店長のプリウスをヴェルファイアに”べた付け”してからおよそ1時間。
「おいコラァ!」
ヤ〇ザのような怒声が店内中に響き渡ります。
その声に、店内にいたスタッフ全員が
「来た!」
そう確信します。
怒声の輩(やから)がレジ内の次長を餌食にするのに、そう時間は掛かりません。
「オイ、コラ! オレのクルマ出せへんやないか!」
そう言って、怒り狂っている輩。
やはりこの輩がヴェルファイアの持ち主のようです。
見たところ30台前半くらいでしょうか?
小学校低学年くらいの男の子を横に連れています。
怒り狂って今にも掴みかかりそうな輩から後ずさりしながら、必死に言葉を絞り出す見山次長。
見山(以下見):「ちょ、ちょっと待って下さい」
ヴェルファイアの輩(以下ヴェ):「待てるかボケェ!しばくぞコラァーー!」
コブシまで振り上げかかる相手にビビりながら、
見:「い、今、店長を呼びますんで・・・」
頑張って言葉を紡ぎます。
子連れの輩に思いっきりメンチを切られながら、内線で事務室の店長を呼ぶ次長。
20~30秒ほどで店長は出てきたのですが、この間は次長にとって永遠にも感じられかもしれません。
岩清水店長(以下岩):「なんや?次長?呼んだ?」
余裕の笑みを浮かべながら次長に近づく店長。
まるで輩の事は見えていないかのようです。
そんな店長を見てさらにイラつく輩。
ヴェ:「おい、お前が店長か?」
勢いに任せて店長にすごむ輩。
しかし店長も体格や勢いでは全く負けてはいません。
岩:「だったら何やねん?」
メンチを切り返す店長。
ちなみに店長は、この時点でもうこの相手がヴェルファイア野郎だという事は分かっています。
でないと、さすがに初見のお客様相手にこの言葉は出せません。
ヴェ:「おい!この店は客のクルマを出せへんようにするんけ?」
すごむ輩。
しかし店長は屁とも思っていません。
岩:「客?客てどの口が言うとんじゃコラ?」
返す店長。
冷静に考えても、店長とお客様の言葉の応酬ではありません。
まるでヤ〇ザ映画のようです。
ヴェ:「はぁ?オレが客じゃ!」
威勢よく返してくる輩に対して、店長が冷静に切り返します。
岩:「お客様、レシートはお持ちでしょうか?」
???
突然、敬語かつ接客用語になった店長に驚く輩。
ヴェ:「へ?レシート?」
岩:「はい、クルマを停めるときに何かお買い物をされたんでしょう?だったらレシートをお渡ししてますよね?」
ヴェ:「い、いや、ほかした・・・」
いやいや、その言い方絶対に嘘やん!
その場の全員がそう突っ込みたくなります。
岩:「そうですか、では何時ごろに何をお買い求めになられましたか?」
冷静な店長の質問にたじろぐヴェルファイア野郎。
ヴェ:「え、えーっと・・・ 1時間ほど前に、コーラを買った・・・かな・・・」
岩:「1時間ほど前?間違いありませんかぁ?」
ヴェ:「お、おう!」
岩:「コーラ以外には何か買われませんでしたかぁ?」
ヴェ:「あ、セブンスター!セブンスターも買った!」
岩:「セブンスターとコーラを1時間ほど前に買われたんですね?」
ヴェ:「おう!そうやて言うてるやろ!そやから早よ邪魔な車どけてくれや!」
ちょっと勢いを取り戻し、イライラ度を復活させてくる輩。
店長の突然の敬語に一瞬面くらいましたが、すぐに立て直してきます。
しかしそこは岩清水店長が一枚上手(うわて)。
岩:「見山次長、その時間帯の購入履歴調べて!」
レジ内にいる次長にそう指示する店長。
すると
「もう調べ始めてます!」という返答。
その上でヴェルファイア野郎に正対し直し
「まぁ、どうせ嘘やろうしそんな履歴出てこんやろ・・・」
そう呟く店長。
それはそうです。
何せ1時間ほど前と言えば、店長と次長が段ボール一枚分までべた付けをしていた時間。
すでにその時点でヴェルファイアを置いてから1時間近く経っているので、口から出まかせを言っている事は間違いないのです。
岩:「おいコラァ!」
形勢逆転。
ついさっきまで輩が吐いていた言葉を、今度は店長が吐いています!
岩:「エエ加減にせえよコラ!お前が停めてから2時間近く経っとんのはわかっとんのじゃ!こっちは見とんねんど、なめんなよコラ!ボケ!」
段々と店長の勢いに飲まれていく輩。
気づけば言葉の応酬の中で、輩の方が後ずさりしています。
しかし子供の手前(本来こんなものを見せるべきではないのでしょうが)、これではアカンと思ったのか、輩が反撃に出ます。
ヴェ:「おう、ほな今から買うたるわ!なんか買うて客になったらエエんやろ?」
そう言ってレジ前のミンティアを一つ手に取り、それをレジ台に叩きつけるように置きました。
それを見て半笑いの店長。
岩:「おい、お前なめてんのか?88円のミンティア一個で駐車場代わりってエエ加減にせえよ!」
ヴェ:「はぁ?」
岩:「週末にこのあたりで2時間停めたらいくらするか分かってんのけ?しかもそれプラス、全然関係ない店に迷惑まで掛けてんねんぞ?ミンティア一個で誤魔化すなんか、ふざけ過ぎやろがコラ!」
ヴェ:「ほな、いくらやったらエエねん?」
困惑するヴェルファイア野郎。
岩:「そこら辺のコインパーキング行って見てこいやボケ!」
それだけ言って、店長は何事もなかったかのように事務室へ消えていくのでした。