俳人でもなく、俳句結社の会員でもない素人の俳句学習報告です。

テーマは、『「切レ」のない十七文字は俳句ではない』という、俳人

清水杏芽氏の提唱に沿っての学習で、俳句自体の優劣を考えるの

ではありません。清水杏芽氏の提唱について詳しくは、このブログを

遡ってごお読みください。国語辞典と古語辞典がたよりの学習です。

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1.海鼠噛む人には言へぬことばかり

「言えぬ」ではなく、「言へぬ」と書かれていますので、古語の作品

ではないと思います。そこで「噛む」か「言へぬ」のあとで切れるか

考えて見ます。

「噛む」は他動詞マ行四段活用で、終止形も連体形も「・・む」と

なっています。直後に名詞の「人」 が有りますので、ここに「切レ」

はないと思います。

「言う」は「いふ」のことで、自他動詞ハ行四段活用です。「・・へ」

は已然形と命令形になります。「ぬ」は打消しの助動詞「ず」の

連体形で、直後に「こと」が有りますので、ここでも「切レ」はない

と思います。最後の「ばかり」は助詞で『動作・作用の程度や限度』

を表すのではないかと思います。ここに強い「切レ」があるとは

思えません。

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2.海鼠突く船ごと海にへばりつき

この作品は口語で書かれたものと思いますが、「突く」は他動詞

五段活用で、「・・く」は終止形と連体形になります。直後に「船」

という名詞がありますので、ここで「切レ」はないと思います。

従ってこの作品には何処にも「切レ」がなく、俳句ではないと思

います。

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3.歌口に月の冷えある神楽笛

口語で書かれた作品だと思います。「ある」は「有る」の自動詞

五段活用だと思います。「・・る」は終止形と連体形となります。

直後に「神楽笛」という名詞がありますので、この作品では連体

形と受け取られる可能性が残っています。従ってこの作品にも

「切レ」がなく俳句ではないことになります。


4.その他の作品

(1) 今日よりは稲架に夕日の落ちる景 [「・・ちる」には終止形と連体形がある。]

(2) 指先を紙で切りたる暮の秋 [「たり」の連体形が「たる」である。]

(3) 小鳥来る小学校の日曜日 [「・・くる」には終止形と連体形がある。]

(4) 大根の輪切りの厚さほどの幸 [格助詞「の」は次に来る言葉を所有する。]


5.下五が名詞で終わっている作品

作品の何処にも「切レ」がなくて、下五が名詞で終わっていることを

【体言止め】で、ここで「切レ」が生じていると書かれていることが有り

ます。体言で切れるのは、上五と中七の間か、中七と下五の間に

ついてのみ成立するのではないかと思いますが・・・。


(以上)