ひろ江は空気を読むことができず、非常識な発言をすることが頻回にある。
実例を詳細に挙げる。
事例1:長女の病気
ひろ江 :42歳
長女 :18歳
長女のユカリは、その当時、膝の脱臼を繰り返すようになる。
近所の整形外科ではサポーターや湿布などが処方され
保存的な治療をされるが、その後も脱臼を繰り返す。
脱臼すると歩けなくなってしまう為、その都度病院へ通う。
痛みも強く、学生生活にも支障がでる為、一番つらかったのは本人である。
原因は膝蓋骨(膝のお皿)が、半分外れている事に依るものだった。
ひろ江からの遺伝である。
ある夜、ひろ江は家計簿をつけていたが
おもむろにユカリの所へ家計簿を持ってきた。
「ほら見て。あなたの医療費がこんなに掛かってるの。」
と該当のページを見せた。
まるでユカリが悪いとでも言わんばかりである。
ユカリは「信じられない」と一言で感情を表した。
次女もその様子を呆れて見ていた。
しかし、ひろ江は悪びれもせず
経済的に損をしていることを伝えようとしていた。
考察:
ひろ江は空気を読むことができず
非常識な発言をすることが頻回にある。
相手が怒っても謝ることも反省することも皆無である。
常に他罰的である。
この事例で、ひろ江にとって最も気にかかる事は
“医療費が嵩み出費が増えること” である。
依って、それが非常識な発言だと理解できない。
しかし、ケガで苦しむ我が子よりも、自分の感情を最優先とするひろ江は
第3者からみれば、“人でなし“ のように見えてしまう。
事例2:次女の病気
ひろ江 :43歳
次女 :16歳
次女は成長期になってから、たびたび膝に痛みを感じるようになる。
足を伸展できなくなり歩けなくなる事もある。
余りにも頻回なのでレントゲンを撮ったところ
両膝の軟骨が飛び出していることが判った。
手術で摘出することになり入院した。
骨を削る手術だった為、大きな痛みを伴い、術後すぐには歩けなかった。
そこの病院は完全看護ではなかった為、毎日付き添い人が必要だった。
ひろ江は病院に通うことを嫌がり、あからさまに態度に出した。
「早く歩きなさいよ~」と言うようになり、
しまいには「とっとと歩きゃ、いいんだよ。」と言った。
次女の陽子は、いつもの母親らしい発言だなと思い、驚きもせず返事もしなかった。
考察:
ひろ江の非常識な発言は日常茶飯事なので
娘達は免疫ができていて、相手にすることもせず返事もしない。
しかし第3者が聞いたなら、ひろ江の人格を疑うだろう。
ひろ江が本音を言う相手は限られている。
もともと心を許せる人が少なく、人間関係が希薄である。
第3者に本音をいう機会が少ないのは、ひろ江にとって幸いかもしれない。
しかしひろ江は
基本的に思った瞬間に言葉を発する為
止める間もなく、誰かしらに失言をすることがある。
もともと、言語が拙いことに加えて、失言もあれば、
ひろ江が人間関係を構築するのは容易ではないように見える。
ひろ江の非常識な発言や、空気の読めなさ、
コミュニケーション能力の低さは、発達障害のせいもあるのかもしれない。
昔は発達障害という概念がなく、見過ごされる障害だったよう。
発達障害に加えて知的な障害もあるひろ江が
どのような学生生活を送ったのかは不明である。
ひろ江が学生時代の話をすることは殆どない。
学生時代の話だけではなく、過去の話も未来についても殆ど話すことがない。
ひろ江には過去と未来がなく、現在しか存在していないように見える。
ひろ江は常に他罰的なので自責の念もなく、心を痛めることは無い。
依って社会的なサポートを入れるのは容易ではない。
しかし知的障害があれば
一人で生きることはいずれ困難になるだろう。
ひろ江のような人は、障害をオープンにすれば
周囲から考慮され、生きやすくなるのではないだろうか。



