語り口は、学習者向けのような気がしました。

憲法の事例問題を考える際のヒントがあるような気がします。


青柳幸一「人権と公共の福祉」『新・法律学の争点シリーズ 憲法の争点』(有斐閣・2008年)69頁。

1 公共の福祉は正当化理由ではない

 人権制約の問題として『公共の福祉』を論じる際には、まず基本的に次のことが確認されなければならない。それは、『公共の福祉』は、人権制約の正当化根拠にはなりうるが、正当化理由とはならない、ということである。人権制約の正当化根拠である『公共の福祉』の『公共』性の積極的定義を目指した検討が求められる。

(中略)

 『人権相互の矛盾衝突』の文脈を超える規制根拠・理由の検討も必要である。その例としては、未成熟な子どもの保護を理由とする図書規制に見られるようなパターナリズムに基づく規制、2000年11月に制定されたヒト・クローン技術規制法にみられるような『人の尊厳』(『人間の尊厳』)に基づく規制等がある。これらの規制根拠・理由についても、その意味・内容を詰める必要がある。

 2 事実の徹底的な検討の必要性

 人権制約の問題は、本来的に具体的・個別な問題である。なぜなら、各人権の性質・内容・歴史的沿革は様々であるし、各人権に対する規制も特定の社会的・政治的状況のなかで課せられているからである。それゆえ、それぞれの人権制約の正当化理由は、必然的に個別的・具体的に検討されなければならない。人権制約法令の合憲性審査基準論は一定の意義を有するが、重要なことは、審査基準の『あてはめ』ではなく、当該人権を制約するための説得力ある正当化理由の個別的・具体的な検討である。

 (中略)

 学説が採る『三種の基準』論(ESP補足-厳格審査の基準、中間審査の基準、合理性の基準)においても、何が『必要不可欠の目的』あるいは『重要な目的』であるのか、目的と手段の実質的関連性とは具体的にどのような関連性なのか等、より詳論する必要がある。経済的自由の規制法令の合憲性を比例原則によって審査するにしても、手段の適合性や目的と手段の関連性等を事案の内容に即して個別的・具体的に検討することが必要である」