津原泰水さんの「ヒッキーヒッキーシェイク」(ハヤカワ文庫)

 

竺原というカウンセラー。

なぜか、強固な引きこもりも、彼には入室と面会を許してしまいます。

竺原は実は、何かのプロジェクトを計画しているらしい。そのためのメンバーを集めているもよう。条件はふたつだけ。じっと自宅に引きこもってPCでネットと向き合っていられること。何らかの”特技”を持っていること。

こうして集められた3人の若者+1人。

竺原はかれらに、パセリ、セージ、ローズマリー、タイム、をハンドルネームとして与えます。さっそく、開かれたネットミーティング。

竺原はなにを考えているのか・・・・・・集められた4人は何に巻き込まれようとしているのか。

 

 

これを読んじゃったので、レビューを再開しました。

早く読んでいただけたらな。と。

そう。これ”スカボローフェア”です。

 

パセリは、イラストレーター希望。アングロサクソン系の父親(落語家)の血を引く美少女。

セージは院生の時、講演会をしたほどのITの天才青年。

ローズマリーは、不世出のウィザード(最近では、良心的ハッカーを、そう尊称)でIT界ではロックスミスのハンドルネームで有名人。

タイムは、もっぱらインディーズからのデビューを望んでいる青年。ただし、かれの弾くベースの音は・・・・・・

そして、かれらは、ひきこもりであることを楽しんでいるのですね。その楽しさを、応援する竺原。

 

竺原がなにをしたいのかわからない序盤。分類すれば「ホワットドゥーイット」

 

ところが、すでにヒントはあるのですね。

 

で、よく知らない方に、「スカボローフェア」の歌詞を引用しておきましょう。

 

スカボローの市へいくの?

パセリ セージ ローズマリー タイム

ならあの家のあのひとに伝えて

彼女は僕の恋人だったんだ

 

亜麻の布でシャツを作って

パセリ セージ ローズマリー タイム

糸も針も縫い目も継ぎ目も使わないで

それができたら僕の真実の恋人

 

シャツができたら枯れ井戸でそれを洗って

パセリ セージ ローズマリー タイム

その井戸は水をたたえたことはない

それができたら僕の真実の恋人

 

のような感じでラストに・・・・・

おもしろいのは、この歌には女性バージョンもあり、もっとシビア。

 

彼に伝えて 畑をつくってと

パセリ セージ ローズマリー タイム

海の波と砂浜の間をたがやして

それができたら あたしの真実の恋人

 

ね。「不可能なことのオンパレード」

 

そして、歌のしめくくりは。ネタバレではないのでカキコします。

 

できなくてもためしてみて

パセリ セージ ローズマリー タイム

奇跡がおきて、できるかもしれないじゃない

試してみてくれるだけで、僕の(あたしの)真実の たった一人の恋人

 

できれば、サイモン&ガーファンクルVerでなく、他の男性バージョンで聴いてみてください。サイモン&ガーファンクルのものは、この歌そのものを聞かせることを目的にしておらず、別の仕掛けがあるので。

 

にしても小説中の「あのひと」は結局、何者だったんだろう? 

あのひとを主人公に、続編が出ますように。