伯父が亡くなった。突然のことだった。

父が泣いていた。祖母が亡くなった時も、わたしの結婚式のときも涙を見せなかった父が泣いていた。



父の涙を見るのはこれが初めてだった。



伯父は天真爛漫な人だった。

なんとかなるさ!と困難を笑い飛ばせるような人だった。


ちょっと無責任で、自由で、そして愛に深い人だった。



伯母はそんな伯父にとても大切にされていた。とにかく大切に大切にされていた。


こっちにおいで、一緒にご飯を食べよう。


台所に立つ伯母をそうやって呼んで、隣に座らせて美味しそうにビールを飲んでいた。

今ならわかる。それがどんなに素敵なことか。


仕事に向かうとき、伯母は伯父が見えなくなるまでこっそりと手を振って見送っていた。いってらっしゃい。お仕事頑張ってね。


その日もそうやって送り出した。



そして事故にあった。


爆発事故だった。



父が病院に駆けつけたとき、全身を包帯に包まれた伯父がそこにいた。

顔も見ることができない。

どんなに熱かっただろうか、痛かっただろうか。苦しかっただろうか。


顔も見ることができない。


果たして本当に兄なのか。確認することができない。


親戚の人が祖父を病院に連れてやってきた。

祖父は病室の入口の名前の書かれたプレートをじっと見つめて立っていた。

病室に祖父は入らなかった。

泣くこともなく、ただそこに立っていた。


そこにいる誰もが目の前の出来事を受け入れることができなかった。



翌日、伯父は息をひきとった。



父から連絡があったのは数時間後のことだった。電話越しの父はいつも通り淡々とした口調だった。

それが精一杯といった様子だった。

私は父になんと声をかけて良いのかわからず、うんうん、と返事をすることしかできなかった。



その夜、私の枕元に伯父がやってきた。


伯父は突然のことで自身も驚いているが、これが運命だと言っていた。

祖父と家のことは父に託すこと、親元を離れて暮らす私には、なるべく機会を見つけて実家に帰るようにしろということ、従姉妹とこれからも仲良くしてほしいというようなことを言っていた。


向こうで祖母が待っているとも言っていた。


この話はまだ父に伝えていない。


もう少し落ち着いたら父に話そうと思っている。



なぜ私だったのかはわからない。ただ、伯父は私と話をしただけなので遺言のようなものではなかった。

旅立つついでにふらっと私の所に立ち寄って世間話を、ちょっとした言付けをしたのだろうか。



おじさん、早いよ。いなくならないでよ。

願いが叶わないことは理解できるから、私からもおじさんにことづけるね。


ばあちゃんと仲良くね。

みんなのこと、向こうで見守っててね。