発売されて間もないが、既に随分と話題になっているようだ。
下記二行のタイトルが、お馴染みの薔薇を冠したロゴとともにイエロー枠の中に納まっているアルバム・カヴァーを目にし、わが目を疑った、という方も多いとおもう。
RECOMPOSED BY CARL CRAIG & MORITZ VON OSWALD
Music By Maurice Ravel & Modest Mussorugsky
タイトルこそ、リ・コンポーズと謳っているが、Original Recordsins:Berliner Philharmoniker Herbert Von Karajaのクレジットの通り、紛れもなく‘リミックス’という手法に則って作られた作品だ。
素材は、カラヤン指揮のベルリン・フィル80年代音源「ボレロ:ラヴェル」「同:スペイン狂詩曲」「展覧会の絵:ムソルグスキィ」。カラヤン生誕100周年記念プロジェクトの一環らしい。
ここでいうリミックスとは、既存の音源(主としてレコードやCDとして発売されたもの)を分解、断片化し、それらの素材に適宜自身で作成したリフ、リズム・パターン、メロディーやハーモニーなどを組み合わせ、新たな音楽作品として再構築する作業のことで、テクノ、ハウスといったダンスミュージックの領域でDJたちによって培われてきた手法だ。
作品は、主としてDAWとよばれるコンピュータ・ソフトを用いHD上で構築される。
絵画やデザインにおけるコラージュをイメージすると、わかりやすいだろう。
つまり、「クラシック作品をロックにアレンジしてみました」といった、オリジナル作品を主体として譜面上で行われる編曲、アダプテーション作業とは、まったく次元が違う表現行為なのである。
本作品においても、ボレロのリズム・パターンこそ前半部分に引用されているが、ほぼ全編に渡って電子音が飛び交い、素材となったオリジナル作品お馴染みのメロディーなどは、ほとんど認識できない。
要するにこれは、リミックスを手掛けているCARL CRAIG 、MORITZ VON OSWALDというふたりのアーティストの作品なのである。
彼らについての説明は省くが、ふたりともその筋の始祖ともいうべき達人。
お手並みは、鮮やかで、クオリティーはとても高い。
だが最も注目すべきは、作品そのものより、リリースを決断した売り手サイドのタフな商魂。
過去の音源を神棚に上げ、宗教的な忠誠心を煽っているだけでは、新しい聴衆の獲得は困難である。
ベテラン・ファンからの暴挙、蛮行のそしり覚悟で、このプロジェクトにゴーサインを出したスタッフたちは、相当にしたたかでクレヴァー。学ぶべきところ大である。
我が家の近所のロック輸入盤店のスタッフによると、セールスは好調だという。この作品、確実にクラシック愛好家以外の若い聴取たちに届いているようだ。目論見どおり、ということか。
ところで、本作で解体の憂き目にあってしまったムソルグスキィ。
来年は、彼の生誕170年にあたる。
Groucho.2008/11/30.
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