真の先見的金融政策とは?



出展:日本総合研究所ホームページ(http://www.jri.co.jp/

「チーフエコノミスト 湯元健治の眼/(株)日本総合研究所 

チーフエコノミスト、調査部長 湯元 健治 2007年1月22日付」より


注目の日銀の利上げは12月に続いて今月も見送られた。

日銀は「景気・物価動向に関する先行き判断」と「リスク判断」の二つを柱に金融政策を行う「フォワード・ルッキング(先見的)な金融政策運営を標榜してきた。この考え方の背景には、経済が正常化するのに伴い、異常な超低金利も是正されるべきとの「金利正常化論」がある。

しかし、12月の利上げ見送り時には一転、「弱めの個人消費やCPI(消費者物価指数)を見極める必要」があるとされた。今回も「強弱様々の経済指標を今後さらに見極めていく」判断が示された。

日銀は景気指標重視姿勢を強めたとの印象を受ける。本来、先見的な政策運営とは、先行きの見通しに基づく政策判断のはずだ。

足許の指標が変化しても日銀の予測が変わらないなら、利上げを実施すべきだ。弱めであることが理由で金利を据え置いたのなら、その説明は「景気の下振れリスクが高まったので据え置きとした」と言うべきだろう。

昨年秋以降の日銀幹部の強気の発言や利上げの有無に関するマスコミ報道、政府・与党の利上げけん制圧力などで、市場の予想は大きく揺れ動いた。

日銀が市場との対話を深めるには、日銀自身が景気・物価見通しを数値で公表し、見通しを微妙に変えた場合は、その結果や変更理由について、説明責任を果たす必要がある。これが先進国型の先見的政策運営ではないか。