ジュリスト1381号
http://www.yuhikaku.co.jp/jurist/detail/017931


[法科大学院の実務訴訟教育と裁判修習]
◇法科大学院における民事・刑事訴訟実務の基礎の教育の在り方について●林 道晴……158
◇民事裁判修習の現状等について●田村幸一……170
◇刑事裁判修習の現状等について●河合健司……176


法科大学院における実務教育、司法修習のあり方について、司法研修所関係者による論説が掲載されています。


全体的な感想として、司法研修所の方針は、法科大学院、新司法試験、法曹大増員、法曹有資格者の進路の多様化の時代に即した修習にシフトしようとしている印象を受けます。あえて造語が許されるのであれば、「核心司法」ならぬ「核心修習」と言うべきでしょうか。もちろん、これは司法研修所が考えている方針に過ぎませんので、全国の現場レベルで浸透しているかは未知数ではあります。


以下は各論(私が気になったところのみピックアップ)。


法科大学院では、従来の司法修習に言う前記修習レベルは求められて「いない」ことが指摘されています。

 

林・前掲158頁。
「法律実務基礎科目については、従来型の司法修習で実務修習の導入教育としての機能を果たしていた司法研修所の前期修習に代替する教育、その肩代わりとなる教育が行われるべきであるとの議論がある。しかし、法科大学院教育がなかった時代に存在した従来型の司法修習の前期修習が、新法曹養成プロセスにおいても依然として必要であるという議論の前提自体が、同プロセスに合っていない」

 

また、集合修習の場面で、事実認定のみならず、法的理解を問う方針も示されています。

 

河合・前掲181頁。
「修習生が、法科大学院で修得した刑事実体法、刑事手続法に関する基礎知識について、実務的な観点から、その法的根拠や必要性、法的な意味合いを理解させる目的で、起案において、実体法、手続法について法的理解を問う問題を、これまでよりの重視する方向に転換を計った」


これまでの司法研修所が理論を全く無視していたとは考えられませんが、「転換を計った」と書かれている以上、法的理解(法理論の理解)にウエイトを置いた指導へシフトしているのでしょう。率直に言えば、起案等における採点で、法理論を理解しているか否かについての配点を高めている、と考えられます。


※ここからは私の考えに過ぎませんが、「法的理解」と言っても、それは法制度の基本的仕組み、基本概念、条文上の要件・効果、判例の一般的理解などのことを指していると思います。理論=細かい学説の理解というイメージがあるかもしれませんが、それは司法研修所が求めている「法的理解」の中身には入っていないように思います。