’12記者リポート:富山発 わいせつ事件公訴棄却判決 10歳告訴能力どこまで /富山(毎日.jp)
http://mainichi.jp/area/toyama/archive/news/2012/03/14/20120314ddlk16040563000c.html

 

告訴の能力については、判例があります。

 

最決昭和32年9月26日刑集11巻9号2376頁

「なお、昭和三〇年一〇月一七日附検察官の被害者・・・に対する供述調書の第七項末尾の記載ー記録二九八丁以下ー及び同人の告訴状ー記録三一丁ーとに徴すれば、被害者・・・が本件犯人に対し処罰を希望する意思を表明しているものと認められるから、たとえ、右被害者が昭和一六年一〇月三〇日生れで、中学二年生であつたとしても、告訴の訴訟能力を有していたものと認めるのが相当である。)
 
※被害者の実名部分は隠しています。

判例の文言から見るに、処罰の意思を明確に示すことができれば、告訴能力が認められる、という立場と考えられます。


別の記事では、判決の立場も紹介されています。


強制わいせつ:10歳の告訴能力、「幼い」理由に否定 「地獄だった、重い罰与えて」も届かず(毎日.jp)

http://mainichi.jp/select/jiken/news/20120314mog00m040003000c.html

 

記事によれば、

 

「地裁は判決で、(1)被害の客観的経緯を認識している(2)被害感情がある(3)制裁の意味や仕組みを理解している--を告訴が有効な条件とした。そのうえで「幼い年齢」や本人の正式な告訴状が作成されていない状況から、「告訴能力を有していたことには相当な疑問が残る」と指摘した」
 
としていますが、上記最高裁判例と比較すると、ハードルが高いのではないか、という印象を受けますし、そこまで求める必要はないとも感じます(少なくとも、(3)は告訴の場合に不要ではないかと思います)。
 
さらに、
 
「祖母の告訴状も、母が最終的に起訴されなかったことから、告訴権者は母であって祖母ではないとし、無効と判断した」
 
と紹介されています。判決の原本を見ていませんが、仮に記事で紹介された通りだとすると、これはおかしいと言わざるを得ません。というのは、刑訴法232条は、「被害者の法定代理人が被疑者であるとき」として、「被疑者」であれば、一定の親族に告訴権を認めているわけですから、「法定代理人である母が起訴されなかったから、祖母の告訴は無効」という理屈はおかしいと思います。