私が入院したのは、出産の2回、それに切迫流産、腎盂腎炎のときの計4回である。

 

その中で2回目の出産のとき、こんなことがあった。
私は予定通り帝王切開で出産を終え、あと数日で退院を迎える予定であった。
そんなある日、病院の廊下でうろうろしていた私は、とても懐かしい人物に会った。
その人は、妊娠4ヶ月のときに切迫流産で入院した際に同室になった女性であり、とても気が合ったのにもかかわらず、私の方が先に退院となり、なんとなくそれきりになってしまった人であった。
彼女は出産はこれからのようで、まだ腹はでかかった。
話を聞くと、今日これから帝王切開で出産なのだという。
私は、がんばってねと彼女にエールを送り、自分の部屋へ戻った。
 

それからしばらくして、また廊下をうろうろしていると、彼女の両親と夫が病院に来ているのを見つけた。
私は彼女のお母さんに、
「これから出産ですね。実は私、前に同じ部屋だったんですよ。」
と話しかけた。
彼女のお母さんも、
「あら~、あなたはもう産まれたの?男の子?女の子?」
などと言い、私とお母さんは話が弾んだ。
 

そこへ彼女が戻ってきたようで、お母さんが、
「ほらっ、お友達よ。」
と私を指差して彼女に声をかけた。
その瞬間、私は固まったまま動けなくなった。
なんとそこには、見たこともない見知らぬ妊婦が立っていたのだ。
私としたことがっ! 間違えてんじゃねーかっ!!
 

私は、さっきお母さんと話が弾んだ手前、今更人違いでしたとも言えず、もうやけくそで、
「久しぶり~。」
と言って、その見知らぬ妊婦に馴れ馴れしく話しかけた。
その妊婦は当然のごとく「?」の顔をして、すぐそばにいた夫に小声で「知らない。」と話している。
 

やべー!どうすればいいんだ…と思ったそのとき、お母さんが、
「あんたボケちゃってんじゃないの?」
とその妊婦より私を信用した言葉を述べた。
私は、ボケてんのは私の方だよ…と心の中でつぶやきながら、
「じゃああとでね!」
と明るく言ってその場を後にした。
 

確かにこれから出産するのは仲良しの彼女だけとは限らない。
それにしてもまぬけ体験であった。
もう少しで思いっきり恥をかきそうになったが、もう二度とあの妊婦に会うことはないだろう。
もうすぐ退院だし…。
そのときの私は、のんきにそう思っていた。
 

ところが、なんとその妊婦、出産後私と同じ部屋に入院することになったのだ。
頼むから私のことは忘れてくれ、と思っていたにもかかわらず、その妊婦は記憶力抜群だったようで、私を見ると「あっ。」という顔になった。
またもやピンチ到来か、と身構えた私だったが、その妊婦(もう妊婦じゃないけど。)、この部屋では先輩の私に向かってぺこぺこした態度を取り始めた。
それを見た私は、あ、楽勝かもと思い、
「前に私、隣の部屋に入院してたんだけど、そのとき一緒だったよね。」
と一緒じゃなかったのに、その妊婦に対して同意を求めた。
その妊婦は、
「はい、そういえばそうだったかもしれませんね。」
と私に同意するハメになった。
 

これで一件落着である。
私も正直にあれは人違いでしたって言えよなあ。
その妊婦も何の落ち度もないのに気の毒に……。
ただその妊婦はブスなのに、夫がハンサムであったのが今だに悔しい。
一方仲良しだった彼女とは、それから病院内で出会い、仲良く過ごせたものであった。

 

 

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