今月(2009年8月号)の法学セミナーより。

その3。

大阪パブリック公設事務所の若手弁護士の活躍が紹介されています。


法学セミナー 2009.8 656号

http://www.nippyo.co.jp/magazine/5083.html


都市型公設事務所の挑戦――弁護士を待つ人々の中へ(20)
 誰がなんと言おうとあなたの味方です――熱心弁護は我らの誇り/下村忠利・髙山 巌

 

その一例を紹介します(同誌71頁)。

「今年1月に入所した中井陽弁護士(61期)は、窃盗罪で勾留・起訴された被告人が、起訴後勾留を利用して、別件の強盗殺人未遂罪で再逮捕・勾留された事案で、勾留に対する準抗告を申し立てた。裁判官面談では、被疑者ノートを活用し、17日間で50時間以上の任意取調べを受けていることを一覧表にして説得し、『原裁判取消し。勾留請求却下』を勝ち取った。被告人は、結局、殺意の自白をとられることなく、起訴罪名は強盗傷人罪となった。

 被疑者ノートをきちんと差し入れ、起訴後の取調べについてもしっかり書いてもらったことが勝因であったが、これには裏話がある。被疑者は、任意取調べのなかで、担当刑事から『体なまっているだろう。ちょっと剣道場でもんでやろうか』などと言われ、実際に剣道場に連れて行かれていた。そのことを新人弁護士会で話した中井弁護士に、先輩弁護士から『それで何をしたの』『当然抗議文書は出したよね』と矢継ぎ早に質問が飛んだ。ところが、中井弁護士は、被告人とともに怒ってはいたものの、具体的対応までしていなかった。

 先輩弁護士の指摘を受けた中井弁護士は、抗議と再発防止申入れをただちにしたうえ、被告人に、被疑者ノートへ取調べの内容と時間を正確に記入するよう助言した。そして、再逮捕・勾留請求のタイミングで、上記のようにノートを基に作成した疎明資料を作成して準抗告を申し立て、勾留請求却下を勝ち取ったのである」