強迫性障害での障害年金の請求
強迫性障害という障害の本質的病像は反復する強迫思考あるいは強迫行為です。
さらに詳しく言うと、自分の意に反して、不安あるいは不快な考えが浮かんできて、抑えようとしても抑えられない、あるいはその様な考えを打ち消そうとして、無意味な行為を繰り返す。このような症状を強迫症状と言いますが、強迫性障害は、強迫症状を主症状とする神経症(不安障害)の一型です。
もともと、几帳面、完璧主義などの性格の人に多い傾向があります。
また、強迫性障害の症状としては、たとえば、「誤って他人を傷付けたり殺してしまったりしやしないか」などの強迫観念、「便・尿・ばい菌などで汚染されたのではないか」などの不潔恐怖を伴った強迫観念、そのために人に近づけない、ものに触れないなどの回避行動、触った後に何度も手を洗う行為、些細な事の理由などをしつこく詮索し、時には質問してまわる行為などです。
強迫性障害の患者さんの半数はうつ病が合併してくるのも特徴的です。
強迫性障害 診断ガイドライン
確定診断のためには、強迫症状あるいは強迫行為、あるいはその両方が、少なくとも2週間連続してほとんど毎日存在し、生活する上での苦痛化妨げの原因でなければならない。強迫症状は以下の特徴をもっているべきである。
- 強迫症状は患者自身の思考あるいは衝動として認識されなければならない
- もはや抵抗しなくなったものが他にあるとしても、患者が依然として抵抗する思考あるいは行為が少なくとも1つなければならない
- 思考あるいは行為の遂行は、それ自体楽しいものであってはならない
- 思考、表象あるいは衝動は、不快で反復性でなければならない
うつ病 診断ガイドライン
確定診断のためには、抑うつ気分、興味と喜びの喪失、および易疲労性が通常うつ病にとって最も典型的な症状とみなされるため、これらの内の少なくとも2つ、さらに以下の症状のうちの少なくとも2つ以上が存在しなければなりません。具体的症状の数によって軽度、中等度、重度と判断されます。
- 集中力と注意力の減退
- 自己評価と自信の低下
- 罪責感と無価値観
- 将来に対する希望のない悲観的な見方
- 自傷あるいは自殺の観念や行為
- 睡眠障害
- 食欲不振
症例によっては、時に不安、苦悩及び精神運動性の激越が抑うつ症状よりも優勢であったり、以前から存在していた恐怖症や強迫症状の憎悪、あるいは心気症的とらわれなどの症状が加わることによって気分の変化が隠されたりすることがあります。
強迫性障害とうつ病の鑑別診断
強迫性障害とうつ病を併発している場合、いずれの診断がなされるかは、通常はうつ病とされますが、慢性障害の場合などは、他方の症状なしに持続する症状(障害)が優先されます。
障害認定においては、たとえ診断書に強迫性障害とうつ病の併発という風に書かれていたとしても、現に優先している症状、すなわち、主たる症状はどちらの障害によるものなのかが重視されます。ここが強迫性障害における障害年金請求の最重要ポイントとなります。
統合失調症における強迫症状
よく、以前は強迫性障害と診断されていたのに、転院したら統合失調症になったという方がいます。
統合失調症において発展する強迫症状は、病態の一部とみなすべきとされており、鑑別が問題となることはさほどありません。
しいて言えば、以前は強迫性障害と診断され、強迫性障害と書かれた診断書と、現在かかっている病院から統合失調症と書かれた診断書を書いて提出したところ、遡って認定されたという事例もあります。(あくまで統合失調症の一部症状)
強迫性障害で障害年金を請求する場合
診断書に書かれるべき傷病名はあくまで、強迫性障害以外のうつ病などの傷病名が書かれることが一番ですが、傷病名記入欄に「強迫性障害」と書かれた場合で、かつ、うつ病を併発している様な場合は、主訴はいずれの障害からくるものなのかが最も重要です。
この点に注意して申請を行うようにしましょう。
障害年金を請求する前に
強迫性障害で障害年金を請求される前に、当事務所までご相談ください。
また、現在、統合失調症で治療中であるが、認定日の診断書が強迫性障害で書かれているという様な方、一度、ご相談ください。