法科大学院時代に修得すべき能力を考えるに当たって、有益なペーパーだと思います。


司法修習委員会「法科大学院における『刑事訴訟実務の基礎』の教育の在り方について」

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http://www.courts.go.jp/saikosai/about/iinkai/sihosyusyu/09_03_05_keiji_kiso.html

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http://www.courts.go.jp/saikosai/about/iinkai/sihosyusyu/pdf/09_03_05_keiji_kiso.pdf


法科大学院の必修科目である「刑事訴訟実務の基礎」を、全ての法曹志望者が修得すべき「ミニマムスタンダード」と位置づけています(報告書2頁参照)。


また、報告書では、刑事訴訟実務を行っていく上で必要となる能力を「手続遂行能力と実体形成能力(事実認定能力)」と位置づけた上で、刑事訴訟実務の基礎の中心になるのは、「手続遂行能力」といしています(報告書3頁)。


なお、意見書を受けて、意見書の原案に携わった遠藤邦彦判事(大阪地裁判事・前司法研修所教官・前京都大学法科大学院実務家教員)による論稿は以下。


遠藤邦彦「法科大学院における刑事訴訟実務の基礎教育の在り方について」刑事法ジャーナル17号31頁


ここでは、法律基本科目たる刑法・刑事訴訟法をどのような視点で学習すべきかの視点が示されている箇所を引用します。

「意見書は、まず『刑事訴訟実務の基礎』科目の内容を考える上では、法律基本科目との連携・役割分担、司法修習との連携・役割分担、そして必修科目として果たすべき役割をそれぞれ意識することが重要と指摘している。

(1)法律基本科目との連携と役割分担

 法律基本科目との連携と役割分担の視点は、『刑事訴訟実務の基礎』の科目の視点から考えた場合、刑事裁判における最終的な実体的要件(刑法の裁判規範としての側面)を扱っており、実体的要件に関する判例を含めた理解や、その要件に該当するか否かを判断する上でどのような事情がどのような理由から重視されているか等についての理解が需要となる。『刑法』科目において、このような裁判規範としての刑法という観点から、事実のあてはめの場面も意識した事例や判例の分析、検討がなされ、『刑事訴訟実務の基礎』科目では、『刑法』科目で取り上げられたテーマや授業内容を踏まえつつ実体的要件の存否に関する授業が行われると、実務と架橋も意識された、刑事裁判における実体的要件に関する法理論教育がより充実した形で実践されることとなる。

 刑事訴訟法についても同様である。『刑事訴訟実務の基礎』科目では、刑事手続法のルールや、そのルールに則って行われる裁判所及び訴訟関係人の訴訟行為について、具体的なイメージを描きつつ、その法的根拠や刑事手続における実務的な意義に関する理解を深めることが目的となる。そのような具体的なイメージを描きながらその理解を深めていくためには、『刑事訴訟法』科目において、捜査段階から公訴提起、公判審理を経て判決に至るまでの刑事手続に関し、それぞれを理解する上で不可欠な制度の枠組み、基本となる法理、重要な条文等について、主要な判例や学説を踏まえて理論的な理解が学修されている必要がある」(32-33頁)