浅田次郎さんの「ブラックオアホワイト」(新潮社)

 

   久しぶりに再会したふたりの男が昔語りを始めます。

   エリート商社マンの都築。時はバブル全盛期。都築は世界をまたにかけ、スイス、パラオ、インド、北京、京都を駆け巡ります。

   行く先々のホテルで寝ようとすると、使用人が二つの枕を持ってきます。枕の色は黒と白。

   「ブラックオアホワイト?」

   かれらはたずねます。どちらの枕で寝ますか、と。

   不思議なことに黒い枕を選ぶと悪夢を、白い枕を選ぶと良い夢を見るのでした・・・・・・

 

 

   黒い枕で眠ると悪夢を見、白い枕で眠ると良い夢を見る。ほんとうに、ただそれだけの話です。そのパターンが、スイスから始まり、各地をめぐって繰り返されていきます。

 

   夢の内容はバラエティに富んでいますが、それほどぶっとんだ物語というわけではありません。

 

   バブルを舞台にしていますが、あの時代の空気が表現できているとも思えません。そもそも、なぜバブル期が舞台でなければならないのか、その必然性もわかりません。

 

   「プリズンホテル」の笑いと涙を同時に含んだ絶妙なストーリーテリングもなければ、「蒼穹の昴」のようなスケールの大きさもありません。ほんとうにこれは浅田次郎さんの小説なのかと、読みながら何度も疑いました。

 

   途中で読むのをやめようかとも思いましたが、読み通しました。オチというオチもなくラストを迎えました。

 

   否定だらけのレビューになってしまいましたが、浅田次郎さんには、昔のような力に満ちた作品を書いてほしいというのが正直な感想です。

 

   もちろん、私の読解力が乏しく、この小説の意味するところがわからなかっただけかもしれないのですが。