定年など人生の転機にあたり、ライフスタイルの変化で、自分の住んでいる家屋を売却して、新しい住宅を購入したり、売り切りで賃貸住宅に住むケースがあったりします。そのような時、譲渡所得の金額が3000万円以下であれば、「居住用財産の3000万円特別控除」を活用すれば課税はなくなり、3000万円を超える場合は、譲渡所得税を納税するか、新しく住宅を購入するなら「居住用財産の買い換えの特例」を活用するかの検討が必要です。
そこで、居住用財産の売買にともなう、いろいろな税務上の特例をまとめてみました。まず、「居住用財産の3000万円特別控除」とは、譲渡した年の1月1日における所有期間が5年超の長期譲渡、5年以下の短期譲渡を問わず、譲渡益から最大3000万円の控除が認められる税制です。
次に「居住用財産の買い換えの特例」とは、今年12月31日までの間(現在、期限延長の審議中)に、譲渡した年の1月1日現在で所有期間が10年超、さらに居住期間が10年以上で、譲渡した年の翌年の12月31日までの間に買換資産を取得する見込みがあるなどの条件を満たすと、課税が繰り延べされるというものです。
たとえば、1000万円で取得したマイホームを6000万円で売却すると5000万円の譲渡益が発生します。3000万円の特別控除を使うことができますが、6000万円以上の居住用財産に買い換えると、譲渡がなかったものとみなされて課税されません。
ところが、買い換えに際し譲渡損失が生じることもあり、そのときは「譲渡損失の損益通算と繰越控除」の適用を受けることができます。
適用条件は、譲渡した年の1月1日現在で5年超所有したマイホームを譲渡して、居住用部分の床面積が50平方メートル以上の物件を住宅ローンを利用して買い換えることなどです。合計所得金額が3000万円以下の年に適用でき、新しく買い換えたマイホームでの住宅ローン控除も活用できます。
譲渡損失と繰越控除の計算の仕組みは図の通りで、譲渡損失が2100万円、給与所得が500万円と仮定したものです。
買い換えをしないで売り切りの場合に譲渡損失が生じたときも、損益通算、繰越控除の特例が使えます。ただし、5年超所有し、売却する資産に住宅ローン残高が残っていることが前提で、(ア)通常の譲渡損失(イ)〈住宅ローン残高-売却金額〉のいずれか小さい金額が税務上の譲渡損失の額となり、買い換えの場合と同様、図示の通りです。
いずれの取り扱いも、所有期間、居住期間など複雑な税務上の条件があるため、実際の売買にあたっては税理士などの専門家の助言や税務署での事前確認をお勧めします。
急(せ)いては事をし損ずる
何事も、あせると失敗しやすいもの。マイホームの売却など落ち着いて検討しよう。
(2006/12/05 産経新聞引用)