彼と別れてから、
自分でも引くくらい痩せた。
食べてへんわけでもないのに
体だけが勝手に削れていく。
何もする気になれず、
気づいたらソファでぼーっとして
時計ばっかり見てる。
「今この時間、何してるんやろ」
それを考えるのが
毎日のルーティンになってしまってる。
ほんまに廃人状態。
いらんガラケーを2つに割ってやろうか、
って本気で思った日もあった。
壊したいのは携帯なんかじゃなくて、
この止まらん思考やのに。
34歳にもなって、
ここまでボロボロになるとは思わんかった。
でも、なるときはなる。
心って、年齢関係なく
ちゃんと壊れる。
そんな私を見て、
母がぽつっと一言、言った。
その一言が、
なぜかずっと胸に残っている。
……次回に続く。
朝、目が覚めた瞬間、
一番に携帯を手に取ってしまう。

「おはよう」
そんな一言が届いてる気がして。

もちろん、
画面は静かなまま。

分かってるのに、
期待してしまう自分が、
まだおる。

朝の支度をしながら、
この時間帯には
「今日寒いな」
「気ぃつけてな」
そんな何気ない言葉があった。

特別なことなんて、
何も言ってへんかった。

せやのに、
なくなった途端、
こんなに大きい。

心のどこかで、
「今日は鳴るかもしれん」
そんな淡い期待を、
まだ捨てきれてへん。

前には進まなあかんって、
頭では分かってる。

それでも、
携帯を見る癖だけは、
まだ治らへん。

朝はまた一日が始まる。
鳴らへん64和音と一緒に。
1週間しても、
2週間しても、
なかなか、なかなか心の傷は癒えへん。
もう鳴らへんって分かってるはずの、
彼からのガラケー。
それでも、
あの64和音が鳴る気して、
今日もどこかで待ってしまってるわたしがおる。
気づいたら、携帯と毎日ずっと一緒で。
肌身離さず持って、
画面光っただけで心臓が跳ねて。
いつの間にか、
パートナーは人やなくて、
携帯そのものになってた。
毎朝の「おはよう」メール。
午前中の休憩電話。
「昼ごはんするわ」のメール。
「いまから仕事戻るで」の電話。
15時の休憩電話。
18時の「もうちょいで終わる」メール。
21時の「仕事終わった」電話。
22時の「もうすぐ会える」電話。
これが毎日のルーティンやった。
マメすぎるくらい、
当たり前みたいに続いてた日常。
それが、
ある日いきなり、全部なくなるなんて。
当たり前は、
ほんまは当たり前ちゃうかったんやな。
鳴らへん携帯を見つめながら、
心だけが取り残されてる。
心にポッカリとは、
きっと、こういうこと言うんやと思う。