前の記事で、いとう先生の記事を紹介しました。

しかし、もちろんいとう先生の書かれた記事は、研究大学院に入ろうとする人向けです。

では、法科大学院に入る前の準備は、何でしょうか?


意見は分かれるところでしょうが、おそらく共通理解を頂けるのは、


未修者、既修者問わず、「新司法試験の」過去問をみること


ではないかと思います。


なぜかと言うと、


1.法科大学院生にとっての第1目標は新司法試験合格であり、まずは新司法試験合格のために、法科大学院で勉強するから

(登山に例えれば、どの山を登るか、という目標設定。例えば、富士山とエベレストでは登山の方法が違うはずです)

2.法科大学院入学後は、授業の予習・復習に追われるため、時間のある今のうちに、見ておいた方がいいから

3.法科大学院入学後に、「新試験対策」をする場合、新司法試験の過去問を見ていた方が効率的であるから


です。


過去問を見る際は、新しいものから、古いものに遡ってみるのがよいと思います。

試験問題、出題趣旨は、全て法務省ホームページからダウンロードできます。

例えば、今年の平成22年の問題、出題趣旨は以下↓


平成22年新司法試験問題(法務省ホームページ)

http://www.moj.go.jp/jinji/shihoushiken/jinji08_00008.html


平成22年新司法試験論文式出題趣旨(法務省ホームページ)

http://www.moj.go.jp/content/000054317.pdf


また、ある程度の規模の本屋に行けば、新司法試験の過去問が、解説付きで市販されています。

本屋でなくても、Amazon等で、「新司法試験 過去問」とサーチすれば、該当書が出てくると思います。


あと、法科大学院に入ろうとする人の中では、新司法試験の仕組みそのものを知らない可能性もありますので、知らない人は、今の内から新司法試験の仕組みを理解しておくべきです。

理解すべき仕組みとは、受験資格(法科大学院修了者、および予備試験合格者)、試験の実施時期(5月)、時間割、試験科目、試験時間、配点です。前二者は知っている人が多いと思いますが、後は意外に知らない人も多いです。


また市販されている「模範答案集」をざっと眺めてみて、イメージをつかむのもいいように思います。ただ、採点委員のヒアリングによると、完璧なものでもないらしいので、参考程度ということで。


例えば↓

http://www.moj.go.jp/content/000006817.pdf

「最終合格者の決定を終えた今,旧司法試験考査委員でもあったが,そのときと同じ危惧を抱いている。つまり,予備校や受験にかかわる雑誌では,採点者からすると優秀答案(模範答案)とはいえない,合格者が書いた再現答案が「優秀答案」として扱われる。受験生は,それを「模範答案」として暗記する。こうして,優秀とはいえない答案が,しかもパターン化して蔓延することになる」

 

過去問をみても、未修者、特に真正未修者の方にとっては、全く解けないこともあるかと思います。

しかし、本番ではありませんから、最初は0点でもいいと思います。逆に今から完璧に解けるわけがありません。人にもよるのでしょうが、仮にズタボロであれば、「これは大変だ。3年後に自分は合格できるのか」と危機感をもち、入学前の勉強を、危機感をもちながらはじめることになると思います。要は、ズタボロの出来が、自身に奮起する力を与えてくれた、と前向きに考えると良いと思います。

 

既修者の方は、未修者以上に過去問を見ることが必要でしょう。

特に旧司法試験経験者の方は、新試験との違いをみてみて、新試験と旧試験の共通点と、相違点を体感してみるとよいと思います。


過去問を見ると、「民法の問題で、何で主張立証責任?」と疑問が湧くかも知れません。これは要件事実論が問われているということです。要件事実論は、多くの法科大学院では、「民事訴訟実務の基礎」という科目で、派遣裁判官の先生によって行われています。ですから、要件事実論を扱う授業を大切にすべきことを、入学前に知っておけば、これは他の人にアドバンテージをつけることができます。


これは刑事についても同じで、刑事法の問題を見ると、「具体的事実を摘示して」という条件が付けられて、規範定立力だけでなく、あてまめの力も割と問われています。要は事実認定の入門みたいなことも問われているのです。これも、入学後の「刑事訴訟実務の基礎」という科目で、派遣裁判官や派遣検察官によって学ぶことになります。ただ、「刑事訴訟実務の基礎」に関しては、法科大学院によって、なぜか開設されていないところもあります。


あと可能であれば、入学予定の法科大学院で新司法試験に合格した人の合格体験記を読んでみるとよいと思いますし、可能であれば、合格者と直接話をする機会をつくることが大事だと思います。


新司法試験に関する情報も色々流通する中で、信頼できるものから、信頼できないものまで多数あると思います。その中で最終的に試験を受けるのは自分自身ですから、自分自身で問題を解いてみて、その上で、自分の頭で考えることが大切だと思います。


もちろん、自分だけで考える必要はなく、法科大学院に入れば、信頼できる先生や勉強仲間に出会えるのですから、その中で、色々と意見交換をしていき、軌道修正をすればよいと思います。


現状は新司法試験の合格率は高いものではありません。また、これまでは新司法試験の競争は、法科大学院修了者のみで行われていましたが、今後は、予備試験合格者も加わります。予備試験がどの程度の合格者を出すのか分からないので、場合によっては、新司法試験の競争母体はふくれあがる可能性があり、さらに新司法試験の合格率は下がる可能性があります。


そして現実としては、法科大学院への入学が決まった段階で、新司法試験合格に向けた競争が始まっていることを意味しているように思います。