まあ、この1カ月半、差し入れの本が届くまで、病院の天井を眺めながら(「お前の名まえは掟上今日子だ」とは、もちろん書いてない。しかし、青池保子さんの「エロイカより愛をこめて」のごとく、旧ソビエト連邦の版図のようなシミがひろがっております。スレイマン大帝の寵姫、ヒュッレムの故郷ってあのへんなんだ、そりゃ、金髪でもおかしくないなあ、とかウンチクが暴走しはじめたので、重要なテーマっぽいものを冷静に考えてみました。

 

ずばり「我が心のミステリー女性キャラ」です。

第一位、第2位は確定ですが、それ以下のランキングは・・・・・むむ、けっこうムズイ。

 

好きなキャラの前に、大っ嫌いなキャラをひとり。

ニッキー・ポーター

ご存知の方もおおいのでは?

あのエラリー・クイーンの助手の若い女の子。

もともと、テレビドラマ向けに作られたキャラなので、クイーンはよく了承したな、と。

 

では、例によって「降順」で。

 

アダ・グリーン

ヴァン・ダイン「グリーン家殺人事件」のメインヒロイン。

まあ、ひとめぼれといいますか。銃撃されて重傷を負い、それでもファイロ・ヴァンスの聞き込みに懸命に応えようとする姿は痛ましく、心ひかれる。

私とミステリーの「ファーストコンタクト」は「グリーン家」ですが、もし名作の誉れ高い「僧正殺人事件」から読んでいたら、ミステリーファンになったかな。疑問だ。

 

ジェーン・フィン

クリスティの初期の作品「秘密機関」のキーパーソンである少女というよりは小娘。「妙な名まえ」「でも忘れられない」。まさにそう。ただ本編が始まると、そう名乗る人物がいない。いったい沈没間際のルシタニア号甲板で機密を託された彼女は、ヒロインたちのうち、だれなのか。

後半は、メインヒロインのタッペンスを見事に食っております。

 

ここで早くも気づいちゃったのですが、気のままに選ぶと、ほとんどがクリスティの生んだキャラになっちゃわないか。それだけ、クリスティはヒロインをうみだすのが、超絶、上手。なので、シバリます。ひとりの作家さんにつき「二人まで」とします。なので、国内ミステリーのキャラもランクインする、かも。

 

③ジェニー・ペンディーン

「赤毛のレッドメイン家」のメインヒロイン。

これは、この作品を読んだことのあるひとなら、ほとんどの人が納得するか、と。魂を奪われるとは、まさに、このことなんですね。

 

③アイリス・テニエル

市川憂人さんの「ブルーローズは眠らない」の過去編のメインヒロイン。裕福な家で、溺愛されて育ったので高慢なところもあるが、ピュアな美少女。

それにしても、なんて苛烈で薄幸な運命。泣かない人はいないんじゃないか。市川憂人さんは、「ジェリーフィッシュ」よりも読みやすくてストーリー性の高い「ブルーローズ」から読むのがおススメ。「ジェリーフィッシュ」のねたばれはしていない。

同時に交配に成功した2種類の青い薔薇。蠱惑的な濃い青の「深海」、さわやかな薄い青の「天界」。市川憂人さんは、些細なディテールまで、ほんとうに美しい。

 

④聖子

加納朋子さんの初長編「コッペリア」のメインヒロイン。如月まゆらも魅力的だが、やっぱり聖子のほうが上かな。スーパードルフィー(お人形の種類)を凌駕する美少女女優。ちなみに、絵本作家の芭蕉みどりさんは、学生時代、聖子ばりの美少女でしたね~。「学歴詐称」ではなく「高学歴隠蔽」している彼女。

 

⑤キャサリン・グレイ

クリスティの「青列車」のメインヒロイン。30代前半。「美人の条件はすべて備えている」のに、控え目なので、気づかない男たちの多いこと。

 

⑥エレン・キングシップ

アイラ・レヴィンの「死の接吻」のセカンドヒロイン。

大富豪の3人娘のうち、次女。姉や妹より美しく、行動力があり、遊び好きで賢い。とくに、頭の回転の速さには目を見張る。それなのに・・・・・・ああなるのか。絶対悪、サイコパスのおそろしさ。

いつまでも、彼女にふさわしい陽光の中で、しあわせに・・・・・・と今でも願う。

 

⑦宇内舞子

泡坂妻夫さんの「乱れからくり」の女性探偵。「コッペリア」の聖子同様、人形のような美貌。ただし、スーパードルフィーというよりは、フランスのアンティック人形師ジュモーの作ったビスクドールに似ている。「コッペリア」に登場する喫茶店のマスターによれば「ジュモーには、良い子が多い」とか。日本の市松人形はヤバイ、アンタッチャブルらしい。実写映画では、若い頃の野際陽子さんがキャスティングされた。超絶綺麗でしたね。ちょっと北森鴻さんのうみだした民俗学探偵、蓮丈那智に似てる、かな。

 

⑧ジョアナ

ああ、クリスティから、やっぱり、もうひとりだけ。ミス・マープルものの「動く指」のセカンドヒロイン。傷痍軍人の兄にしたがって田舎町に静養にきた都会的美人。で、なんで「お笑い要因」になっちゃうのかな。でも笑える。

 

⑨夏原佑子

樋口有介さんのハードボイルド「彼女はたぶん魔法を使う」のメインヒロイン。大学生。被害者の親友。その魅力は、魔法のよう。それにしても、ぼーっとしているように見えて、主人公の探偵、柚木草平の数倍、頭がいいんじゃないか。ラスト、柚木の愛人である警視庁の女性キャリアと、柚木のマンションで鉢合わせ寸前の幕切れ。

 

⑩陸奥藍子ちゃん

周木律さん「眼球堂の殺人」

元気すぎるけど、可愛いなあ・・・・・と彼女に惚れ込んで、読んでました。

→ここまで書けば、読んだ人には、解るよね。みなさん、どう思いました。感想を知りたいです。

 

⑪桜川ひとみ

名まえだけで、解った人、いるかな。

柴田よしきさんの「猫探偵正太郎」シリーズのメインヒロイン。

美人かどうかは不明。なにしろ、視点はほとんどが、雑種猫の正太郎。たとえば、昔、神坂一さんの「スレイヤーズ」の名言。オーガやゴブリンからみると「人間の女は、ほぼ100%ブサイク。雑種猫に人間の女の美醜の区別がつくのか。「ついた」として、その基準て、人間と同じなのか。”絶対に違う”と思います。

 

⑫番外編「ジェシカおばさん」

海外ドラマから。脚本を手掛けているのは、長編本格ミステリー「血のついたエッグコージー」の作者アンダーソン。そりゃ、おもしろいわけです。演じたアンジェラ・ランズベリー。おばあちゃまなのに、かわいい。

 

じつは「オリエント急行」のアンドレイニ伯爵夫人も好きだったんですが、数年前の映画で、きっちり醒めちゃいました。ハバード夫人のほうが、絶対にすてき。

 

さて、みなさんの忘れがたいヒロインはだれでしょう。