飼育本などがないこともあり、ヤマネを初めて飼われる際は手探り状態の方がほとんどだと思いますので、あっちこっちから見聞きした情報を元にした試行錯誤の歴史をまとめてみました。
私自身、海外の研究論文やブリーダー様からの情報から学んでいるレベルですので、情報が古かったり誤翻訳による間違いがある可能性もあります。
参考程度にさらっと読んで、それぞれの飼い主様なりの飼育方法を模索していただければ幸いです。
※文章の無断転載、転用ついては大変申し訳ないのですが固くお断りします。

外見について。
体長は尾を除き約6〜8cm、体重は約15~25g…だそうですが、海外の平均だともうひと回り数値的に大きいです。(我が家の個体も10〜12cm、30〜40gくらい。)

寿命は野生下では4~5年程度だそうですが、飼育下では12歳のご長寿さんのブログを拝見したことがあります。

大切に飼われている方の飼育記録等を拝見すると、皆さん大体7〜10年程度飼育されている印象です。


食性について。

食餌は昆虫食傾向の雑食です。

我が家は主に市販のリスや小型ハムスターフードなどを利用しつつ、果物や生き餌などを適宜与えております。盲腸がないので繊維質のものは避けてあげてください。

餌用のコオロギやミルワームが苦手な方は小動物用に売っているニボシや、ゆで卵などを与えると良いかと思います。

食虫動物と聞くとハリネズミやフクロモモンガを連想してそれらの食餌で賄おうとする方を見かけるのですが、どちらも繊維質が多いことがよくあるので、消化に負担をかけてしまいます。成分表は要チェック。

とにかく良く食べて良く出します。
やや水様便傾向で、湿気がこもりがちです。
床材はこまめに変えてあげてください。

飼育環境について。
飼育適温は生体で20〜25℃、離乳間もないベビーはもう少し高めに保ってください。
ヤマネ=冬眠のイメージが強いのですが、季節感に乏しい飼育下では体が充分な用意をできないまま低体温に陥ってしまい死亡する例が多いので一定温度での飼育をオススメいたします。
※冬眠は起きるために莫大なエネルギーを必要とするので(毎回起きるまでに1時間かかるのです)、もし野生下で冬眠してるニホンヤマネさんを見つけた時は起こさずそっとしておいてあげてくださいね。
人間と違って二度寝は命懸けなのです:(;゙゚'ω゚'):

小さな体に似合わず、活動量はかなりあります。
1匹で30×50cmほどのケージが海外では推奨されています。
推奨より小さめのケージでも飼育は可能ですが、運動不足にならないよう回し車やバードトイなどを入れてあげてください。
呼び戻しが不可能な個体の部屋ん歩は避けた方が賢明です(笑)
高さはあればあるほどお世話する時に安心です。我が家にいる個体は30cm程度はジャンプで軽く飛び越えます。
また、ハムスターケージなどの網ケージは避けてください。
ベビーなら8mmピッチ、成体でも1cmピッチくらいの間ならすり抜られます。

育成、性別について。
ベビーは生後1ヶ月半ほどで離乳し、第一次性徴(♂なら睾丸がおりてきたり)が見られます。
生後5〜6ヶ月で成熟しますが、この第一次性徴期でも運悪く妊娠してしまう個体もいますのでご注意を!
雌雄判別はかなり難易度の高い部類に入るかと思います。
睾丸が下りるのは発情期のみですし、完全に成熟するまで下りてこない個体もいます。
また逆に女の子でも発情期はややお尻が腫れ気味の子もおり、間違えにくいはずのオスだと思っていた個体が子供を産んだという失敗談?も時々ネットで目にします(笑)
生殖孔との距離での判別が有名ですが、これも個体差…ですね。
どうしてもペアにしたい方は繁殖経験のある個体を迎えたり、性別保証のあるブリーダーさんやショップを頼るといいかと思います。
※当舎では性別保証をするほど、判断には自信がありますが、それでも見る時はガン見します。
パッと見で判断できるほど簡単なものではないので、信頼できるかの基準にされると良いかと。

本来季節性繁殖なのですが、飼育下では温度が常に快適で食べ物も豊富に与えられるため年中発情しやすく、後発情や後追い妊娠も多いため母体の衰弱や突然死の原因ともなります。

群れで暮らすという記載が多いのですが、野生調査では母親と若い個体を含む血縁のコロニーとなっており(要するに子育て中の巣)、実際飼育下でも父親は巣箱から追い出され床材にもぐって一人寝をしていることが多いです。
成熟すると母親から巣箱から追い出されたり、時には尾を切られるほどの怪我を負わされることもあります。
そのため、ケージのサイズにもよりますが繁殖以外では基本的に「単独飼育」をオススメいたします。
もちろん仲の良い子達もおりますのでこの限りではありません。

人慣れについて。
基本的に神経質な子でなければそれなりに良く慣れる印象です。
懐かせるためにミルクで育てたりする必要はなく、ミルクで育てたからとベタ慣れになるわけでもないと思います。
我が家にいる子でも開眼前から人工保育で育てた子よりもショップで離乳後販売されていた子の方がよく懐いてたりしますので、毎日根気よく接することの方が大切だと思います。
また同じように育てていても個性の違いからよく慣れる子、ほどほどにしか慣れない子、様々です。
呼んだら来るほど躾けるには根気強く訓練することが必要ですので、触れ合う際には脱走対策をした場所で行ってくださいね。

すごーく思考は単純かつ誤解しやすいので、敵認定されることもしばしば…信頼関係構築するまでは気に触らないようにお世話してください(笑)
特にお迎え当日に気に触るようなことやっちゃうと、ホントにめんどくさい_(:3>∠)_

ヤマネは小さくともとても存在感の大きな生き物だと思います。
飼い主さんとヤマネさんの良好な関係がいつまでも末永く続きますように、ブリーダーとしても、いち飼い主としても願っております。