最高裁の判例が出ました。
事件番号 平成22(許)14
事件名 債権差押命令に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件
裁判年月日 平成22年12月02日
法廷名 最高裁判所第一小法廷
裁判種別 決定
結果 棄却
判例集等巻・号・頁
原審裁判所名 福岡高等裁判所
原審事件番号 平成22(ラ)78
原審裁判年月日 平成22年03月17日
判示事項
裁判要旨 構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権の効力は,譲渡担保の目的である集合動産を構成するに至った動産が滅失した場合にその損害をてん補するために譲渡担保権設定者に対して支払われる損害保険金に係る請求権に及ぶ
決定文
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20101206154117.pdf
引用。
「構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権は,譲渡担保権者において譲渡担保の目的である集合動産を構成するに至った動産(以下「目的動産」という。)の価値を担保として把握するものであるから,その効力は,目的動産が滅失した場合にその損害をてん補するために譲渡担保権設定者に対して支払われる損害保険金に係る請求権に及ぶと解するのが相当である。もっとも,構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保契約は,譲渡担保権設定者が目的動産を販売して営業を継続することを前提とするものであるから,譲渡担保権設定者が通常の営業を継続している場合には,目的動産の滅失により上記請求権が発生したとしても,これに対して直ちに物上代位権を行使することができる旨が合意されているなどの特段の事情がない限り,譲渡担保権者が当該請求権に対して物上代位権を行使することは許されないというべきである」
※アンダーラインは引用者。
動産譲渡担保と物上代位については、反対説(道垣内弘人『担保物権法[第3版]』(有斐閣、2008年)309頁)はあるものの、肯定するのが最高裁判例(最判平成11年5月17日民集53巻5号863頁)で、学説上も認めるのが多数説(例えば、安永正昭『講義 物権・担保物権法』(有斐閣、2009年)391頁)です。本件は「動産譲渡担保」であることには代わりありませんから、物上代位を認めるという結論自体は予想されたものと言えます。
しかし、本件の目的物は集合動産であるため、特定の動産を譲渡担保にした場合とは異なり、物の入れ替えが想定されています。そのため、通常の営業の範囲においては、別の扱いがされることも決定文では述べられています。
個人的見解として、流動動産譲渡担保の際も物上代位を肯定する一般論は賛成できるのですが、特段の事情で挙げられた、「直ちに物上代位を行使することができる旨が合意されている」場合に、通常の営業が継続している場合でも、物上代位を肯定してよいかは、担保権設定者の他の債権者との関係で、肯定してよいかは留保が必要だと思い、ちょっと考えてみたいと思います。
なお、新司法試験民法との関係で言うと、なぜかこれまで担保が関係した問題が多いことに気がつきます。第1回は集合債権譲渡担保、第4回は所有権留保と使用権限・利益の所在、第5回は抵当権侵害。旧試験の民法との比較では、際だっているように思います。担保法は技術的な色彩が強いせいか、受験生は一般的に担保法は手薄であり、また担保法については近時の判例の動向は激しく(従来の通説とは異なるものもあります)、学習が難しいところでもあります。なお、第4回新司法試験の民法試験委員の採点実感 では、「所有権留保の問題に言及していないものが大半であり,そもそも担保物権法の問題だということにさえ気付かないものも多数あり,題意に対応できていない答案が多かった。これは,担保物権法の基礎的理解が極めて不十分であることを示していると考えられる」(アンダーラインは引用者)とも指摘されています。