裁判員一審が無罪、二審が逆転有罪。

しかし、最高裁が再逆転無罪判決。


判決日時
最判平成24年2月13日
裁判要旨
1 刑訴法382条にいう「事実誤認」の意義
2 刑訴法382条にいう「事実誤認」の判示方法
3 覚せい剤輸入等被告事件について,被告人の故意を認めず無罪とした第1審判決に事実誤認があるとした原判決に,刑訴法382条の解釈適用を誤った違法があるとされた事例

http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=81993&hanreiKbn=02


判決文

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20120213161911.pdf


直接の論点は、刑訴法338条の「事実の誤認」の解釈問題。


理論上は本判決の言うとおりだと思うのですが、いざ具体的な事実関係を前にすると、微妙な判断だと思います。

高裁が有罪判決を下したのも、理解できなくはありません。


(私が感じた)2つのこと。

1つ目は、この判例は、今後、被告人・弁護人側に不利になる可能性もあること。

本件は一審無罪→控訴審有罪でしたが、逆、すなわち、一審有罪→控訴審無罪、

の場合にもあてはまります。

というのは、本判決の文言を見る限りは、一審が有罪か無罪かで、場合を分けていないからです。

もちろん、本判決の事案が一審無罪、控訴審有罪の事案ですから、逆の場合に言及する必要はないので、一審有罪、二審無罪の場合は、判断を変える可能性も否定はできません


2つ目は、このような判決が出ると、捜査当局としては、やはり自白をとることに力を入れるおそれがあること。

本判決は、検察官が主張する間接事実から、故意を認定できないとした、一審の判断を尊重しています。

おそらく、検察側は、「これだけの間接事実を挙げてもダメなのか?」と落胆していると思います。

間接事実からの故意の認定はもちろん慎重であるべきですが、「ならば自白をとるしかない」という流れになっては、行きすぎた捜査活動への懸念もうまれます。


ともかく、最高裁の一審重視の姿勢が顕著にあらわれた判断です。

高裁や最高裁で争えば良い、という姿勢では、大変です。