怖い夢を見て飛び起きてしまった。
怖いのは私だ。
寝なきゃと思って酒を飲み、しばらくソファに横たわっていて思い出した。
夢じゃなくて忘れていた過去の記憶だった。
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ある日、私がリビングで考え事をしていたら下の子が二階から降りてきて、「あのさー」と、切り出した。
「ん?」と、いうと、彼は顔面蒼白だった。
「これ、どう思う?」
日ごろから「俺はお前のお父さんである前にお前の先輩だ。お前が経験したことは俺が30年前にとっくに経験してる。一人で悩んでないで俺に一度聞け」と言い聞かせてあった。
彼が私に見せたのは彼の携帯に届いたメールだった。
「あたし死ぬから」と、書いてあった。
ピンと、来た。この子はただでは死なない。
この子は自分が自殺する前に息子を殺しに来るだろうと。
大げさなことではない。
私も息子の年頃のころ、そんな熱い恋愛をしたものだ。
「命を懸けて愛する」という言葉を取り違えることは若いころはよくあることだ。
息子にも、そう言った。
原因の一端は相手を狂わせたお前にもあると言った。
お前のせいで俺も死ぬのは嫌だと言った。
女房にも言った。女房は体を震わせて怖がった。
一週間後。嫌な予感がして眠れず、一人家の前の公園のブランコで缶ビール片手に夜風に吹かれていた。
彼女は来た。
夜中の4時に女子高生が男の家に尋ねる理由など他にない。
うちと隣の家の間の狭い隙間に入り込んで新聞紙に火をつけるまで大した時間は掛からなかった。
その女の子と新聞紙とをまとめてホースで水をかけた。
「ごめんなさいごめんなさい」と言い続ける彼女を家に入れ、話を聞いた。
ブスな女だった。
彼女には、「俺と女房まで巻き添えにするんだったらお前の親に復讐するからな」と告げてタクシーに乗せ、息子と話し合った。女房は取り乱していたが、その女房をとりあえず寝かせ、息子にはこう言った。
「ブスとはやるな。殺されるぞ」
「わかった」と、言い残し、彼は眠りについた。
私はその後も公園に何度も行きその週の仕事も休んだが、
その後息子が連れてくる女の子はとにかくかわいい子ばかりだった。
あのとき、ひとこと付け加えておけばよかった。。
「むやみにやるなよ」と。
あの子はその後、進学し、就職し、、、、
結局そんなもんだよ。
警察に突き出さなくて良かった。