佐藤優『インテリジェンス人間論』(新潮文庫)


インテリジェンス人間論 (新潮文庫)/佐藤 優
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佐藤優さんが外務省時代に接した権力者達を冷静に分析するテーマを中心とした本。ただし、全編がそれに限っているわけではなく、宗教家や歴史上の人物も考察の対象としており、必ずしも本のタイトルとは一致しているわけではありません。それでも、通常、「人間」として観察されてこなかった「権力者」や「宗教家」を、「人間」として分析するという点では、本書の趣旨は一貫しているのかもしれません。

 

内容は興味深いものでしたが、それだけでなく、「あとがき」「文庫版あとがき」も非常に印象的でありました。多くの方に読んでいただきたいと思っています。

 

以下、引用。

「敗戦から六十二年を経て平均的日本人にとって戦争という形態で迫ってくる死は遠くなってしまった。宗教紛争や民族対立で命を奪ったり奪われたりするということも日本人の皮膚感覚で理解しづらい。日本人は死を意識することが不得手になってしまったのだ。死を意識しなくなるということは、死の対概念である生を意識しないことでもある。この辺に日本の現代思想がヤワになってしまった根本原因があると思っている」(「あとがき」320-321頁)

 

「自腹を切って買った雑誌でないと記事の内容が腹に入らない」(「あとがき」321頁)

 

「自分の表現したいことを、活字に転換することができない。能力的限界がそこにはあらわれている。これを克服するためには、考え、書き続けるしかないのだと思っている」(「あとがき」322頁)

 

「(佐藤優氏の-ESP補足)両親は私の教育に熱心だった。しかし、難関校に進めとか、よい大学に出ると将来性があるというような話は一度もなかった。母からは、『きちんとした教育を受けていると判断力がつく。国は国民を騙す。国に騙されないようにするために、自分の身は自分で守るしかない』(後略)」(「文庫版あとがき」331頁)