本日の「積ん読」読書は、ヒポクラテス(BC460?~BC370?)の『古い医術について』です。(表題他8篇)

 

 

 

 

有名な「誓い」の部分(2ページ分)だけは読んだ形跡があります(笑)。

 

 

 

半分ぐらいまでは退屈でしたね。ヒポクラテスは、風や水や気温・湿度などが疾病に大きな影響を与えるとして、各地に住む民族の自然環境について事細かく述べています。当時は一定の意味を持ったのでしょうが、現代の私たちには《そんなのカンケ―ねえよと》いささか煩わしく感ずる部分です。

 

 

しかし、「流行病」に関する記述には舌を巻きました。患者が恢復するにせよ死に至るにせよ、その症状を綿密に観察し記録する態度は実に立派です。現在の医師や看護師が読んだなら、それぞれどんな病気だったか判断できるのでしょうが、残念ながら素人の私には漠然としかわかりません。

 

 

ヒポクラテスが、病気の流行が食餌が原因ではなく、「われわれが呼吸するところのものがその原因である」として、流行病の空気感染を指摘し転地を勧めているのは、病原微生物の存在など夢にも考えられなかった時代としては、大変に優れた見解であったというべきでしょう。

 

 

確かにヒポクラテスの臨床姿勢といえども、「実証に徹する」というには不十分なところはあります。疾病の主因が体液(血液・粘液・黄胆汁・黒胆汁)のバランスを欠くことにあるとしているのは、未だドグマから免れなかったことを示しています。

 

 

しかし、呪術や神業を否定し、「自然的原因」を疾病の原因としているのは、古代における医療のEntzauberung(魔術からの解放)であったと評価してもよいのではないかと思います。

 

 

 

 

わが国でも、ヒポクラテスは蘭方医の間では守護聖人の扱いで、その肖像画が描かれています。(以下ネットからお借りしました)

 

 

渡辺崋山筆 ヒポクラテス像

 

宇田川榕庵筆 ヒポクラテス像

 

 

 

最後に「ヒポクラテスの誓い」の重要部分2点をまとめておきます。

 

 

・医療を施すのは患者の福祉のためであり、加害と不正のためではない。

 

・治療の機会に知り得たことは決して他言しない。