阪神大震災12年 地域の結束強化目指せ

 六千人以上の命が奪われた阪神大震災から十七日で十二年が経過した。最大の被災地だった神戸市の焼け野原にはビルが建ち並び、神戸は復興を果たしたように見える。

 しかし共同通信社が神戸市に暮らす被災者二百人にアンケートしたところ、生活状況が「回復していない」と答えた人は34%に上った。新たに住宅ローンを抱えた人は58%で、震災前と後で二重ローンになった人は22%だった。住宅再建で経済的な苦境に陥ってしまったケースは多い。

 一九九八年に被災者生活再建支援法ができ生活必需品の購入に最高百万円が支給されるようになった。二〇〇四年の改正で三百万円に拡大されたが、がれきの撤去や利子補給に限定され、肝心の住宅再建に使うことができない。これでは地域から住民が去ってしまう恐れもある。支援の拡充が求められる。

 阪神大震災の教訓は、地域社会の崩壊による被害の拡大だった。地震発生後、住民は住んでいた地域と無関係に仮設住宅などに振り分けられた。孤立した被災者が自殺したり高齢者が孤独死したりする悲惨なケースが相次いだ。

 地域社会の結束の強い地域では、災害発生時にも素早い救助活動が行われた。住民がまとまりやすく復興も早かった。神戸市は福祉と自主防災活動を組み合わせた「防災福祉コミュニティ」づくりを進めているが、地域の結びつき強化も狙っている。ハード面では、公共施設や住宅の耐震化など災害に強い街づくりも課題だ。

 今後、発生が予想される東海、東南海、南海地震は、都市部や中四国地方に大きな被害をもたらすといわれる。阪神大震災の重い教訓を生かす必要がある。


2007/01/17 山陽新聞引用