【本】『鯨オーケストラ』吉田篤弘 著。 | 蒼の深さを見上げてみたり。

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認知症の母との日々や日常の些細なこと、読書の記録などを綴ります。



ちゃんとした小説で

ちゃんとした物語が

あるのだけど


それを

私の言葉で

縮めてしまうと


なんだか

しっくりこないので

あらすじは

書かないことにします。


声を仕事にしている。


深夜のラジオ放送を

始めることになった。


この2点だけで

どこか遠くへ行ったような

気持ちになり


そこへ

“曽我”という

普通の日本の名字の人が

出てきたため


最初

すごく違和感がありました。


でも

どこか遠くの話でなく


もっと

地に足のついた物語だったので


普通の名前にしたのでしょう。


いつも思うのですが

吉田篤弘の文章は

静かです。


最後に

「G線上のアリア」が

出てきますけど


その音を聴くのが

困難なくらい

静かです。


そして

音は聞こえないのに

音楽を奏でていることは

充分に伝わってきます。


最後まで

ひっそりとはしていますが


朝日がさあっと

差したような

終わり方だと

思いました。


とても好きな物語でしたけれど


惜しむらくは

これが

3部作の最後だった

ということです。


これだけ読んでも

確かに

素敵なのですが


ちゃんと

最初から読めば

また

違った感慨が

得られたのかと思うと

少し

残念です。