TBS対楽天事件。


実務上、極めて重要な判例と位置づけられると思います。

なお、平成22年度重要判例解説の商法7事件(東京高裁平成22年7月7日決定)の特別抗告審。

原審と結論は同じですが、論理構成は原審と異なっている点に注意が必要です。さらに言うと、原々審(東京地裁平成22年3月5日決定)とも論理構成が異なっています。


最高裁第3小法廷平成23年4月21日決定
裁判要旨
1 吸収合併等により企業価値が増加しない場合に消滅株式会社等の反対株主がした株式買取請求に係る「公正な価格」は,原則として,株式買取請求がされた日における,吸収合併契約等の承認決議がなければその株式が有したであろう価格をいう
2 吸収合併等による企業価値の増加も毀損もなく,吸収合併等が消滅株式会社等の株式の価値に変動をもたらさない場合に,株式買取請求がされた日における市場株価等を用いて「公正な価格」を定めることは,裁判所の合理的裁量の範囲内にある
 

決定文

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110421110211.pdf

 

決定文が長いのは、多数意見のみならず、田原裁判官の補足意見と那須裁判官の意見が付されているからです。

 

多数意見は基準日につき、買取請求権行使時説を採用しました。

学説上は、買取請求権行使期間満了時を採用するものがあり(江頭憲治郎『株式会社法[第3版]』(有斐閣、2009年)799頁、伊藤靖史ほか『Legal Quest 会社法[第2版]』(有斐閣、2011年)382頁〔田中亘〕)、那須裁判官も基本的にこの立場のようですが、多数意見はこれを採用しませんでした。買取請求権行使期間満了時説の問題点については、田原補足意見参照。なお、上記原審は買取行使期間満了時説、原々審は吸収分割の効力発生日としています。

 

買取請求の価格の算定については、買取請求権時の株価は、組織再編(本件では吸収分割)の効果を織り込んだものであることから、それを常にそのまま参照するのは妥当ではなく、組織再編の公表前の株価も、買取価額の評価の基礎することが妥当としつつも、本件のような企業価値に変化をもたらさないような組織再編の場合は、買取請求権時の株価とすることは、裁判所の裁量の範囲内と評価できる、としています。


あらゆる判例につき、常に一審から遡る必要はありませんし、また、そのようなことをするのは、時間的に無理ですが、この決定については、一審から遡って検討する価値はありそうです。


なお、本件は最高裁も言っているように、組織再編自体が、分割会社(TBS)の企業価値の変動をもたらさない事案であることに注意。