昨日は綾辻行人さんの「十角館の殺人」イチオシでいきましたが。

 

他に希望がもてる作品はないのか

 

あるかも、でございます。

 

みなさん、驚かれるとおもいますが。

ずばり、貫井徳郎さんの「慟哭」

 

理由としてあげるのは

 

①これだけ各種ジャンルのミステリーがあふれているのに、そしてファンは「驚きなれている」はずなのに、読んだひとの6割が「ビックリした」と、主に読書メーターでレビューしていること。読書メーターのレビューの100%に、「ネタバレ注意」のフラグがたっている。

 

②真相が分かったという人も多数。にも関わらず、手に汗にぎって、どんどん、ページを繰ってしまう。伏線確認のために読むのではなく、「どうか自分の推理とひらめきが間違ってますように」と祈る気持ちで一気読みしてしまいます。そして、結末。ここに来るまで、キャラたちは、すでに慟哭していたんだな、と。

 

③当時、「慟哭」というタイトルが「ダサイ」と言われつづけましたが、そう貶したお偉いさんたちの顔がみてみたいです。「慟哭」だからこそ、意味がある。

 

④貫井徳郎さんのデビュー作。正直いいまして、私は「25歳のデビュー作としては、すばらしい完成度」しかし、「それが故に、9割方、一発屋で終わるだろう」と確信しました。

そうしたら、あらあら、まったく予測を裏切られちゃいましたね。短編「崩れる」の絶望感もすごい。

 

⑤鮎川哲也賞、最大の「リアル新人賞レース・ミステリー」

鮎川哲也賞の落選作だった作品。なぜ、これが落ちる? 支持したのは北村薫さんだけだった、という信憑性の高いウワサがあります・

 

⑥カルト宗教への、冷徹な眼差し

オウム真理教がことを起こす前に、カルト宗教をテーマにしたミステリーは、わたしの知る限り、2作のみ。

・本作

・そして、井上夢人さんの「ダレカガナカニイル」。

これも、ハンパない名作。読むたびに、あまりの哀切さに涙も出ない。

「慟哭」のあのキャラもそうですが、「どんなに絶望しても、泣けるうちは、救いの道を見いだせる」

 

⑦人間の心を蝕んでいく「藁一本」の含む「毒」の凄まじさ。その「藁」は、たぶん生きとし生けるものたちすべての側に落ちている・

 

・ちなみに、わたしが一番好きな貫井徳郎さんの作品は「転生」かな

 

次の作品は赤川次郎さんの「マリオネットの罠」か「三毛猫ホームズの推理」。

うーん、どちらが残るか。

「マリオネットの罠」は、主として、岡嶋二人さんや泡坂妻夫さんのファン寄りのマニアに絶賛されている作品。「これがあればこそ赤川次郎さんは三流作家堕ちせずにすんでいる」との主張がありまして。また、有名な作家兼評論家の佐野洋大先生が、この作品を「推理日記」の中で、メチャ貶したというのも、有名なエピソード。「しょっちゅう視点が入れ替わるのは、駄作のきわみ」「まるで出来そこなったハリウッドのB級映画」「2年もたたずに、忘れさられて、夢の島の埋めたて地行き」。こいつは、ひでえな。

「マリオネットの罠」のすごさは、今やミステリー界にあふれかえった「あの種のトリック」を使わずに、みごとな「どんでん返し」を噛まして、決めていること。思えば、これもミステリー界のジャンルのひとつに成長したかもしれないのに、佐野大御所さまにより潰され、かつ、後継舎もいませんでした。

 

ただ、私は残るなら「三毛猫ホームズの推理」だと思うんです。ガチな本格。しかも「。空前絶後の密室トリック」。完全に施錠された密室内の死体の山。真相は、現在読んでみると、はっきり言って「バカミス」(もちろん、ほめてます)。

見逃せないのは、後世への影響度。今の若手ミステリー作家さんに多いのは、

「三毛猫ホームズの推理」でミステリーにはまる→「はやみねかおるさんと平井和正さんを貪り読む→「十角館の殺人」を読んで頭は「まっしろ」→偏差値の高い子は「ミステリ研」に入りたい一心で京都大学をめざす(あわよくば、綾辻さんのように、可愛い彼女を作りたいという下心もあるかもしんない)→「鮎川哲也賞」か「メフィスト賞」を目指して書きまくる

このパターンは今でも多い。

 

最後に、これも残る、とほぼ確信するのが、筒井康隆さんの「ロートレック荘事件」。

なにしろ、三大SF作家が書いた、あのジャンルの「成功作」。それだけで「文学として」残るでしょう。

「傑作」とまでは、絶対に褒めたくない。明言しますが、嫌いです。

なぜなら、筒井康隆さんのような「恵まれた成功者」によって、

終始、上から目線で書かれており、タイトルの意味が解ったとき、気分の悪さに眩暈がしました。

はっきり言って、ムナクソ悪くなる「成功作」です。

ある種の「手帳」を持っている人は、特に読まない方がいい。トラウマになります。乙武洋匡さんなら、読んでもダイヤモンドのごとく傷つかないでしょうけど。

 

では、みなさまも「このミステリーは残る」と思う作品をできれば、ご教授くださいませ。

 

それにしても、一刻もはやく、「十角館の殺人」のすべてを忘れちゃいたいな~