書店で魅惑的なタイトルの本を発見。有栖川有栖さんの「ミステリ国の人々」(日経新聞社)。wikiでは触れられていない一冊です。当初は新聞連載のみで単行本化の予定はなかったとか。アマゾンにはエッセイとありますが、内容は文字通り、古今東西のミステリの登場人物ガイドです。目次をパラパラみると、なんと探偵だけではなく、中島らもさんの「ガダラの豚」に登場する呪術師バキリのような敵キャラまで紹介されています。買おうかどうか、迷って、見送りました。未読の本のキャラも多かったから。作品を読んでから、買おうと思います。

 

   帰宅して「ミステリーのキャラ」に関して、しばし考察。特に女性キャラ。古今東西、魅力的な女性キャラといえば誰だろう。

   そして、思いついたのが以下のランキング。海外ミステリに登場する魅力的な女性キャラ、ベスト10です。

   私の独断と偏見に基づいたランキングです。海外は未読の作品も多いので、変動したらまた改めてランク付けしようと思います。なお、いつものとおり、順番は「降順」です。

 

1位 ジェニー・ペンディーン

イーデン・フィルポッツの名作「赤毛のレドメイン家」のヒロイン。

刑事マーク・ブレンドンはイングランド、ダートムアの荒野で天使のように美しい女性、ジェニーに出会い、心ひかれます。しかし、少女のように初々しい彼女は、すでに人妻。やがておこる旧家皆殺し事件のなかで揺れ動くマークの想いの行方は? 

大学時代に読み、ジェニーの魅力に囚われました。訳者は私の苦手な宇野利泰さんでしたが、そんなことが気にならないくらい夢中で読了。その後、たくさんのミステリーを読みましたがジェニーほど魅惑的な女性には出あえていません。

 

2位 キャサリン・グレイ

アガサ・クリスティの「青列車の秘密」のヒロイン。

若さの盛りを老婦人のコンパニオン(話し相手)として過ごし、30代にさしかかったキャサリン。老婦人の遺産を譲られ、ちょっとしたお金持ちになります。田舎の村に埋もれていた時も、見る目のある人がみると「美人の条件をすべて備えている」というキャサリン。その彼女が美しく装って、地中海岸の社交場へと出かけていきます。パリの洋服店でドレスを選ぶ場面がとても好き。ポワロも、ひとめで彼女がお気にいり。彼女が選んだ「秋のため息」というドレス。どんなお洋服なんでしょう。

 

3位 キャロル・レニスン

アンドリュー・ガーヴの「遠い砂」のヒロイン兼・探偵・兼・容疑者。

セレブな青年外交官ジェームズの新婚の妻。誰もが振り返る美人で才気煥発。双子の姉フェイがいます。ところが、フェイの金持ちの夫が殺され、フェイも事故死。夫殺しの容疑がかかるフェイ。フェイが財産目当ての悪女なのなら、容姿も性格もそっくりなキャロルもまた悪女なのでは? 迫りくる疑惑に包囲されながらも、ただひとり、フェイの無実を信じるキャロル。それからの彼女の行動力と思考力には、ただただ、圧倒されます。

 

4位 ギぜラ・ウィリング

ヘレン・マクロイの「暗い鏡の中に」をはじめとするシリーズの探偵役、精神科医ベイジル・ウィリング博士の妻。聡明なワトソン役。

「暗い鏡の中に」では、名門女子学園の美人教師。おしゃれで社交的。ベイジルいうところの進歩的な「シャネルの時代の女」。ただ、シリーズがすすむにつれて、ただの中流夫人になってしまうのが、かなり残念。

 

5位 ルーシー・アイルズバロウ

クリスティのマープルもの「パディントン発4時50分」に出てくる女性キャラ。万能の家政婦。高学歴で、家政婦を天職として選んだ若くて臨機応変、頭脳明晰な才女。ミス・マープルに頼まれた潜入捜査も軽くこなす。

テレビ朝日のドラマで、前田敦子さんが演じるが、完全にミスキャストだと思う。

 

6位 ヘレン・シャンディ

シャーロット・マクラウドのコージーミステリー「シャンディ教授」シリーズのメインヒロイン。

主人公で探偵役、研究一筋だったはずのシャンディ教授にひとめ惚れされ、やがて結婚。これまでのミステリーではありえなかった「ぽっちゃり型中年ヒロイン」。

しかし、本シリーズ、特に後半は、彼女の魅力で成り立っている。というか、それしか読みどころがない。むかしは、もっと面白く読めたシリーズなんだけれど。

 

7位 アダ・グリーン

ヴァン・ダインの名作「グリーン家殺人事件」に登場する若い娘。当主で被害者のグリーン氏の養女。

一族連続殺人事件に巻き込まれ、銃撃されるが、なんとか生き残る。いたいたしい、のだがそれ以上に、ういういしい女性。ベッドで聴取を受ける姿は、いかにも儚げで人の心をゆさぶる。

 

8位 スーザン・ブレア

正しくはクラレンス・ブレア夫人スーザン。アガサ・クリスティの初期作品「茶色の服の男」に登場する、うらわかい社交界の花形。ヒロインのアンと豪華客船で出会い、アンの良き?協力者および親友に。アンも魅力的ですが、私にはスーザンのほうが印象的でした。

南アフリカに着いたとたん、心配する夫に「モンダイナシ カネオクレ」と電報をおくる。ある意味、アンよりも向こう見ずな性格。

 

9位 エレン・キングシップ

アイラ・レヴィンの「死の接吻」のセカンド・ヒロイン。

大金持ちキングシップの次女。名門大学に通う妹ドロシーの自殺に疑念を抱き、妹が死んだ町まで単身、調査にやってきます。キングシップ3姉妹の中で一番の美人。通っている大学は、妹の大学とは違い「金持ちの遊び人が通う軽い大学」。それゆえ、エレンは自分の真の賢さを信じきれませんでした。中田耕治さんの名訳でいきいきと描かれるエレン。その魅力の一端は、訳文の素晴らしさにもよるかも。

 

10位 ジュディス・パール

エリス・ピーターズの「修道士カドフェル」シリーズ13巻「対価はバラ一輪」のメイン・ヒロイン。

「修道士カドフェル」シリーズは12世紀、イギリス、ウェールズ地方の修道院とその最寄りの街や村を舞台とした本格ミステリーシリーズ。20巻ほどの作品がありますが、すべて面白く、シリーズ最後まで飽きずに読み切れました。まさか、絶版になってしまうとは!!

ジュディスはシリーズ中、もっとも印象的だった女性。若くして富豪の夫を亡くした未亡人。しかし、彼女は重要な遺産である豪邸を修道院に寄付。毎年、決まった日に白いバラを一輪ずつ、彼女のもとに届けることを代償として。けっして美人とはいえないが、それが気にならないほど魅力的な女。スカーレット・オハラの「清楚バージョン」です。彼女の愛を得ようとする男たち、もしかしたら彼女のために死んだ男たち。そして、みずからも失踪してしまう・・・・・

 

とまあ、こんな結果になりました。絶版本が多くてすみません。しかも、10人中3人がクリスティの作品のキャラ。その上、一番新しい作品が「シャンディ教授」シリーズ。いかに読書傾向が偏っているか、まるわかりですね。海外ミステリーは響さんのブログ「推理小説のお時間」を手引きに、順次、読んでいくつもり。

https://ameblo.jp/bookcafe-cosmos/

特に未知の大地「北欧ミステリー」を制覇したいです。響さんの紹介スピードが早いので「図書館の読みたいリスト」がついに、満杯になってしまいました。響さん、もしお読みになっていたら、「自作小説」シリーズの続きを切望します。今回、ラウラを入れてもいいのか本気で迷いましたので。

 

うーん、アイリーン・アドラーが入っていないですよね。入りませんでした。エラリー・クイーンの助手ニッキー・ポーターも入れたかったけれど、やっぱり、枠がありません。ただ、ニッキーは嫌いだという人も多いので、これでいいかな、とも。

迷ったのが、ディクスン・カーの「火刑法廷」のヒロイン、マリー。充分、魅力的。しかし、その場合、挙げるべきなのは「マリー・スティーブンス」なのか「マリー・ドブレ―」なのか選べなかったため、見送りました。

 

なんにせよ、1位のジェニー・ペンディーン。これは譲れません。初登場の荒野のシーンから始まって、彼女にまつわる描写のすべてが美しく、心を締め付けられます。そのせいで、ずいぶん前に読んだにも関わらず、「赤毛のレドメイン家」はすみずみまで、明確に記憶してしまっています。全部忘れて、もう一度読みたいという気持ちが強いのに・・・・・・

 

いずれ、か、近々か、国内編もアップするつもりです。1位はもう確定です。これも、ジェニーと同じく不動の1位です。それ以下はいろいろと迷いそう。読んでいる作品数が多いので。

 

みなさまの海外ミステリ、女性キャラ1位は、どなたでしょうか。