入試投稿の疑い、予備校生逮捕「携帯使い一人でやった」(asahi-com。朝日新聞)

http://www.asahi.com/special/cheating/OSK201103030084.html

 

以下は、野村修也先生による解説。

 

入試問題ネット投稿事件(日テレNEWS24)

http://www.news24.jp/articles/2011/03/03/07177173.html

 

被疑者の予備校生にいかなる事情があるにせよ、今回の行為を正当化することはできないでしょう。

しかし、だからといって、偽計業務妨害罪という犯罪が成立するか、また、身柄拘束(逮捕)という強制処分まで必要であるかは、分けて議論されなければなりません。

 

まず、犯罪が成立するのかについては、専門家の中でも、意見は分かれています。

 

入試ネット投稿「偽計業務妨害」成立する?(Yahoo!ニュース。)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110302-00000128-san-soci

 

※ちなみに、藤本哲也先生は犯罪学の専門家でありまして、コメントの内容も、偽計業務妨害罪の構成要件に沿って検討していないように思います。ただし、藤本先生は、産経新聞に対する取材段階ではもっと詳細にコメントしているのかもしれませんが。

 

仮に偽計業務妨害罪が成立したとしても、逮捕という強制処分に踏み切る必要があったのか、という点はさらに問題になります。

刑事上の犯罪が成立すれば、逮捕・勾留できるわけではありませんし、しかも本件では、逮捕された予備校生は未成年であり、かつ、被疑事実を認めていますし、もはや発信端末が発覚した現在、証拠隠滅のおそれもないでしょう。

 

私自身は、犯罪は成立したとしても、逮捕までは必要なかったのではないか、在宅捜査で十分だったのでは、というのが正直な印象です。もちろん、民事上の不法行為に基づく損害賠償や、入試に対する失格処分(要は京大に合格させない)も必要だと思います。その点で、私は北海道大学の町村先生のblog記事に、私も共感いたします。

 

カンニングで逮捕は行き過ぎだ(Matimulog)

http://matimura.cocolog-nifty.com/matimulog/2011/03/news-0c9f.html

 

また今回の事件を通じて感じたのは、偽計業務妨害罪の「守備範囲」は割と広いということです。今回の京都大学・捜査当局の理屈が裁判所に認められるのであれば、学内試験のカンニング等の不正行為はもちろん、授業での「代返」行為、内職行為、レポート等の剽窃も偽計業務妨害罪が成立してしまうのか。また、既に昔話になってしまった、慶應大学の法科大学院教員(当時新司法試験委員)の新司法試験問題の漏洩も、公正に行われるべき新司法試験の業務(公務)を、「妨害」したと解釈すれば、偽計業務妨害罪になってしまうのだろうか、という感想というか疑問を持ちました(ただし、新司法試験は「権力的公務」にあたる可能性があり、そう解するならば場合は、業務の中に公務を含む、という解釈が採用される必要があり)。

 

さらに今後は、試験で不正が行われた疑いが生ずるたびに、受験生側が、刑事告発するということが、常態化するかもしれません。

 

あと忘れてはならないのは、京都大学側の管理責任です。

尖閣ビデオ流出事件では、流出された側の責任がむしろ問題になりました。

今回の事件と同列には扱えませんが、やはり京都大学の管理体制もやはり問われざるを得ません。