水金地火木土天海冥⁈(2006年9月号) | OGAWA SHINICHI OFFICIAL BLOG

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美容師兼HAIR&MAKEUP小川真一の日々の感謝の何かいろいろ。

『冥王星の惑星からの降格決定。水金地火木土天海に』

中学生の理科の教科書や、国立天文台の理科年表を書き換える事のなるほどの歴史的な大ニュース、皆様も知らない人はいないと思います。

天文学の世界でもこの数千年で最も意義のある決議だったそうです。

しかし、そんな大きな一歩は、実は科学とは似つかわしくない政治的な葛藤の中、ようやく踏み出せたものだったのです。

今回の冥王星騒動は、国際天文学連合が太陽系の惑星を従来より3個増やそうという提案をまとめた事から始まりました。

その狙いは、冥王星を惑星の位置に留めようとする事でした。そこにはある国への配慮が露骨に見えてしまい、それが科学者たちの反発を呼んだのです。

そのある国とはどこかと言う前に、おさらいです。『惑星』とは何でしょうか。

ごく簡単に言えば太陽のような恒星のまわりを回っている天体という事になります。太陽のように自ら熱と光を出している天体を恒星と呼びます。

原子力発電や核兵器はウランやプルトニウムの原子核を分裂させる事で高熱を発生させますが、太陽のような恒星はその逆です。

重力が強いので、その力で水素原子を核融合させてヘリウム原子に変化
させることで膨大なエネルギーを発生させます。

この恒星のまわりを回っているのが惑星で、惑星のまわりを回っているのが衛星です。従来の惑星の定義としては『恒星のまわりを公転運動している』
『自分自身では核融合を起こさない』『惑星が複数ある場合、お互いに重力的な影響を及ぼす程度の質量を持っている』という事が考えられてきました。

公転運動とは要するに太陽の周囲を回る軌道を通り、一定の日数で一回りする事です。

重力的な影響を及ぼす程度の質量とは、いかにも天文学的な表現ですが、
質量とは地球上では重量、つまり重さです。宇宙では重力がないので質量という呼び方をしています。

惑星はそれなりの質量があって、近くの別の惑星と引っ張り合うだけの重力を持っていなければならないという事です。

太陽系には惑星ほどの大きさを持たない小惑星が多数存在します。質量が大してないので惑星の仲間に入ってないのです。

惑星のこの定義に照らすと、冥王星は果たして惑星と呼べるのか微妙な存在だったのです。

太陽系の惑星の中で、冥王星だけがアメリカ人天文学者が発見しました。そう、国際天文学連合が配慮していたのはアメリカだったのです。

1900年代、アメリカのパーシヴァル・ローウェルは天王星や海王星
を観測しているうちに、軌道計算データと実際の動きに誤差がある事に気付きました。

天王星や海王星の動きに影響を与える重力を持つ未知の惑星があるはずだと主張したのです。

ローウェルの死後、1930年にやはりアメリカのクライド・トンボーがローウェルの予測通り、未知の天体を発見しました。

これが太陽系の9番目の惑星という事になりました。この惑星は、太陽系で最も暗闇に存在するので、神話に出てくる冥府の王プルートの名が付けられました。

同年、ディズニー映画に初めて登場した犬が『プルート』でした。冥王星は米国文化のシンボルとなったのです。

ところが、その後、観測技術が発達するにつれて冥王星を他の8つの惑星と同じ仲間にしておいて良いのだろうかという疑問が生じてきたのです。

冥王星の直径は2,320キロ。地球どころか、月よりも小さかったのです。しかも、太陽のまわりを回る軌道も、他の惑星と違っていました。

約248年かけて太陽のまわりを回るのですが、軌道が極端な楕円で約20年間は海王星の内側に入り込むのです。

また、冥王星にはカロンという衛星があるとされてきましたが、冥王星とカロンにはあまり質量の違いがない事がわかりました。

ということは、カロンが一方的に冥王星のまわりを回っているのではなく、実は冥王星とカロンが互いに相手のまわりを回るという『二重惑星』ではないか、という事になってきたのです。

さらに、冥王星の外側に同じような小さい天体が多数存在する事もわかってきました。冥王星を惑星と呼ぶなら、その外側の多数の天体もみんな惑星と呼ばなければならないのではないか、という意見が出てきたのです。

こうした疑惑はあるものの、1930年に惑星と決めてしまった歴史的経緯や、アメリカの激しい反発も拍車をかけ、冥王星はとりあえず惑星のままになっていました。

太陽系の惑星の中で冥王星だけがアメリカ人が見つけたもの。惑星でなくす事は、アメリカ人のプライドを傷つける事だったのです。

ところが、このアメリカ人のプライドを傷つける事を当のアメリカ人が成し遂げました。2005年、アメリカの研究チームが冥王星より更に外側に、冥王星より大きな天体を発見したのです。

学名は『2003UB313』と名付けられ、発見した研究者たちは、これは第10惑星だと主張しました。さて、こうなると惑星とは何か?という問題になります。

『第10惑星』を惑星と認定するなら、この際冥王星やその外側の多数の天体の扱いをはっきりさせよう、という事になってきたのです。

そこで今回、国際天文学連合会の事務局が考えだした惑星の定義の当初案は『自ら球状の形を維持できる重力を持つ』『太陽のような恒星を周回している天体で、恒星や惑星の衛星ではない』というものでした。

この定義によると、火星と木星の間にあってこれまでは小惑星とされてきた『セレス』も、冥王星の衛星とされてきた『カロン』も、そして『2003UB313』も新しく惑星の仲間入りすることになります。

要は冥王星を惑星から外さないようにするため、もっと仲間を増やしてしまうという案だったのです。

この案に多くの天文学者が反対しました。冥王星を無理矢理惑星の仲間に残す為に考えられた定義案であることが明白だったからです。

科学的に厳密な定義が求められる学問の世界で、政治的な判断は嫌われました。

この定義だと、今後の観測で新しい天体が見つかるたびに惑星の数が増えて行く可能性もあります。

無理に考えだされた定義で惑星の数を増やすより、冥王星を外すだけの方がはるかにシンプルでわかりやすい。
これが科学者の多数派の考えでした。

こうして事務局案は修正され『太陽のまわりを回る、自らの重力で球状となれる天体』『軌道上で圧倒的に大きい天体』という定義が採択されたのです。

冥王星は近くの軌道に圧倒的に大きい海王星が存在する為、この定義により惑星ではなくなりました。

体裁や余計なプライドは、時として僕たちの判断を誤らせます。冥王星にまつわるしがらみを振りほどき、信念を貫いたこの結果はまさに科学が政治に勝った瞬間だったのかもしれません。

この太陽系の最果ての物語の結末は『降格』という事になったが、それでも冥王星が悠久の時の流れに乗って
回り続けるのは変わりません。それを思えば、宇宙に比べたら点ほどもない人間社会であれこれと心を揺らしている事が、何とも馬鹿げたものに見えてきます。冥府の王様さまさまですね。

りすぺくと
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