1巻
足は速いが授業にも部活にもやる気を出せない女子高生「速川唯」が、天才的頭脳を持つ弟・尊の実験室でうっかり懐剣(タイムマシン起動スイッチ)を抜いたところ、敗走中の足軽隊に紛れ込んでしまう。
時は永禄2年(1559年)、戦国時代であった。
そこで偶然名乗った孫兵衛のせがれ「唯之助」として、孫兵衛の女房の吉乃(おふくろ様)の世話になり百姓の手伝いをしながら過ごすが、途中で出会い一目ぼれした若君様・羽木九八郎忠清にもう一度会おうと黒羽城へ赴く。
しかし門前払いを受けた唯。
帰り道で空を見上げた時、満月の日に元の世界に戻れることを思い出し、若君とニアミスをしつつ、現代に無事帰還。
戦国時代では1か月過ごしたが、現代ではたった3分しか経っていなかった。
だがその後、日本史の木村先生から、唯が行った永禄2年に黒羽城城主羽木家は宿敵・高山との戦に敗れ滅亡、若君も死亡することを聞く。
「若君を助ける」と決意し、次の満月で戦国に戻った唯。
そこでは、高山から小垣城を奪還するための戦いが始まろうとしていた。
2巻
唯は天野信茂に頼み込み小荷駄隊として従軍したが戦の過酷な様を見て気絶し、羽木軍大勝利で沸き返る中無力さをかみしめる。
その夜、鐘ヶ江ふきが若君の閨の相手に差し出されることをあやめから聞き、ふきと入れ替わりふくと名乗り若君と会うことに成功する。
戦で命を落とした者や落ちゆく相手方の兵を思い気持ちが沈んでいた若君にとって「人はあんな風に殺しあっちゃイカンですよ」と言い切るふくは気になる存在であったが、同衾を怖がっているふく(唯)には手を出さず「腹が決まったら参れ」と言い残す。
唯は戦の際に若君の傍近くで守るために、天野で雇ってもらえるよう再度信茂に頼み、悪丸との駆け比べに勝ち天野小平太の元で召し抱えられることになる。
一方、人違いとは知らず黒羽城にふきが到着する。
そして高山は野上衆と手を組み、小垣城を再び奪わんと3千対1千の、圧倒的に羽木が不利な戦が始まろうとしており、唯は尊に助けを求めるべく現代に戻っていった。
3巻
現代で1か月過ごす間に木村先生から戦術の指南を受け、尊が不眠不休で製作した秘密兵器を携えて、唯は消えた3分後の永禄2年に戻る。
若君は単騎で敵陣中央を突こうとし、唯は若君の騎馬の轡(くつわ)を取り、「でんでん丸」を手に共に敵陣を駆け抜け、「まぼ兵くん」の兵を本物と勘違いした高山軍は敗走する。
その功で唯は若君の御馬番となるが、馬を扱うことができず実質は馬糞運搬係であった。
若君はふくによく似た唯之助を怪しんでいたが、遠乗りの際胸があることに気づき、紅梅餅を食べさせようと呼んだ時の振る舞いで、唯之助がふくであることを確信。
「まだ腹は決まらぬか」と優しく微笑む。
恥ずかしさから藁の中に隠れた唯は、如古坊と坂口信広の会話を漏れ聞き、和議の行われる吉田城で何か起こると察知する。
和議に向かった若君は羽木成之の手の者により心臓付近を射抜かれ瀕死状態となり、唯の機転で若君は現代へと消える。
4巻
尊は、唯の代わりに現れた若君のために救急車を呼び、両親に唯が1か月戻らないことを告げる。
若君は病院や車等に心底驚きつつも騒がずそれを受け入れるが、黒羽城跡を訪れ初めて450年後であることを実感し羽木が滅ぶことを知る。
その時助けになったのは唯の変顔写真と、尊の言葉だった。
若君は再手術のため次の満月の時に永禄2年(3分後)へ帰ることができず、永禄では成之の謀により、若君かどわかしの嫌疑が掛けられた唯は、逃亡生活を送っていた。
その後天野家に匿われるも、吉乃が捕まったことにより城に出頭する。
一方若君は順調に回復し、タイムマシンの燃料切れで若君が使った後は1回しか使えないことを聞き、「唯を必ず返す」と父母に約束し戦国に戻る。
若君は牢で体調を壊した唯を抱きしめ、天野家で養生させ、タイムマシンはあと2度使えると唯に嘘を告げる。
5巻
若君の警固番役に取り立てられた唯は、小平太の厳しい稽古を逃げ出し若君の元へ行くが、若君がその夜ふきのところに渡ることを知り落ち込む。
次の日の夜、遠乗りの約束を反故にされた若君は心配して天野家に忍んでいき、唯が嫉妬していることを知る。
永禄2年11月、高山が戦準備をしていることがわかり、羽木の先陣は成之が務めることになる。
成之が高山と内通していることを知る唯はそれを若君に伝えようとするが、如古坊に連れ去られ媚薬を飲まされる。
そして成之と見つめあっている所を探しにきた若君が目撃し、若君もまた嫉妬することを自覚する。
満月の夜、唯は若君の頼みで「戦国の女性」姿となり、若君は唯を手許に置いておきたい心と葛藤しながら、「お前のことは生涯忘れぬ」と送り出す。
戦国に戻れぬことを知った唯は嘆き悲しむが、木村先生から羽木家が永禄2年に滅んでなかったことを示す、松丸家から羽木家への詫び状が発見されたと聞く。
6巻
姉が悲しむ姿に心痛めた尊は無茶をして燃料を作り、戦国との行き来が一往復のみ可能となる。
5か月振りに戦国に戻った唯は、黒羽城へ向かう阿湖姫の一行をそうとは知らず助ける。
吉乃から、若君の活躍で高山との戦いに勝ったことを知らされ、「若君が羽木家領民のために承知した婚礼を邪魔してはならぬ」と諭された唯は、梅谷村に引き籠ろうするが、途中偶然にも若君と会い二人は抱きしめ合う。
若君に出会ったら2度と戻らないと決めていた唯は懐剣を投げ捨て、若君もまた「お前がこれほどの覚悟で戻ったからには他の者を娶ろうとは思わぬ」と告げる。
婚礼が日延べになり気落ちしている阿湖姫は気の合う唯之助と城下に忍んでいくが、そこで高山の手の者に襲われ、阿湖姫と着物を取り換えた唯が身代わりにさらわれる。
そして、高山宗熊と阿湖姫との縁組の承諾を求める手紙が松丸家に届いたことを知った若君は、高山の城に松丸義次を名乗って潜入することを決意する。
7巻
若君は、尊の発明した道具を持った悪丸だけを伴い長沢城に入るが、阿湖姫(唯)と宗熊との婚儀がすぐ行われることを知り「けむり玉」で唯の奪還を急ぎ、牛背山に入り道に迷う。
一方黒羽城では若君が高山領へ行ったことで騒ぎになり、羽木忠高の命を受けた小平太と成之とが国境の小垣城に向かい、長沢城に来たのが忠清だと知った高山宗鶴も激怒して山狩りを命ずる。
山奥の荒れ寺で一息ついた唯は、星空の下、「こちらへ参れ」と誘う若君に腹を決めたことを告げ、初めてのキスを交わす。
しかし追っ手が迫っていると判明。
寺の和尚とその弟子・奇念を伴い、一行は急遽出立する。高台から、両軍が川で睨みあい羽木軍形勢不利と見た若君は、自身が高山に投降することで戦を回避しようとするが、唯は反対し「でんでん丸」で若君を失神させ、羽木軍目指して駆けだし撃たれながらも高山に伏兵がいることを伝え倒れる。
そして成之から、唯之介が忠清の大事な女子(おなご)であることが、一部の家臣に伝えられた。
8巻
無事羽木軍に合流した若君は、自分の浅慮で始まった戦の陣頭指揮を執り、川を挟んで対峙する高山軍の攻撃を次々と防ぎ、数百の舟で高山軍が川を渡ろうとしたときも「まぼ兵くん」を使い窮地を脱する。
一方唯は熱が下がらぬまま小垣城から黒羽城奥御殿へと運ばれ、若君の寵姫として似つかわしくない風貌、立ち居振る舞いに困惑する藤尾や侍女たちからいじめを受けることになる。
戦は双方とも援軍を繰り出し膠着状態となっていたが、強硬派の宗鶴が倒れたことから、宗熊と忠清(若君)の間で和議が交わされた。
その後若君はすぐ唯に会いに戻り、若君と共に乱世で生きることに微塵の迷いも無いことを聞くと「唯、この忠清の妻になれ」と告げ、今度は長いキスを交わす。
忠高は驚き反対するが、お方様の説得もあり承諾する。
若君の許嫁となった唯は、若君の命を守り抜くことが一番の目的だったことを思い出し、戦のときは共に行くと決意を告げる。
その直後、奇念から修行の旅に出ることを聞いた唯。感涙と共に、その後ろ姿を見送った。
9巻
松丸に帰ろうとする阿湖姫に成之が求婚、野上衆も忠清(若君)と和睦、無事四家の同盟が成立し、後に天下を平定する織田家に対する備えも盤石かに思われ、また唯の結婚準備も着々と進み婚儀まであと5日となった。
しかしその夜、「織田家家臣・相賀一成と父宗鶴の間で密約が交わされ和議を破ることになった」との詫び状が宗熊より届き、若君は策を講ずべく小垣に向かう。
それを知った唯も追いかけるが「人は家名や城のために死んではならぬ。
皆の命を守ることができれば負けたと思わぬ」との存命を明かして皆を止めてほしいと頼まれ、黒羽に残る。
高山・織田合わせて4万・鉄砲3千500丁の大軍が小垣城を抜けて、羽木領内を着々と進む中、軍議が開かれ、各々が戦を主張し、さらには高山から「すみやかに開城し忠清を引き渡せば家臣領民に危害を加えない」と到底呑めない書状も届く。
そんな中、唯の元に捨てたはずの懐剣(起動スイッチ)が、若君から届けられた。
10巻
若君の父・忠高は、千原元次の死を悲しむ唯と助力を申し出た野上元継の意見に従い、羽木家総勢即刻退去と野上の里へ逃れることを決断。
「まぼ兵くん」で敵を騙し、黒羽城を捨てて逃げ出す。
一方の唯は野上衆の案内で小垣城にいる若君の元に急ぐが、途中、小垣城が落ち満月より1日早い明朝に明け渡しされることを知る。
小垣攻めの名目上の大将・宗熊に出会った唯は、開城期限を1日延期して欲しいと頼み、城内で若君と再会する。
苦しいほど抱きしめられた後、1日だけでもお嫁さんにしてほしいと頼み、木村政秀夫妻の立会いの元で婚礼を上げる。
満月の夜に目が覚めた唯は若君を現代に逃がそうとするが、「お前をここで死なせるようなことあらばこの忠清、生涯悔いのみが残るものと分からぬか!」との言葉を聞き、尊に一縷の望みを託し現代に帰ることを決める。
番外編其の一 - 若君13歳の初陣の話。
番外編其の二 - 治療で現代に来た時の洋服姿の若君と小姓「尊」の話。
11巻
現代にて失意の生活を送っていた唯は、大手山に忠清(若君)の供養塔が有ること、奇念がそれを建てたことを知る。
悲しむ姉を見た尊は、今の問題の解決策を思いつく。
それは未来の自分に、新たな改良型タイムマシンを、今の自分に向けて送らせるというもの。
一方の永禄では、若君が相賀一成より、一成の娘との婚姻を迫られていた。
そんな折、若君の父・忠高に、伯父である御月晴永より、自分の領地である緑合(ろくごう)へ来ないかとの書状が届く。
その申し出を受けると決め、緑合へ向かう羽木一行と、改良型タイムマシンでやって来た唯が、途中の山中で出くわす。
若君が黒羽城に囚われの身だと聞いた唯。
ただちに黒羽城へ向かうが、入り込む方法が無い。
その時出会ったのが、あやめ率いる一座。一座の協力で、婚礼の席に紛れ込んだ唯。
若君と共に逃げ出し、追っ手の目の前で現代へと姿を消す(その光景を見た相賀勢は、若君は病死したとごまかす)。
その後現代で平穏な生活を送る二人。
しかし唯は、若君に、共に戦国で生きる決意を告げ……。
12巻
唯と共に現代にやって来た若君だが、責任感の強い彼は、やはり羽木一族を見捨てることは出来なかった。
唯の両親に詫びを入れ、戦国時代に帰ることを決意。
唯も付いて行く。
黒羽城近くの森に戻った二人、城から吹雪(若君の愛馬)を連れ出した悪丸と出会う。
一方で、緑合に着いた羽木家一同の前に、阿湖姫の兄・松丸義次が現れ、姫を返して欲しいと言い出す。
成之との恋ゆえに、それを受け入れられなかった姫だが、思わぬ怪我の功名で、すべて丸く収まるのだった。
そして唯たち三人も、苦労はしたが無事、緑合に到着。
一同は喜びに包まれる。
永禄四年春、緑合城にて改めて婚礼の披露が行われ、若君と唯は、ようやく名実ともに夫婦となるのだった。
その一方現代の速川家では、唯の家族が、木村先生から若君と唯(天野の娘と記されていた)の行く末を聞いていた。
二人の間に四男三女の子供が出来ること、その子孫が、明治維新まで続く大名となることを。(後書きで、元々の構想ではこの巻で完結だったことが明かされている。)
番外編其の一 - 唯の「おふくろ様」吉乃が、天野信近の後添えとなるまでの、その経緯の話。
番外編其の二 - 屈折していた成之が心を入れ替えるまでの、心境の変化を描いた話。
番外編其の三 - 唯と若君の最初の出会い、それに至るまでの事を、若君の視点で描いた話。
13巻
若君の父・羽木忠高が、伯父の御月家を継ぐことになり、忠高は御月忠永と、忠清(若君)は御月清永と改名。羽木家は名目上、この世から消えることになる
。一方、若君の正室(正妻)となった唯は幸せな新婚生活を送るが、教育係・渡瀬の指導は厳しく、しとやかさに欠ける振る舞いに、臣下からの評判もよろしくない。
そんな中、成之と阿湖姫の婚礼が行われ、めでたい雰囲気の御月家。ところが緑合を織田家の使者が訪れ、御月家は織田陣営に加わることになる。
織田と組んでの最初の戦は、なんと、地侍に乗っ取られた村上城(高山家の城)の奪還であった。
城を包囲して降伏を促す御月勢に、ようやく相手は、城を明け渡すと申し出る。
しかしそれは罠であった。そのことを知らせるため、唯は小垣城までの伝令役を買って出る。
案内役の柿市惣左衛門と、馬では通れぬ近道をひた走る唯。
常人なら丸1日かかる道を半日で駆け抜けるが、途中で体調が悪化。
なんとか知らせた、その場で倒れてしまう。
実は唯、すでに身籠もっていたのだ。その夜、小垣城に、タイムマシンの改良に成功した尊が現れ……。
14巻
妊娠に気付かず無理をして、流産しかけた唯。
お腹の子を救うため、尊の持って来たタイムマシンで現代に向かうが、その結果、尊が戦国時代に取り残される。
慣れぬ戦国時代で尊が苦労する中、織田信長が高山宗鶴・宗熊父子を陣中に送り込んで来る。
村上城の弱点は、それを築いた者が一番よく知っているという読みであった。
このことがきっかけで、忠永と宗鶴の長年の確執も終わり、実質的に和解。
村上城も落城する。
一方で現代の唯、お腹の子は助かったものの、タイムマシンがこのままでは使えないことを知る。
その状況を打破するため、尊と若君は、457年後まで開けるなと厳命した上で、タイムマシンの説明書を御月家の蔵に収める。
ところが、唯が何ヶ月もの間姿を見せないことから、若君の奥方は亡くなったのではと、あらぬ噂が流れる。
その噂を聞きつけ、家臣の娘(偶然にも天野という姓だった)を若君に嫁がせようとする信長。
もちろん御月家は拒否するが、緑合城にやって来た織田からの新たな使者は、なんと信長自身であった。
そこへ……。