一方、アメリカでは、一般的に契約締結から決済までの間に調査期間が2~3か月、長いものだと1年程度置かれ、その間不動産業者とは別の専門会社が、取引物件の権原調査、関係書類等の保管、決済の代行等を行っている。この専門会社は「エスクロウ会社(Escrow Agent)」と呼ばれ、契約締結後に売買当事者は権利証や手付金等の関係書類をこのエクスロウ会社に寄託することにより、自らが関係書類を保管することの危険を回避できるとともに、エスクロウ会社に書類・代金の引き渡しや計算等を代行させることにより決済に向けての面倒な手続きを解消できる。また、エスクロウ会社はたいてい、権原保険業務を行っている場合が多く、取引物件の権原等の調査も同時に行われる。権原保険とは保険の一種で、希望どおりの権限が得られなければ、それによる損害を権原保険会社が支払うというもので、アメリカ独特の他国に例をみない制度である。

つづく