すぐ脱ぐ私。

でも露出狂と言うわけではない。

私が惚れ惚れするほどのナイスバディの持ち主ならまだしも、若かりき頃から貧乳街道(どんな街道だよ・・・)ばく進中の身である私にとって、裸身をさらすのはできるだけ避けたいことの一つである。

 
子供が生まれて間もない頃には、授乳のため、惜しげもなく周囲にいる人々の前で胸をさらし、よく人々を困惑させたものであった。

でも断っておくが、さすがの私も外で胸を出したわけではない。

公園などで授乳している母親を見かけるが、よく胸を見せずに器用に授乳しているものだと思う。

私はそういうのが大の苦手で、つい胸をばーんと出してしまうのだ。

実家で父親の前で授乳していたら、母親に、

「まさこ(私)はよくお父さんの前でおっぱいあげられるわね。お母さんなんて恥ずかしくてできなかったものだけど。」

と言われた。

友達が自宅に遊びに来てるときにも堂々と授乳をし、その友達に

「まさこちゃん(私)、胸大きくなったよね。」

という感想を述べられたものであった。

そう、何を隠そう、その当時私の胸はおっぱい製造期間であったため、長い間Aカップを保持していた私の貧乳は、Bカップまで巨大化していたのだ。

でも悲しいかな、せっかくのBカップは授乳が終わるやいなや、あっという間にしぼみ、また元のAカップに成り下がってしまったのである。

無念……。

 
だけど授乳中に胸を出すのは別に恥ずかしいことではないし、全て愛する子供のためだと思えばどうってことはないと思う。

ところが私は会社で行われた健康診断で、見事なほど恥ずかしい体験をしてしまったのだ。

今思い出しても、「ああ、私のバカバカ!」と自分を責めたくなる心境である。

 
その日は、会社の健康診断であった。

社内放送があったら、用紙を持って、健康診断が行われている体育館へ向かうことになっていた。

やがて社内放送がかかり、私は同じ部署の先輩(女)や友達(女)と一緒に体育館へ向かった。

うちの会社の健康診断は男も女も同じ体育館で健康診断を行うことになっていたので、私と友人達は内科検診のために列に並んだ。

この列は男女入り混じっており、女性に配慮のない会社だということがうかがえた。

私の番になり、ついたての反対側に行き、内科医の先生に検診をしてもらった。

その先生は、私は貧乳だからか、「もっと栄養とって太った方がいい。」などというアドバイスをし、私の内科検診は無事終わった。

 
数日後、私は同じ部署の友人達に、健康診断の配慮のなさを世間話の1つとして訴えた。

「この前の内科検診、同じ列に男の人もいるのに、あんなついたてがあるだけじゃ困ると思わない?」

「え、そうかな。」

「そうだよ。見られたらどうすんの?」

「見られるって?」

「だって脱ぐじゃん。」

「脱がないよ。」

「・・・え???」

 
私は友人の答えに固まった。

内科検診は上半身裸になって、聴診器を当ててもらうのが一般的じゃないのか。

それを脱いでないとはどういうことだ?

 
友人「ブラウスをちょっと持ち上げて、その下から手を入れてもらった。」

先輩「私なんて、何にもしないで座ってたら、ブラウスの第一ボタンの上の辺をちょんちょんってやってそれで終わった。」

 
な、なんだって!

それでよかったのかー!

どうしてそれをもっと早く教えてくれないんだよ!

私ときたら、ブラウスのボタンを全部はずし、ブラジャーのフロントホックまではずして、胸をどーんと出しちまったというのに・・・・・。

内科検診のためにわざわざフロントホックのブラを選んだ私って、社内一の大バカ女だー!

 
私が胸まで出したことを知った友人達は、同情するどころか大爆笑の嵐であった。

その話を聞いていた同じ部署のおじさんは、

「まさこさん(私)は脱いだのか。」

と笑いをこらえるのに必死のようだった。

「内科検診なんですから、先生だって例え女性の胸を見たとしても、Hな気分になんかなるわけないですよ。仕事なんですから。」

と訴える私に、別のおじさんは、「いやあ、そんなことない。」と簡単に否定してくれた。

同期の男は、私の後ろに並んでいたようで、

「まさこさん(私)、時間かかってなかなか出てこないなあと思ってたら、そんなことしてたのか。」

とあきれたように笑っていた。

おまけにそいつは、

「俺が順番遅いなあと思ってついたて覗けば、中簡単に見えちゃうんだよ。おかしいと思わなかったの?」

と、私がまるで猿並みの知能しか持ち合わせてないかのようなことを言い、私にとどめをさしてくれた。

どうせ私は昔からバカだよ。

会社でブラジャーまではずしちゃうような女だよ。

 
私はそのことがあってから、仕事中に、

「あ、もしかして私スカートはき忘れたかも・・・。」

と急に不安になることがあリ、慌てて自分のスカートを確認してしまうようになった。

さすがの私もスカートをはき忘れたまま仕事することはなかった。(←当たり前。)

 
そして月日は流れ、2人の子の母となった私は、先日ウエストニッパーを買う際、店員さんに、

「じゃあ、ウエストのサイズ測ってみましょう。」

と言われ、

『しまった!今日はコート脱ぐと思わなかったから、グーフィー(ディズニーキャラクター)のトレーナーだよ。恥ずかしいなあ。』

と思いながら、トレーナーを持ち上げ、着ているババシャツを店内でさらし、店員さんに、

「お客様、そこまでしなくていいです。」

と慌てて止められるひとこまもあった。

グーフィーより、すぐ脱いでしまうことの方がずっと恥ずかしいことだといまだに気付いてない私であった。

露出狂の人は脱ぐことに喜びを感じているが、脱いでも何も感じない私の方がもしかしたら罪が重いのかもしれない。

何歳になっても全く困った女である。

 

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