読了。


伊藤靖史=大杉謙一=田中亘=松井秀征 『LEGALQUEST会社法』

http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641179066


条文に忠実で、立案担当者の見解も中立的に引用されています。

イメージがわきやすい、というのがこの本の特色だと思います。

会社法の教科書を読んでも、イメージがわかない、という方は是非読まれるとよいと思います。


これまで会社法のテキストは、名著が多い反面、学習用という観点からは、「帯に短したすきに長し」という本が多かったように思います。
神田先生の本は、簡潔にまとまっている反面、やはり独学には厳しいものですし、

かといって江頭先生や前田先生の本は分厚すぎる、という難点がありました。

そのような中で、LEGALQUEST会社法は会社法の「テキスト」として、よいものだと思いました。


ただ、通読して改めて感じたのは、会社法の教科書は、どうしても条文の説明で終わりがちなところが多いですね。

著者が手抜きをしているわけではなく、むしろ条文を重視されていることの表れだと思います。

それだけ会社法が丁寧に作られた、と言うところでしょうか。


もちろん、会社法が出来た後も、買収防衛策のあり方(クエスト414頁)など、解決していない問題は多々あります。が、それは学習者にとっては後々の問題(要は、実務に出てからの問題)ですから、テキストに大々的に書くわけにもいかなかったのでしょう。


浮村さんが、商法(会社法も含む)について「個人的には論文で求められる記述と教科書や講義の内容が一番結びつかない科目。条文で解決できる問題も多いからですかね 」と述べられているのも、あながち分からなくはありません。


新司法試験等の学習の観点からは、あまり手を広げず、LegalQuest会社法のような適切な厚さの本を片手に、条文を読み込み、あとは事例演習(最近は法学教室に「事例で学ぶ会社法」というのもありますし)を重ねる、というのがよいのだと考えています(細かい問題は、適宜調べて補充すれば足りる)。それだけでは物足りない、という人は、法律雑誌などで取り上げられる最近の下級審のケースをみられるとよいかもしれません。