人を信じるという事、その愛
馬鹿馬鹿しいにも程がある。
人はその感情を持ち続けられる存在ではない。良きにせよ悪しきにせよ、いい方向にせよ悪い方向にせよ、人は、変わる。
古き良き刻(とき)―――
昔を想い、今を嘆く。
己が望まぬ移ろい行く他人の心。
それすら許容できぬというのに、よりによって。
自分にはまるで関係の無い、とまでは言わないが、さして影響があるわけでもない。こちらに火の粉を飛ばさない範囲で好きにやってくれ。
しかし、これだけは言わせて欲しい。
お前さんが望んでいるのは何だ?
自分が望む世界こそが、真実だとでも?
永遠に続くとでも?
故郷(くに)に帰る知人、地方へ移った友人、徐々に寂寥の感を帯びてきた自分の交友関係。
しかしなんつーかなぁ、そんなにレンアイって重要事かなぁ。確かにレンアイがらみで下手を打てばさ、刃傷沙汰とか結婚式当日に逃亡劇とか襲撃事件とかまさに人生の華を咲かせる事になるほど「素晴らしきかな我が人生」(自分のんじゃないけど)ってな感じになるワケで、そーゆー観点から見ると重要事っちゃー重要事なんだろうケドさ。
一つ疑問に思うのがさ、「レンアイ」ってさ、世の中で最上のものと思っている風潮があるじゃない。
それが少し不思議なんだ。
突き詰めて言うと、そして体験した事なんだろうけどさ、人の心って移ろいやすく、変わっていくじゃない。
なのに、その「心」のつながりを男女間で成し遂げたものが永遠に続いて裏切られる事がない、なんて思うこと自体…本来期待すべきじゃないと思うんだ。
無論、努力してそれをつなぎ止める事は可能なんだろうけどね。
確かに、そういう「弱さ」を持つがゆえにつながり続ける事が出来たらいいんだろうけど、哀しいかな、そういう事ってあんまり、無い。
そうでもなければ、離婚、なんていう言葉に象徴されると思うんだけど、そういう別れるシチュエーションなんて少ないと思うよ。
でもさ、惚れてたんだろ?
一時の気の迷いだったんだろうけどさ、少なくともその瞬間は「アイして」いたんだろ?
あの時のときめきとかさ、一緒に楽しい時を過ごしたんだろう?
その事を忘れちゃいけないと思うよ。
それが今じゃどうだい。
少し後ろめたくないかい?
人の恋路を邪魔する奴は、なんていう言葉があるけどさ、向こうの気持ちは決まってるんだろう?
だったら仕方ないじゃないか。
向こうは、こちらを決して振り向く事は無い。
頭では分かっていても、感情ではそう思いたくない。
その気持ちはわかる。
分かっている「つもり」だけどさ。
誰が言ったのか忘れたんだけどさ、恋愛って申告制だ、っていう言葉があるのよ。
おいらはそれを正しいと思う。
相手に向かってさ「愛してる?」って聞いて「愛してる」って言葉で確認してようやくホレたハレたっていう所に行き着くと思うんだ。
つまり…さ、向こうがそういう事を言わない、そして回答しないって事が分かっている以上、もうどうしようもないと思うよ。
すまないな、おいらにも性格って言うのがあって…こういう事はストレートに言ってしまう性質(たち)なんだ。
上っ面だけの慰めの言葉を出せるほど…
だから自分に協力を求めるなよ。
確かにできるだけの事はしたい、と思うよ。
でもさ、人には本分っていうものがあってさ、自分はちょっと色恋沙汰には疎いほうなんだ。そちら方面に臆病になっている事もあるからね。経験も薄いし、多分、ロクな事にならないと思うからさ。
だって、どこぞの結婚相談所だったっけ、そこでの診断で「別れ方『だけ』が上手いよ」なんていう診断結果を喰らった人間だから、自分。情けない話ではあるけど、さ。
だいたいさ、別れる以前に付き合う事が可能かどうか、ってところが問題だろう、って思わないか?
おいらもさ、過去に2回のレンアイ経験がある。お前さんより少ないと思うけど、まぁそれはここでは関係無いから置いとこう。
一つは8年前に、もう一つは5年前に終わった。
薄く長く続いたのが前者、濃く短く終わったのが後者という具合。
前者は…まぁ人生の過ちというか、自分の勝手で無理矢理(?)終わったけどさ、後者に関しては、多分少し引きずってる。
何せ、一人の人生をブチ壊したようなものだからね。
多分、それは今も変わっていない。
若気の至り、とかいうやつで、抱え込んでもいい、と思ってた。横溝正史の「夜歩く」の主人公ぶるわけじゃないけどさ。
だけど、それは先方の親御さんから拒否された。彼女もろとも姿まで隠す実力行為に出てまで。
そりゃぁあの時は恨んだよ。
だったらどうやって贖えというんだ、という感じでさ。
今だから冷静に振り返られるけど、あの時のおいらときたら話にならないくらいイタかったぜ。
でも、それは先方から見たら―――常識的に考えてもそうだけど―――悲劇のヒーローを気取って自分の人生を誤らせるつもりか、というもう一つの「悲劇」を抱え込む事になるんだよね。
あるゲームにもさ、同じようなシチュエーションがあって、親父さんが人生の先輩らしく「君は君の人生を大事にしなければならない」って説教するシーンがあるのよ。ぶっちゃけて言うと「誰も幸せにならない事はするな」っていう事。
同じゲーム…というかゲームがらみでもう一つ言うとさ、別のゲームなんだけど、印象深い部分があって、「浮気をしていない彼を愛してるだけ」っていう台詞があるのよ。
別の女性、それも複数の女性と関係してるのをうすうす感じた女性が、その不満みたいなのを同じ女性の上司にブチまけるシーンなんだけどさ。
で、その不満をブチまけて上司に返された言葉がさっき言った「浮気をしていない彼を愛しているだけ」ってやつ。
その上司は続けてさ、「人を愛する、という事は、その人の全てを受け入れる事」って結論付けるのよ。
その彼が浮気をしていようが何だろうが、それが「愛する事だ」ってな具合にね。
で…話を自分の事に戻すとさ…ってどこまで話したっけ?
ああ、先方の親御さんが彼女と一緒に姿を消したところまでだったっけ。
で、彼女の親御さんが彼女を連れて…どっかに消えた時は、すっげぇ荒れたぜ、自分。荒れた、というか荒んだ(すさんだ)って言った方が正確かな?
まぁそういう事もあったけどさ、少し冷静になれた今は、先方の親御さんの気持ちは痛いほどありがたいと思ってる。
あの、先方の親御さんが電話越しに言った最後の言葉。
「あの娘の事、愛してくれて、ありがとう」
今でも、その言葉は脳裏に浮かぶよ。
別にそっちの趣味があるわけじゃないけどさ、今では、彼女を愛していた事以上に、先方の親御さんの愛情を大きく感じている。
形の違いはあれ、多分、そういう事だと思うよ。
人を愛する、という事はそれほど単純な事じゃない。
相手がいてこそ恋愛とは成立するのだし、その相手にも、そして自分にも幾重にもつながる人の関係がある。強弱の差はあれど、ね。
その関係の上で「たまたま」成り立った恋愛という細く、弱い糸。
運命の赤い糸、なんてよく言ったものさ。
糸というのはそれほど強いものじゃない。無理な力がかかったり、場合によっては時間がかかるだけで、糸は切れる。
だからこそ、人は会ったり話したり身体を重ねたりして、その糸が切れないように、維持する。
遠距離恋愛っていうのを体験した事あるからわかるけどさ、しょっちゅう電話したりするのは、声が聞きたい、というのもあるけど、そういう「維持」も兼ねてるんじゃないかな。
で、不意にその維持を怠ったために…なんていうのが、「遠距離恋愛は続かない」説になると思うよ。だってさ、声を聞く事、話す事しか出来ないんだから。
その糸を維持する努力はしたのかな。
少し、その事を振り返ってみたらどうなんだろう。
無論、努力が結果に結びつかない事は多々ある。
それは相手に問題があるのかもしれない。だけど、ここではそれは問題にならない。
君自身にも問題があった、と判断せざるを得ないよ。少なくとも、別れるに至った、という所を考えると、ね。
大多数の例では、そうなる。
まさか、今回だけはそういうパターンじゃなかった、なんて事は言わないように。
そういう泣き言は、間違いなく君自身を傷つける事になるんだから。
ところで君は、彼のどんなところに惚れたのかな。
外見の良さ?
それとも心の広さ?
女性として母性愛を感じられたから?
何が君の心を捉えたのかは自分には分からない。
でもさ、そうやって相手を非難するという事はさ、「自分を愛してくれている」彼を愛していた、という事になるんじゃないかな。
だからこそ、自分の事を考えなくなった彼を―――。
ま、説教なんてガラじゃないから今日はこの辺にしておくけどさ。
というか、順番を考えずに物事を言って混乱させちまったかもしれない。その点は謝るよ。
だけどさ、いつまでかかるか分からないけど、考えて考えて考え抜いて、「よりよい選択」をするようにしようよ。
「bestな選択」ではなく、「more better」ってやつ。
こういう言い方は嫌いなんだけど、「like」と「love」の違いに近いかな?
全然違うような気がするけどさ。
さしあたり、それが自分の言いたい事。
じゃ、今日はこれで帰るよ。今度は、是非明るい話題を提供してくれよ。
もっとイイ男を見つけて既成事実を作った、って話題でもいいからさ。
そうしたら、そんな不幸な男の為に祝杯をあげてやるさ。
タシにもならん説教になって悪かった。
本来なら、こちらが愚痴を聞く役に回らなければならなかったのかも知れないのに。
あ、タシにならないついでに言っておくとさ、自分の好きなZardの曲で「Just beleave in Love」ってのがあってさ、それ聞いてみるといいかもしんない。まぁその曲じゃなくてもさ、音楽を聴いたり、考えたりする事は無駄じゃないと思う。やってみる価値はあると思うよ。
それじゃ。