恒川光太郎さんのデビュー作「夜市」(角川ホラー文庫)

 

   大学生のいずみは、高校時代の同窓生、裕司に夜市に行かないかと誘われます。

   あまり気乗りしないままむかった岬の森では、不思議な夜市が開かれていました。妖怪たちが、様々なものを売っています。この夜市では、望むものはなんでも手に入るとか。しかし、決まりがあります。それは、手に入れたものの対価を支払わない限り、けっして、夜市から抜け出すことはできないというものでした。

   裕司は実は、子どものときに一度、夜市を訪れていたのでした。そこで、野球の才能を手に入れた裕司。彼が支払った対価とは・・・・・・?

   そして、今再び、裕司が夜市に来た目的とは・・・・・・

 

 

 

   角川ホラー文庫から出ていますが、ホラーというより、ダーク・ファンタジーです。恒川光太郎さんは、この作品で日本ホラー小説大賞の大賞を受賞しました。この小説は、長編ではなく中編です。中編が大賞を受賞するのはたいへんなことです。

  

  以来、恒川光太郎さんは”恒川ワールド”としか言いようのない、不思議で魅力的な物語の数々を世におくりだしています。

 

  「夜市」ですが、ダークですが、美しい小説です。なんといっても文章が美しいです。そして繰り広げられる不思議ワールド。

 

  もうひとつ、「風の古道」という中編が収録されています。

  神社のわきから不思議な道に迷い込んでしまった少年の物語。  

  恒川光太郎さんの作品の中でも名作との評判が高い小説です。