のように店のオバちゃんが近づいてきて、私の父に蛇革のベルトを薦め始めた。

まさか買わないだろうなあと心配していたが、父はちゃんと断っていたのでよかった。

こんなところで買った蛇革のベルトだけは、してほしくないものである。

まだ売店で涼んでいたかったが、オバちゃんがうるさいのでしかたなく店を出た。


私達は売店の前の自動販売機でジュースを買い、暑い外のベンチに座って飲むことにした。

そのとき、私は売店の出入り口付近に、気になる張り紙を見つけた。


そこには、

「王様のブランチでも紹介!元気もりもり!マムシスティック」

と書いてあった。(暑さでモーローとしていたので、そのマムシスティックという名前、あってるかどうか、ちょっとあやしい。)

変わったもの好きの私にとって、マムシスティックはとても魅力的なお菓子である。

そこで、夫や子供に

「あそこに書いてあるマムシスティック、買ってくるけどいる?」

と訊いてみた。

するとみんな

「いらない。」

というそっけない返事。

しかも夫は、

「えっ、ほんとにあれ買う気なの?信じられない。」

と信じられないようなことまで言っている。


近所の友人達にも、マムシスティックお土産で買っていこうかなあ、と思ったが、とりあえず1袋300円(この値段もあってるかあやしい。)を購入。

マムシスティックの袋の大きさは、トマトプリッツ1箱に4袋入ってるうちの、1袋くらいの大きさであった。(わかりにくいな。この例え。)

袋には、ちゃんとマムシのイラストも書いてある。

マムシスティック自体は、ポテロングとかカールスティックのようであり、それが3本(これもあってるかあやしい。)入っていた。

その中にちゃんとマムシパウダーが練りこまれているというのだ。

いったいどんな味なのか、とても楽しみである。

張り紙にあるように、本当に「元気もりもり」になるのだろうか?


私は売店の前のベンチで、早速マムシスティック食べることにした。

そして、マムシスティックを口に入れたその瞬間、

ぐにゅ。

という歯ごたえが・・・。

これ、湿気てるじゃん…。

マムシスティックの味がどうこう言う前に、湿気てるスナック菓子なんて食べられたものじゃない。

もしかしたら湿気てるんじゃなくて、もともとこういう歯ごたえなのかもしれない。

そうだとしたら、もう最悪である。

マムシスティック、期待していただけに、私の受けたダメージは計り知れないものがあった。

私の様子をずっと伺っていた夫は、やっぱり少し気になるのか、

「どう?味?」

と訊いてきた。

「これ湿気てるよ…。」

力なく答える私に、夫は明るく

「それってサイテーじゃん。」

などと言って笑っている。

そんなふうに言われ、腹が立ったが、確かにこのマムシスティックはサイテーなお菓子であったので反論の余地はない。


もともと暑くて喉がからからだったため、マムシスティックの変な味が喉からとれず、私は気持ち悪くなってきた。

娘のジュースを奪い、ごくごく飲んでみるがやっぱり喉がヘンだ。

さすがの私もマムシスティック、それ以上は食べられず、カバンにしまいこんだ。

果敢にもマムシスティックに挑んだ私であったが、悔しいことに完敗であった。


喉がヘンなまま、この暑さの中、見学を再開した。

もう野外飼育場なんて見る気もおきない。

次の室内展示場の建物にたどり着いたはいいが、案の定、ここもクーラーはついてない。

そこには、恐竜の模型が置いてあった。

でも、本物の恐竜の化石や動物のはく製が展示されている科学博物館によく行く私にとっては、その恐竜の模型なんか、ただのハリボテにしか見えない。

それでも一応そのハリボテをバックに写真を撮ってしまう私。

なんか悔しい。


暑くて何がなんだかわからないうちに、ついに最後の室内展示場のある建物に着いた私達。

建物に入るが、やっぱりクーラーはない。

そこにはヘビがいたような気もするが、もう暑くて何が展示されてたなんて、ほとんど覚えてない。

ただ、部屋の隅に置いてあるテレビに、ヘビのビデオが流れていたのは覚えている。

そして、その横に、年代ものの扇風機が!

はやくその風に当たりたい!

と思うのだが、その扇風機の前には、ぐったりとした親子がイスに座って、ぼんやりしていた。

せっかく見つけた扇風機であるのに、その前は陣取られていたのだ。

暑さと虚しさでへろへろになり、その建物を後にした。


でも、私がヘビセンターに来たかった本当の理由は、展示以外にあった。

そこでは、希望者にヘビを抱っこさせてくれるというのだ。


私達は期待に胸を膨らませて、目的の「ヘビとのふれあいコーナー」に行った。

ところが誰もいない。

おかしいなあと思っていると、「土日、祝日のみ」と書いてあるのを発見。

今日は平日だった。

もう一気に体の力が抜けたのは言うまでもない。


帰りに、子供2人にゴム製のヘビのおもちゃを買ってあげて、やっとヘビセンターを出た。

子供達に

「ヘビセンター来たから、もう来なくていいよね。」

と声をかけると

「えーっ、またきたいよー。」

という返事が。

ほんとにまた来たいのか?

本気で楽しかったと思うのか?

来るのはいい、でも夏だけはカンベンと思う私であった。


親戚のうちに戻ると、夫は私の母と親戚のおばさんに向かって、

「ママ(私)は、マムシ入りのお菓子なんて買ってるんだよ。」

とうれしそうに報告しやがった。

それを聞いた母達、

「えーっ!そんなの買ったの?よく食べられるわねー。」

と言って驚いている。


湿気てて食べられなかったんだよ!

でも悔しいから、そんなこと言わない。

それにしても近所の友人達に、マムシスティック、お土産に買わなくてよかった。

あんなのあげたら、無視されるところだったぜ。


どうでしょう、皆様も「ジャパンスネークセンター」行ってみる気ありませんか?

エッセイのネタにもってこいですぜ。(悪魔のささやき)

 

 

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