【帯状疱疹で放心状態】

最近病院やネットのニュースで帯状疱疹の予防接種の呼びかけを良く見かける。

昔はそんなポスターやお知らせは無かったと思う。

帯状疱疹についての説明は割愛するがそれなりに厄介な病気だ。

年配の人には胴巻きと言った方がわかりやすいかもしれない。

実は私もその帯状疱疹になった事がある。心臓周りにポツポツと発疹が出た。

それが結構痛い。

痛みが四六時中続く。

しかも三ヶ月近く痛みが続いたのだ。

痛みが発症してから早めに病院に行き痛み止めを貰ったが、それでもずっと痛みが続くのである。
二ヶ月半過ぎた頃から何となく痛みは小さく引いていった。
三ヶ月過ぎても極たまに痛くなる事もあった。

長い人は半年間も痛みが続くのだという。


後で知ったのだが意外に職場でも帯状疱疹にかかった人が多かった。
痛みの具合や期間も人それぞれで割と直ぐに完治した人もいれば数ヶ月の人もいる。

結構身近な病気なのだ。
だから予防接種を呼びかけるのだと思う。

原因としてはストレスがあると言われている。
至極納得。

もうね〜現代社会はストレス社会じゃありませぬか。

ストレス包囲網に曝されています。現代人はストレスと共に生きていると言って過言ではない。

パソコンが一人一台は当然としてディスプレイは最低でも二台は必要だし机のスペースさえあれば三台だって有りうる。
あっちの画面こっちの画面と目まぐるしく数字を追いカタカタとキーボードを入力し、メールが来ればチェックし、電話が鳴れば対応し、来客が来ればペコペコ頭を下げそれでストレスが無いなんて有り得ないのだ。

ストレス手当出せコンチクショー。

おしまい
【おこわご飯はヘ短調である】

高原の直売所に売っている「おこわご飯」行けば必須買いである。

どういう訳か山、特に山頂で食べるおこわご飯は別格だ。

普通のおにぎりも美味しいけどおこわご飯は特別感がある。

山で食べるとそれが良くわかる。
特にこの紅葉の時期にハイキングで食べるおこわご飯は格別だ。

いつの頃だろうか山でおこわご飯を食べる様になったのは。

それまで何となく家で作ったお弁当を持って行って家族で食べていた。
それが普通で誰もがそうしていたように思う。

しかし、子供も大きくなり老いた夫婦二人が自家製弁当片手にハイキングもな〜という感じになり、まっ、現地調達でお手軽に済ますかとう堕落精神になり。行った先でおこわご飯を買うことになる。

しかしこれがドツボだった。
もう行くたびに買って食べる。

どういう訳か本当に自宅ではおこわご飯が食べたいと思わないが、山に行くと急に食べたくなるんですね。

いったい何がそうさせるのだろうか。

例えばお蕎麦も山に行くと途端に食べたくなるけど下界でも比較的食べる。

でもおこわご飯はちょっと違い普段下界で食べようとは思わない。
あくまで山で食べるものなのだ。
と言うか下界のスーパーマーケットではおこわご飯が視界に入って来ない。
視界に入るのはトンカツや焼き鳥や天ぷらだ。
それらを差し置いて今日はおこわご飯にしましょうとは絶対にならないのだ。
母ちゃんが今夜はおこわご飯にするからねと言っても納得出来ない。
え〜トンカツが良かったのに〜と反抗するはずだ。

これが山に行くと。

やっぱりおこわご飯だよね〜母ちゃんありがとに変化する。

そんな訳でおこわご飯。

外で食べると抜群に美味しく感じる。
紅葉をめでながらしみじみ一口一口じっくりゆっくり噛み締める。

噛めば噛むほど美味しい。

このゆっくり感が紅葉をめでるのに丁度いいのだ。

これが普通の白ご飯ならあっという間に食べ終わる。

ああ残念。

もっとゆっくり食べときゃ良かったのにとなる。

それがおこわご飯ならもっちりとしてて直ぐにはのどに通らない。

じっくりゆっくり噛み締める事となる。

その間にじ〜と紅葉をめでる。

良いな〜秋はとなるのだ。

おしまい
【飾りじゃないのよパセリは】

私は食ったことが無い
刺身の入ったパックで
大きいマグロが乗っけられても
瀬戸内産真鯛でも欲しく無かった
緑のチリチリが隅っこに
邪魔な感じであるんだけど
私食ったりするのは違うと感じてた

私は食ったことが無い
閉店間近のスーパーで
割引シール見るたびに
カゴに入れたり 戻したり
そしてシールが変わるたび
刺身割引されるけど
私買ったりするのは違うと感じてた

飾りじゃないのよパセリは mazu
嫌いなだけだと言ってるの mazu
栄養あるじゃないのパセリは mazu
ひと房だけならいいけど
ちょっと多すぎじゃなのパセリが mazuzu

おしまい

(明菜ちゃん復活してね)
【ピーマングルメンタリー オモマズい店】

再びPディレクターがその店に訪れたのは前回の訪問からひと月あまりたった時だった。

初回の放送の反響が凄く、放送直後は長蛇の列でお店はてんやわんやだった。

店主が悲鳴を上げているのを聞きつけPディレクターが助っ人として手伝いに度々来ている。
相変わらずお昼時には行列が長く続いていた。

Pディレクターは教えて貰ったちゃんぽんの作り方をスマホの動画を見ながら復習しマスターしていた。

このお店のちゃんぽんは普通盛りが麺二玉分あり具材も大量に載っている。
丼もそれに比例し大きい。
大盛りを頼もうものならバケツの様に大きい丼で出てくる。

ただ残念なことに薄味だ。

これは大将が糖尿病のため味覚が少し若い頃に比べて変化しているせいだ。

常連客はそれを承知で来ているのだ。なのでテーブルの塩胡椒醤油酢砂糖を無手勝流に足して各自が好みの味に仕上げて行く。

またこのお店は自家製の高菜漬けとちゃんぽん屋には珍しいマー油も置いてありこれも取り放題だ。

実はこの高菜漬けとマー油のファンが多く常連客はこれ目当てでやって来ている

店内外には店主が趣味で集めた大小様々なタヌキの置物が所狭しと置いてあり、別名「タヌキの舘」と呼ばれている。

道路沿いに置いてあるので一見さんは売り物かと勘違いするのだ。

何故か店主はタヌキが大好きで自分はタヌキの生まれ変わりだと信じて疑わないでいる。
顔もどことなくタヌキ顔だ。

そんな変わり者の店主にPディレクターはとても興味が湧きこの店を取材する事になったのだが、ミイラ取りがミイラになるかの様に感化され自分もタヌキ好きになった。

「大将、今日はキャベツがいつもより少ないんじゃないの」

Pディレクターはいつもは大量にあるキャベツの入ったダンボール箱が少ない事に気付く。

「あいやーチョイと仕入れの数間違えてな。その変わりと言っちゃ何だがピーマンはあるべ」

店主はキャベツとピーマンの仕入れの数を間違って発注していたのだ。

「もうこうなったらキャベツの代わりにピーマン入れるしかないべ」

店主は下を向き申し訳無さそうにつぶやく。
「Pさんもピーマン手伝って切ってくれ」
「あ、ああ。でもピーマンばっかりじゃあねえ」
「なあにその分モヤシ追加するべ」

出来上がったちゃんぽんは緑色のピーマンがやたら目立つ。

客が、
「おい大将、なんじゃこのちゃんぽんは。ピーマンばっかりじゃあねえか」
「すまんこって。その代わりモヤシとネギ入れてあっから」

客は大量のピーマンが入ったちゃんぽんを仕方なく食べるのだった。

おしまい

(やっぱりシリーズ化した方が良かったかな。ちと寸足らずだな〜)
【ホタテラーメンに成りたかった僕】⑦最終話

次々と美味しい料理が出される。
白えびのから揚げは言葉に言い表せない程に絶品で揚げたての熱々を口に入れると幸せがやって来た。

世の中にこんな美味しい料理があったなんて驚きだ。

富山恐るべし。

こんなに魚介類が美味しかったら他で食べようなんて思わない。
きっとお寿司も最高なんだろうな。

僕の近所の回るお寿司はどんどんネタが悪くなって小さくなってるって聞いた。不景気と言うか残念だ。

でもここはそれとはそれとは違う別世界みたいに何もかにもが大きい。
つくづく富山湾の懐の深さに仰天だ。

「ほいラーメン君、ホタテだよ」

遂にホタテと対面する時が来た。

ホタテは大きな貝の上に乗っていた。

これは本当に貝なのか。
僕が知っているシジミやアサリとは比べ物にならないビッグサイズだ。

しみじみと眺めると僕はそのホタテを頭の丼に入れた。


「お兄ちゃんどうか僕を食べてください」

「何だって、お前何か血迷ったのか」

お兄ちゃんは驚いた顔で僕に言う。

「僕はホタテラーメンに成りたかったんです。その為に長い旅をして来たんです。本当に辛いことや苦しいことがあったけど遂に今日その夢が叶いました。本当に美味しいかお兄ちゃんに確かめて欲しいんだ」

僕は声を静めてゆっくり自分に諭すように言った。極めて本心だからだ。

「本当に良いのか」

何となくお兄ちゃんも僕の気持ちを察したみたいだ。

「お願いします」

僕は頭の丼をお兄ちゃんに向けた。

「ヨシ!そこまでお願いされたらオイラも男だ。一丁食ってみっか」

そういうと持ってたお箸でホタテと麺を持ち上げてズズっと啜る。

「どうお兄ちゃん美味い?」

「おお、こりゃ美味いや。毎日でもイケる」

「それは良かった」

うっすら消えゆく意識の中でお兄ちゃんはラーメンを完食するのだった。

おしまい
【ホタテラーメンに成りたかった僕】⑥

お兄ちゃんのトラックの中で見たラーメン本。
僕はついにホタテを知った。
丸っこくてほんのり桃色の見た目。
それがどんな味なのか皆目見当もつかない。
只言えるのはとっても美味しそうだと言うことだ。
世の中には色んなラーメンの具材があるんだと知った。
海老は前から知っていたからわかる
でも雲丹は知らないし、蟹味噌だって知らない。それをラーメンのトッピングに使うだなんて。

お兄ちゃんはシャワーを浴びて着替えて来た。まるで別人の様だ。昼間の作業着とは違う格好で男前に見える。

「さて、行くか。『やつはし』予約しといたからな。丁度空いてて良かったぜ。今日は何があるか楽しみだな」
お兄ちゃんはもの凄く嬉しそうに言う。お兄ちゃんがそれ程迄に言うのなら間違いない。僕も期待が高まる。
時刻は五時半。開店と同時に暖簾をくぐった。

「いらっしゃい」
威勢のいい挨拶にこっちまで嬉しくなる。流石にお兄ちゃんが推薦するだけの事はある。
お兄ちゃんがお品書きを見る。
「今日は鮎の塩焼きはないか。でも白えびの唐揚げがあるな。これも美味いから。大将、いつもの刺身の盛り合わせと白えびの唐揚げと黒作りとホタルイカの冲作りね。それと生ビール」
「あいよ。今日は良い烏賊も入ったよ」
「そりゃ良いね」
二人の会話を黙ってニヤニヤしながら聞いた。どれもこれも抜群に美味いんだろうな。
「そこのラーメン君は初顔だね」
「ああこいつかい。ホタテを探す旅人さ。悪い奴じゃねえよ。ちゃんと仕事するし」
「初めまして醤油ラーメンです」
僕は緊張しながら挨拶した。
「ホタテを探してるんだって。丁度今日良いホタテが入ったから食うかい」
「喜んで」
ビックリした。まさか本当にホタテに会えるなんて。
「おう良かったじゃねえか。これでオイラもお役にごめんだな。アハハ」
破顔一笑のお兄ちゃんには頭が上がらない。
「じゃあホタテはお作りで良いかな」
大将がおだやかな口調で聞く。
実に丁寧な人だ
「はい、お願いします」

お兄ちゃんは温かいおしぼりで顔を拭く。
「今日は鮎はないすか」
「ああ鮎ねこのところ洪水があったでしょ。あれでとんと取れなくなって。名人の加藤の爺さんもからっきし取れねえってぼやいてんだ」
「そいつは仕方ないっすね。まあでもその代わり白えびが有るからいっか」
「白えびはこれからが旬だけど最近あんまり入荷しなんで今日はなんとか間に合ったよ。あいよ生と黒作りね」
大将とお兄ちゃんの会話をぼんやりと聞きながらと店内を見渡した。大きな大量旗はとてもカラフルで漁師さんの心意気を感じた。その上にある魚拓も見事な鰈で流石に富山湾の魚は凄いと感じた。

つづく
【ホタテラーメンに成りたかった僕】⑤

お兄ちゃん達と一緒に富山ブラックを食べられた事は僕にとっての一生の記念でありターニングポイントだ。

この店で見たもの感じたこと全てが新鮮で学びが多かった。

濃口醤油と黒コショウのガツンとパンチのあるラーメンはラーメン会の金星の様に光輝く存在なんだと思う。

お兄ちゃん達に負けじと僕もゴクンゴクンとスープを飲み干した。
「ほう。なかなかおめーもやるじゃないか。さってこれからどうすっかだけどとりあえず車に戻って一眠りすっか」
「はい」

確かにお腹一杯だし肉体労働で疲れて眠くなって来た。後のことは寝てから考えよう。
再びトラックに乗り込み直ぐに毛布にくるまって眠りについた。

どれくらい寝ただろう、だいぶ太陽が傾いていた。お兄ちゃんも目を覚ます。
「ふぁ〜よく寝た。さて戻って洗車すっか。お前も洗車手伝ってくれ」
「はい」
勢いに押されてつい返事をしている。
「とりあえず今日の仕事はこれで終わりだけどお前どうする。洗車終わったら一緒に飯でも食うか」
「ええそうですね。だいぶ遅くなるみたいだし今日はそうしようかな」
「じゃあ決まりだ。そうだな晩飯はやっぱり、《やつはし》に行くか。あそこのホタルイカの沖漬けとバイ貝は食べとかないとな。あと、鮎の塩焼きもあれば頼もう。運が良ければホタテもあるかもよ」
耳慣れないメニューばかりだ。
そもそもホタルイカが何なのか知らないし冲漬けってどういう料理なのだろう。それにホタテがあるかもしれないなんて。
「ホタテがあると良いな」
「ヨシじゃあ決まりだ。その前に急いで洗車だ」
お兄ちゃんは大きくハンドルを左に切り直線道路に出るとエンジンを吹かした。
「洗車終わったらシャワー浴びて着替えて行くから」
「はい」
いよいよその後ホタテに会えるかもしれない。

洗車場はとても広かった。
お兄ちゃんは器用にマシンガンのようなノズルの付いたホースを操り上下左右に水流をトラックに当てていく。
見る間に驚く程に汚れが落ちていく。
実に便利な機械があるもんだと関心した。
僕は車内のマット等を洗った。
マットはそんなに汚れては無かった。
大きなトラックだからもっと時間がかかるのかと思いきや意外に早く終わり、お兄ちゃんは併設のシャワールームでシャワーを浴び普段着に着替えた。
僕はトラックの中でラーメン本を見ていた。
北海道のラーメン屋特集だった。
そこにはあのホタテが載っているのだった。

つづく
【ホタテラーメンに成りたかった僕】④

初めての富山ブラック。
僕もご相伴にあずかった。
大きめなシナチクに大量のネギ。
顔を近づけるとガツンと黒コショウの香りが鼻腔を刺激する。

へえ〜ここ迄やっちゃって良いんだ。
コショウはお客さんが勝手に自分で入れるものだと先入観があったけどこっちで入れちゃって良いんだ。なるほど勉強になるな。

それにこのシナチク。
ゴリゴリとした歯応えある食感。顎に咀嚼力がいる。
それに比べてうちのシナチクの元気の無さと言ったらない。
お前何か持病が有るんじゃないかといつも気になるくらい弱々しい。元気なシナチクでこっちまで元気になる。

一応僕も醤油ラーメンを名乗っているんだけどこの富山ブラックの醤油の濃さと言ったら、真っ黒でいかにも塩辛そうだ。

改めて器全体を見渡すととにかく刺激が強い主張の激しいラーメンだと思う。

僕には出来ないこんな己を主張する事は。むしろ自己主張なくぼんやりと生きて来たから。

「お兄ちゃんいただきます」
「おう」
スープを啜るとコショウと濃口醤油のダブルパンチが脳天チョップの様に強烈にガツンと来る。

や、やられた。

これ以上の醤油ラーメンが他に有ると言うのか。
最上級グレードの見た目と味と香りだ。
「どうだ。うめーだろ」
お兄ちゃんが何故か勝ち誇った様に聞いてくる。
「最高に美味いです」
僕はお兄ちゃんを見上げて言う。
「そうだろ。この店はオイラも市内じゃイチオシだからな」
確かにこれで人気が出ないはずが無い。

人気の秘密は味だけじゃないと思う。
器一つとっても綺麗で店内はオシャレで洗練された感じだし、何よりお姉さんの元気な声とそれに負けず劣らず若い店員さん達のテキパキした働きぶりとお客さんの笑顔。
もうここはパラダイスだ。

僕は自分を恥じた。

僕の両親だって一生懸命頑張ってる。ちゃんと店内は綺麗に掃除だってやってるし残り物を使い回したりせずに新鮮な物を使うようにしている。

でもそれだけじゃ駄目なんだ。それは最低限しないといけないレベルだったんだ。

お兄ちゃん達はスープの熱さをものともせずゴクンゴクンと喉を鳴らして飲み込んでいく。
ああこの人達はラーメン食いのプロだ。

つづく
【ホタテラーメンに成りたかった僕】③

富山市内のラーメン屋に到着した。
もう数人が店の前で行列を作っていた。
「やっぱり並んでいやがった。おい早く降りて並ぶぞ」
お兄ちゃんは言うが早いかドアを開けてさっさと飛び降りた。僕も急いでトラックを降りてお兄ちゃんの後ろを付いて走った。

「おい今日は遅いじゃねえか」
「ああ、今回はちいとばかり荷物が多かったからな2倍とまでは言わねっけど」
「それにそこのラーメン坊主は何だ」
先に並んでいる口髭を生やしたリーゼントの人が僕を見て言った。
「こいつか。いつもの麻婆ラーメン屋で拾ったんだ。何でもホタテを探してるんだってよ。まあオイラも話し相手が欲しかったから乗っけたまでさ」
「へえホタテ探しね」
リーゼント頭の人はそれほど驚いた様子も無くそれ以来黙ってスマホの画面を見ている。
「おい幹太知ってっか。来週からまた中国からの荷物増やすらしいぞ」
「ああ知ってる。今度はザーサイが増えるってな」
「これ以上増えると休憩時間確保出来るんか?」
「さあな」
「休憩時間だけはちゃんと確保して欲しいぜ。あそこのトラック屋はそういう点じゃ評判良いから羨ましいぜ」
お兄ちゃんは青い綺麗なトラックを指さして言った。
トラック運転手さんも色々悩みが有るんだなとその時知った。

しばらくしてお店のドアが開き中から青い三角巾をした細身のお姉さんが出てきた。
「お待ちどうさま開店します」
綺麗な透き通る声だった。
一斉に客がお店になだれ込む。気がつけば僕達の後ろには十人以上が並んでいる。開店前にこれ程行列が出来るなんて相当な人気店だなと思う。
それに引き換え僕のお店は行列が並ぶなんて事は無い。ぼちぼち人がやって来ては食べて帰るだけだ。

店に入る。
厨房では店主らしきおじさんと数人の若い店員さんが働いている。
釜からは大量の湯気。
次々注文が入る。その度にさっきのお姉さんが透き通った大きな声でオーダーを読み上げる。それに呼応し他の店員さんも大声で復唱する。
チャカチャカと鍋にオタマが当たる音。
ジャーと水道の流れる音。
ゴーと言う炎が吹き上がる音。
勢いが違う。
活気がみなぎっている。

チクショウ!何だこの違いは。僕はだんだんと腹が立ってきた。井の中の蛙大海を知らずとはこの事だ。
僕のお店はお客さんはまばらで静かに食べて帰るだけでまるでお通夜状態なのにこの店と言ったらまるでお祭り騒ぎだ。
ああ、このままずっとこのお店に居たい。もうホタテなんてどうだっていい。

つづく
【ホタテラーメンに成りたかった僕】②

トラック運転手のお兄ちゃんに乗せられ僕は富山県まで来た。

「ふ〜長かったな。ヨシ着いたから荷物降ろすんでお前も手伝ってくれよな。なあに心配すんなその代わり富山ブラック奢ってやっから」
「あ、有難うございます!」
そう言われたら俄然張り切るしかない。トラックの扉を開けるとそこにはダンボール箱が少なくとも百箱は入っていた。
「お兄ちゃんこの荷物って何ですか」
「ああ、これかこれは中国からのシナチクだ」
「へ〜あのシナチクがこんなに大量に」
「日本じゃ殆どシナチク作ってないからな。ここで降ろして後はメーカーだったりチェーン店が引き取りにくっから」
「へ〜そうなんだ」
僕はあんなに仲良しのシナチクがこうやって運ばれて来るのを初めて知った。
「さあ、チャチャッと降ろして早く富山ブラック食いに行くぞ。開店迄に行かないと行列に並ぶようになっから」
「は、はい」
僕は楽しみでしょうがなくなって来た。張り切って荷物を降ろそう。よっこらしょっと。あれ大きさの割には随分と軽いな。
「意外に軽いんすね」
「そうだろ。乾燥してあっから」
「乾燥??」
「ああそうだ。乾燥した状態で輸入されて来るんだ。それをラーメン屋で水で戻して使うんだ。業界の常識だぞそんなの」
し、知らなかった。僕は今迄何を見てきたんだ。あのシナチクが中国から長い旅路の果てにやって来てしかも乾燥されて水で戻されていたなんて。
お店に帰ったらシナチクの頭を撫でてあげよう。良くぞ日本に来てくれたと。
僕はへとへとでも、お兄ちゃんは額に汗し黙々と頑張って荷物を降ろしている。
ああ、こうやって陰で頑張って労働してくれる人がいるからシナチクも仲間入り出来るんだとしみじみと思う。
「ふう。よし。これで最後だ。お前も頑張ったじゃねえか。さあ、富山ブラック食いに行くぞ」
「はい」
僕は褒められてとても嬉しかった。
そりゃたまにはお客さんで美味しかったと言ってくれる人もいるが、大概はおばあさんで、お世辞だとわかっているからそんなに嬉しくはない。でも今回の様にそんなお世辞は無く単に自分の頑張りを褒められるととても嬉しかった。

トラックは再びエンジンを吹かし次の目的地のラーメン屋へ向かった。

つづく