【奇妙なお話】バリー原作のピーターパン。ディズニーの味付けではなく。完全なる読み解き | 英語よみきかせの講師育成。英語で世界の絵本を紹介するDJ!Ms.Miyuki

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ディズニーでも不滅のコンテンツ、夢の国にふさわしい住人のひとり、ピーターパン。

このピーターパンのお話、実際に本で読んでみて、あまりの奇妙さに唖然とした方は結構いらっしゃると思います。ピーターは生まれてすぐに家を出てしまい、家に戻らなかった男の子。それって、なんだかちっともワクワクしないんですけど。家があって家族があるからこそ、時々一人になったり家族を離れて友達や恋人と過ごすことを楽しむことが出来るのが人間というもの。少なくとも、子どもというもの。(子どもは一人暮らしはしませんからね。)家族を持つことに最初っから失敗したようなピーター、なんだか少し肌寒いような思いがしますね。これがファンタジー?

そう。普通の現代ニッポンジンの私には、ファンタジーとロマンスは本当にナゾ。頭ではなく生理的に「ものがたり」として理解するのは、とっても難しい!!姫をさらって監禁する西洋のドラゴンと見沼に住むつなが竜ヌゥとの間には、それはそれは深くて暗い河が流れているようですね。(これはローカルすぎるネタですね?私が住むさいたま市のかわいいご当地キャラクター、ヌゥはとってもかわいい竜なのです。)

しかもこのお話が分からん!のは、どうも、私だけではないかも。ある人気作家の書いた書評でも、ピーターパンとウェンディではなぜダーリング家で犬が家庭教師なのか、マンガ的で意味が分からないと言っていました。(今と感覚の違う昔の作家じゃありませんよ。現代の人気作家です。)

そのナゾをあっさりと、しかも端的に解いてくれたのが、歯科医師で文芸評論家の長山靖生さん。
新潮新書にある著書「謎解き少年少女世界の名作」。

これは本当に名著です。

ビジネス書だけでなくて時には文学も読む人なら、絶対にオススメ。いや、むしろ日経新聞とビジネス書しか読まないオジサンにこそ読んでいただきたいかも。子どもや小学生などと関わる仕事をしている方、あるいは子どもがいるお父さんたちにも必ず読んでほしい本です。そこの、可愛い自分の娘にメロメロのお父さん。この本を読まずして愛娘をディズニーランドに連れて行くなかれ。と言いたいほどです。(それは言い過ぎか。)

ピーターパンとウェンディはもちろん、他にも日本人がよく知っている少年少女文学について、丁寧な読み解きがなされています。その作品の生まれた時代背景を踏まえた深い教養の土台の上に、この方の
書評は築きあげられています。こんな物知りのお父さんがいてくれたらなぁ~。と、タイムスリップして小学生に戻ったら私はきっと言ったことでしょう。

私のような「フツーの」読書好きの方ならうなずかれることと思いますが、私は書評って普段はそんなにアテにしていません。(文芸評論家の方ごめんなさい。)本屋さんに出かけて目に止まった本を買う、くらいの普通の本好きには、せいぜい新聞の書評が新刊本を選ぶときのちょっとした目安になるくらいの話。それも必ず書評を心待ちにして読むというほどでもなし。あくまで日曜のひまつぶし、かな?

そんな「フツーの」本好きが、書評ってやっぱスゲーわ。あってくれるとこんなに助かるとは!!と目ウロコした、という締まらないながら正直なお話。でも、この本の素晴らしさは本当に、私が言っても足りるものではありません。

謎多き名作、ピーターパンの生まれた背景とは?この本を読めば分かります。他の書評は必要ないほどの、素晴らしい解説です。

謎解き少年少女世界の名作
長山靖生 著
新潮新書
ISBN4-10-610022-3